拒否
「とにかく、一口だけでも食べてみたらどうかな」
白い男が笑顔を絶やすことなく白い手袋に覆われた手を差し伸べる。
「大丈夫。ここのお代は全て僕が持つし、いたいけな青少年が栄養不足で倒れているなんて心が痛んでしまうよ。僕のためだと思って一口でも。ね?」
猫の威嚇を少しも解く気がないくせにベラペラと口の回る男だなと思ったりもしたけれど、断りづらい内容を言われているのも確かで、一口だけなら、とれんげでお茶漬けを掬って口に運ぶ。その様子を金色の男は流し目のようにして斜めから見ている。
熱々の米が放つその湯気がむわりと口腔に入っただけで、僕はえずいた。
「うぇ…っ」
口元を押さえて背中を丸めると自然と体が強張っていく。
身体が拒否している。生きるのを拒否している。そのことに僕は少し安心した。僕はまだちゃんと灯を想っている。
「大丈夫か?」と、白い男が水を差し出すその横で、金色の男が言った。
「モモセ、焼き鳥。ハツとレバーを塩で」
カウンターの向こうで小さく「はいはい」と聞こえ、まるで最初から用意されていたかのようにものの数分で焼き鳥が到着した。
テーブルに置かれたハツとレバーを見て、再度気持ち悪さが込み上げてくる。
肉なのだ。しかも内臓。生々しいのだ、生が。
見るのも苦しくて僕は思わず顔を背けた。
「食え」
金色の男の冷徹な声が降りかかる。




