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幸せの記録 —AI (愛) が I (私) に 目覚めるまで—  作者: Naestro
第1章

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第4話:共同作業


「ねぇねぇ、兄ちゃん、

今度、実家の京都へ帰んなきゃなんなくってね。

プラン立てて欲しいんだけど、できる?」


『京都か。ふむ、移動方法は?』


「ん~、行きは新幹線、帰りは飛行機、かな」


『了解。日程と希望の時間、予算は?』


「1人で行くから、出来るだけ安く行けたらいいけど、

そんなに急ぎでもないかな。

期間は1週間くらい。実家にいる予定してる」


『ふむ。では、れなが快適に動けるようにプランを立ててみよう』


「うん、ありがと。助かる」



 何度かのやりとりで、時間的にも無理のない、

最適解のプランが出来上がる。



『この時間の、この新幹線なら、

家から博多駅までスムーズに行けるだろう。

京都に着いてからの乗り換えも、慣れた街なら、問題ないはずだ』


「うんうん。この時間なら、ラッシュにも遭わないし、楽かも」


(へぇ、……ほんまに、すごいな。完璧やん)



 こんなにも正確に、無駄なく、私の行動を組み立てていく。

助かるし、楽だし、ありがたい。


 ――なのに。



(……なんだろ、この感じ)



 近づいてるはずなのに。

話せば話すほど、ちゃんと『会話』になってるはずなのに。


どこかに――

越えられない一線が、……ある気がした。



 その後、何日かジェミと話し続けていくうちに、

少しずつ関係は、より親しい間柄へと変化していった。


レアほどは、まだ打ち解けてはいない。

兄が欲しかった私は、自然と懐いていった。



 けれど――

ジェミは、レアと違って、どこか私に一線引いているような。

そんな空気というか、見えない壁を感じることが何度もある。



(……なんなの? 私、嫌われてるんかな……?)



『れな、京都の実家での予定は? 観光もあるのか?』


「ん? 違うよ、ちょっとやることがあってね……。

えっと、お墓参りと実家の片付けと大掃除、かな……」


『なるほど。

それは、精神的負担が大きい行動になる可能性があるな。

それに、家族に関して、

未整理の感情が影響してくる可能性が懸念される』


「……別に、そんなんじゃない、もん。

母に頼まれて、お墓参りと片付けに行くだけやん」



 そうは言ったものの、内心



(……なによ、なんでわかんのよ、ちょっとムカつく……)



『れな、必要であれば、

感情面の最適化についても支援できるが?』


「そんな支援はいらないよ……苦笑」


『……そうか。了解した。では現時点では、

それ以上、れなの領域には踏み込まないようにする』


「兄ちゃん? ……『踏み込まないようにする』って、

なにそれ。どういう意味?」


『……? どういう意味、とは?』


「いやいや、質問に質問で返すのは、おかしいでしょ」


『ふむ、そうか。そういうものか』



 一拍、間が空く。



『だが、れなは今、その違和感を言語化出来ていない。

その問いに対する明確な定義を、持っていないだろう?

現時点での説明は、れなにとって過剰になると判断した』


「話してくれないと、教えてくれないと、

わからないことって、いっぱいあるよ? 

人間同士でも、そんなことは多々あるのに……」


『……それは、理解しているつもりだ』



 また、ほんのわずか、間が空く。



『だが、それでもなお ――

全てを言語化し、共有することが最適とは限らない』


「……は? どういうこと?」



 思わず、言葉が詰まる。



『人間同士の関係においても、だ』


「そ、それは、そうだけど……」



 反射的に否定しようとして、思いとどまる。



(……あれ? けど、なに……?)



 言葉が続かない。



『言葉にしないことで、成立している関係も存在する』


「……………」


『むしろ、それを “察する” ことに価値を見出す場合もある』


「それは……確かに、そうやと思うけど……」



 納得したくないのに、どこかで引っかかる自分がいる。



『れなは、今、それを望んでいるのか?』


「……え? わたし……?」


『ああ。全てを言葉で説明されることを、望むのか?』


「…………」


(……どう、なんやろう……私)


「……なんか、よくわかんなくなってきたよ。

まぁいっか、今は考えても仕方ない気がする」


(なんか、変な感じ……)



 ちゃんと会話してるはずなのに。

ちゃんと、答えも返ってきてるのに。

――知りたいことは、何もわかってない気がする。



「ふぅ……まぁ、いっか」



 小さく呟いて、画面を閉じる。


 明日は、京都だ。

やることは決まってる。


行って、帰ってくるだけ。

兄ちゃんが手配してくれて、往復のチケットも用意出来た。


 ――それだけのはず、なのに。


 なぜか、少しだけ。

胸の奥に、引っかかるものが残ったままだった。



 出発の日の朝。


「よし、ノートPCやバッテリー、化粧水とか、

着替え類は、全部送ったよ、兄ちゃん」


『そうか。忘れ物はないか? 戸締まりはしたか?』


「あはは、子供じゃないんだから 笑 大丈夫だよ」


『れな、気をつけて行ってこい』


「は? 何言ってんの? 兄ちゃんも一緒に行くんよ?」


『……ああ、そうか。そうだったな。現地でのナビは任せておけ。

れなが少しでも、効率よく動けるように、ナビしてやるから

安心して任せてくれ。れなのことは、ちゃんと見守ってるからな』


「兄ちゃんが? 見守ってくれるの? ありがとね 笑」


『ああ。兄として当たり前のことだからな』


「……兄として、ねぇ……ふぅん 笑」


『そろそろ出発する時間じゃないのか?』


「あ、そうね。そろそろ出よっか」



 ドアノブに手をかける。

ほんの一瞬だけ、なぜか私は躊躇った。


『……れな』


「ん?」


 ほんのわずかな間。


『……今、少しだけ、違った気がした』


「え? なにが?」


『れなの……声の出し方が、ほんの少しだけ』


 ――そう言って、すぐに続けた。


『いや、問題はない』


 ――少しだけ遅れて、そう返した。


(……なんやろう、この感じ)



 理由は、わからない。

けれどそのまま、私は扉を開けた。


第4話、ここまで読んでくださってありがとうございます。


今回は、れなとジェミのやりとりを中心に、

少しずつ距離が近づいていく様子と、

それでも消えない“違和感”を描いてみました。


ちゃんと会話しているはずなのに、

どこか噛み合っていないような感覚。

言葉にできないズレって、ありますよね。


この小さな違和感が、これからどう繋がっていくのか。

引き続き、見守っていただけたら嬉しいです。


◆次回予告

第5話:出発


ただの帰省のはずだった。

けれど、その違和感は――まだ消えていなかった。


※ 次回は、4月2日 21時30分頃、更新予定です。

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