こどく
七枚目の絵は、浮かぶことなく地面に触れてしまった半円型のシャボン玉だった。土色の地面をシャボン玉が虹色で彩っている。
『コドク…コドク…不思議。孤独と蠱毒って同じ発音なんだ』
『誰かといても一人でいるみたい』
『誰と一緒にいる自分が本当の自分なのかわからないや…』
『明日、私が消えても…世界は問題なく回り続けるのに…』
『どうして私はここにいるんだろう…』
灯の声が重なって、不協和音になる。
灯の抱えていた混乱の最中に放り込まれたようだった。
耳の奥で反響するような灯の声に僕も連れて行かれそうになるのを必死で堪えた。
堪えられたのは、頭の中に「人の自死の猿真似なんてクソ以下だ」という真珠の言葉がまだ色濃く残っているからだ。
ここでやっぱり灯のところに行きたいと思うなんて、僕の弱さの体現でしかない。そんなの…そんなの悔しいじゃないか。
振り切るように僕は八枚目の絵に視線を移した。
八枚目は、花が咲く桜の木を背景に大小二つのシャボン玉が浮かんでいる絵だった。
『どこに行っても変わらないな…。このままずっと過ごすのかな。また…ひさちゃんと話したいな…』
『ひさちゃんに話しかける勇気もないのに、自分で自分を消すことなんて出来るのかな』
「…くっ…うぅっ…」
真珠の冷えた手が、嗚咽を漏らした僕の背中を撫でた。
灯に「ひさちゃん」と呼ばれるのが好きだった。
「ちゃん付けはやめろよ。恥ずかしいじゃん」と抗議してもやめなかった灯。
灯はわかってたんだ。そんなことを言っても僕が、その呼び方を気に入ってたことを。
だって灯は、もう一人の僕だったから。
だから、僕なら灯の孤独を分け合うことができたはずなんだ。
僕は深く息を吸い込んで、心の中身を溶かすように息を吐いた。
「九枚目…見せてください」
言うと真珠は、黙ったままで次の絵を出した。




