第三話
外に出た瞬間、空気が違っていた。
昨日までと同じ街のはずなのに、
聞き慣れない音が多すぎる。
叫び声。
何かが壊れるような音。
遠くで聞こえるたくさんのサイレン。
ユリは走り出す。
考えるより先に、足が動いていた。
「マサル……!」
名前を呼ぶが返事はない。
慣れた道のはずなのに、知らない場所みたいだった。
知らない場所になってしまった所に人が倒れている。
ユリは視線を逸らし走り続けた。
止まったら終わると分かっていた。
スマートフォンを握る手が震えていた。
息を切らしながらスマートフォンを操作する。
そのとき。
「ヒヨリ!」
聞き慣れた名前を呼ぶ聞き慣れた声が聞こえた。
ユリは声のした方向へ走った。
「パパ!」
もう一度別の聞き慣れた声が聞こえる。
喉の奥が、強く鳴る。
さらに角を曲がる。
視界が開ける。
マサルと、ヒヨリがそこにいた。
「……よかった」
ユリは自然と声が漏れていた。
「ママ!」
振り返りユリを見つけて駆け寄ってくるヒヨリを
強く抱きしめた。
「怪我は?」
「ない!」
その返事に、少しだけ息を吐く。
顔を上げ、マサルを見た。
マサルは一瞬強張った顔をしたが
すぐいつもの顔に戻って
荒い息を落ち着かせながら
「なんで出てきた!?」
とそれだけ発した。
「ごめんなさい!あまりにも心配で!
マサル、大丈夫?」
「……ああ」
マサルは短く答えた。
その声に、わずかな違和感を感じた。
その違和感を考える前に遠くで、また音がした。
何かが、こちらに向かってくる音。
マサルが振り返る。
「ここ、まずいな」
ユリも今、その違和感を理解して
ヒヨリの手を強く握りしめた。
「……うん」
後ろの「違和感」から2人を守るように
マサルが2人の後ろに回った
「走るぞ」
マサルが力強く言った。




