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第十三話

ノイズと機械音が規則的に流れている通信室。

ヘッドセットをつけた男が

通信機の奥で狼狽える男に

待機の要望を伝えて通信を切った。



頭のそれを外し

隣でパソコン操作している

同じ服を着た男に話しかけた。



「聞いてたか?“人を襲わないやつ”が出たって〇〇町の住民から…」


短い沈黙。


「聞こえた。あの辺はもう

粗方すんだって朝、連絡あったよな?

それに保護部隊はどうした?」


隣の男が画面を見ながら返事をした。


「わからないが…今朝なんかあったのかも…。見落としがあったとか…」



さっきより少しだけ長い沈黙の後


「他で聞いてる″全く動かないやつ″と一緒か?」

「いや、″動いてはいる″みたいだ。女、子供の後について行ってると」


「…なんだそれ?」


パソコンの操作を止めて

男が横に顔を動かした。


「わからない。混乱しているだけかもしれないが、

話を聞く必要はあるよな。あそこの部隊も気になるし。」



モニターの地図に点がひとつ表示された。




机にはいくつかの資料が置かれていた。

荒れた町の写真、

食い荒らされた現場の写真、

感染者と呼ばれるものを解剖した写真



少し離れた所に

赤いペンで印をつけられた

感染者の写真が

数枚並んでいた。



奥にいた人物が口を開く。

全員の視線が集まる。

「〇〇地区へ。最優先で取り残された住民を救出。その後、特殊個体の確認を。」


「出動準備」


静かな声で男は言った








缶詰の蓋が、金属音を立てて開く。

帰ってきたらワンボックスの車の中に

少しだけ匂いが広がる。


「ゆっくり食べてね」


ユリがスプーンを渡す。


「ママと一緒に…」


ユリはヒヨリに優しい笑みを浮かべていた。



ふと、スマートフォンを手に取る。

画面は、朝と変わらず圏外だ。

ユリは小さくため息をついた。


小さく呟く。

ふと、両親の顔が浮かんだ。



「半分残したからママも食べて」


ヒヨリが食べかけの缶詰を

スプーンと一緒にユリに渡した。

それらを手に取ると同時に

ユリは玄関に目を向けた。


マサルが項垂れているように立っている。

ただ、静かに…

 


先のコンビニでの惨劇が

頭をよぎった。


(……守る……)



ユリは後部座席からそのまま、

運転席へと移動した。


ヒヨリが、顔を上げる。


「ママ?」


ユリは、ヒヨリを見て少しだけ笑って



「……じいじ達のところに行こっか。」

と呟いた。


ヒヨリがは小さく頷いた。



ユリは、玄関を見る。

もし、両親がまだ″ヒト″でいて…

会うことができたとして…

今のマサルのことを説明できるだろうか。

マサルはわたしの両親に対して

″動く″のだろうか…


嫌な考えがたくさん頭をよぎった。

それでもユリは伝えた。


「……マサル…行こう。」



返事はなかったが、

マサルは一歩動いた。

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