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第十四話

スライドドアを閉める。

ワンボックスの中は、思ったより広い。



ユリは運転席に座り

シートベルトをつけた。


ヒヨリは食事をとった所と同じ。

中央のシートに座っている。



1番後ろの荷室にマサルはいた。

ヒヨリの座るシートの裏側に背を預けて。


ユリは一度だけミラーを見た。

“後ろを警戒”してくれている。

そう信じてエンジンスタートのボタンを押した。

なにも起きないことを信じて…





周りを見渡しても

生きている人は見当たらない。

動く恐怖もない。



普段はたくさんの車が走っている国道。

今はユリの乗るワンボックス車の

エンジン音だけが響いていた。



国道に出ると

視界が一気に開ける。


ユリは、あえてその道を選んだ。

逃げ場は少ない。

隠れる場所もない。


それでも遠くを

危険が来るなら早く気づける。


そして……


ユリはバックミラー越しに

後ろに乗るマサルを見た。


車を走らせる前と同じ姿勢だった。




少し離れた所まで車を走らせた。


国道を超えた先の道は

家の近くの道と違って

道路は、ひどい状態だった。

放置された車。

横転したトラック。

ガラスの破片。


ところどころで、道が塞がれていた。

スピードは出せない。

ハンドルを細かく切る。


少し違うだけで

こんなにも違うものか…


ユリは今一度気を引き締めなおした。



周囲の建物は

シャッターは壊れ、窓は割れ、

“何かあった”ことだけは、分かる。



道路脇きは乾いた赤。


ヒヨリは何も見ないようにと

下を向いていた。







何か聞こえてきた。

聞き覚えのある音……

恐怖を思い出す音………


ガンッ!


横から何かがぶつかる音がした。


「っ……!」



助手席側の窓、

濁った目が張り付いている。

障害物が多くスピードが出せない。

それでも決して遅いわけでもない。





ドンッ!!

バックドアにも衝撃音が響いた。


ミラーに映るのは

後部に、しがみつく影。


ユリの呼吸が荒くなる。

(囲まれている……!)



そのとき。

後ろで、もう一度音がした。

――ガンッ!!



マサルが動いた。

バックドアのガラスを破り

しがみつく“それ”の腕を。

内側から、掴んだ。


そのまま、引き剥がした。

ドンッ、と地面に叩きつけられる影。



助手席の窓にヒビが、広がり

腕が入り込んできた。


「ヒヨリ、頭下げてて!」


ヒヨリが身を縮めた。

その瞬間、

マサルが前に動き出した。

二列目のシートを跨ぎ

助手席から伸びる腕を掴む。


そのまま

先と同じように引き剥がした。


割れた助手席の窓から

マサルはゆっくり外に飛び出した。

風が一気に流れ込み、車内を包んだ。


  

地面に着地したマサルは

近づいてくるものを

次々と排除していった。



ハンドルを握る手に汗が滲む。

ヒヨリが、窓から叫んだ。


「パパ!」


マサルはその声に応えることはなかったが

血飛沫をあげ、襲いくる恐怖を

車に近づかせまいとしていた。



ユリは車を止めた。



少し離れた所からマサルを″見守る″

″排除″が終わったようだ…



マサルはゆっくりと

車の方向へ歩いてくる。


自分のものかそうじゃないのか…

赤い液体をつけて…


ガラスの割れた

バックドアをユリが開けた。


マサルはそのまま、

乗り込んだ。

そして、何もなかったように。

後方を向いて座り込んだ。



ユリも車に乗り込み

バックミラーを見る。

間髪入れず視線を前に戻し

再び車を走らせた。

道を塞ぐ障害物が減ってきた。




目を先にやると

軍のような車が止まって

横で男が大きく手を振って

止まるよう指示している。



今はまずい…



ユリはアクセルを強く踏んで

その場を逃げるように走りだした。


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