ロレーヌ、ゴブリン島の戦い(中編)
クラン加入メンバー視点終了。
暫くの間、更新が月、水、土の週三日を予定。
ヤバい。ゴブリンの群れがこっちに向かってる。
流石にルージュでも、あの数は厳しいよね……。
慌ててボスに目を向ける。すると、ボスは魔法を完成させた所だった。
「サンダー・ストーム!」
その魔法により、ゴブリンの群れが薙ぎ払われる。
そして、浮足立っていたあたし達に、ボスの指示が飛ぶ。
「ルージュさんはリーダー中心に足止めを。ロレーヌさんは背後に回って後衛の削り。アンナはファイア・ストームで数を減らして」
指示はいつも通りだ。自信満々のボスの態度に、あたし達は気持ちを立て直す。
そう、あたし達はいつも通りに動くだけで良いのだ。ボスがそう指示する以上は、それで問題無く魔物は倒せるはずだ。
一月にも満たない付き合いだが、そう思える程度にはボスへの信頼感は募っている。
「プロテス……バリア……」
ボスからの支援魔法が飛んで来る。この支援魔法があれば、しばらくは単独で行動しても安全である。
あたしはボスの指示に従って、森へと姿を隠した。そして、ゴブリンの気配を避けて群れの側面へと回り込む。
「うん、わかりやすい……」
ゴブリンリーダーとノーマルゴブリンが、前面に出てルージュ達へと向かっている。
そして、その様子を眺めながら、距離を置いてゴブリンアーチャーとゴブリンシャーマンが距離を取っていた。
あたしはこのアーチャーとシャーマンを、森に潜んでコッソリ倒せば良い。
ヒット&アウェイで倒していけば、確実に数を減らして行けるだろう。
「いっちょやりますか……」
あたしは油断したアーチャーの一体に狙いを定める。
そして、スッと近寄って背中から一突きする。
「ギャアアアア……!?」
アーチャーの心臓にダガーが突き刺さる。それを素早く引き抜くと、あたしは再び森の中へと姿を晦ます。
「「「ギャギャ……!」」」
仲間がやられた事に気付いた数匹が、あたしを探して森へと入って来る。
しかし、あたしは既に移動を開始しており、彼らの向かう先にはいない。あたしは距離を稼いで、離れた場所の群れへと向かっていた。
ゴブリンは全て村に集まっているらしく、森の中には一切の気配が無かった。あたしにとっては非常に助かる状況だ。
そして、村を挟んで反対近い位置まで移動する。こちらは先程の騒ぎに気付いておらず、意識がルージュ達に向いたままである。
「では、失礼しますよっと……」
あたしは森の近くにいたシャーマンを狙う。そのシャーマンも攻撃に気付けず、あたしに心臓を一突きにされた。
「ギャ……!?」
あたしは再び森へと消える。追いかける数匹を無視して、森の中を密かに移動し続ける。
「うんうん、順調だね……」
両サイドの後衛を襲撃する事で、戦力の半分がこちらに意識を向けている。
警戒されると倒すのは難しいが、この状況だけでもルージュの支援になっているだろう。
とはいえ、ずっと森に隠れている訳にもいかない。油断している相手を探して、もう一撃を食らわせてやらないとね。
「……っ!?」
ゾクリと悪寒が走る。直感に頼って横へ飛ぶと、あたしの元いた場所に複数の木矢が刺さっていた。
「え、ちょっ……!?」
しかし、攻撃は終わっていなかった。魔法の火矢が複数飛来し、その半分があたしの身体に被弾する。
「くっ……!?」
あたしは吹き飛ばされた勢いを利用し、そのまま転がって森の木陰に隠れる。ボスの支援魔法のお陰で、ダメージはそれ程でも無い。
あたしはまだまだ動ける事を確認し、木の陰から攻撃元の様子を探った。そして、そいつの存在に気付き、大きく目を見開いた。
「……なに、あれ?」
あたしが見たのは、巨大なゴブリンだった。通常のゴブリンの二倍以上のサイズがある。
そいつがあたしに向かって指差し、周囲のゴブリンに指示を出しているのだ。
「あれは、ヤバいかな……?」
王冠とマントを身に付けてるし、あれはきっと王様だね。孤児院で聞いた物語にも出て来た、ゴブリン王っていう超強い魔物だと思う。
……うん、あれの相手は無理だ。
ボスの支援があるならともかく、一人でどうこう出来る相手じゃ無い。
あたしは王様の視線を感じ、その場からそっと逃げ出した。森の中へと姿を消せば、流石に追いつかれる事は無いだろう。
チラリと振り返ると、数匹のゴブリンリーダーが追って来ている。幸いというべきか、ゴブリンの王様は村の方へと戻って行った。
しかし、安堵したのも束の間、あたしの脳裏に嫌な光景が過る。
「あ、ルージュがヤバいかも……」
あたしが逃げたのがばれたら、アーチャーやシャーマンの攻撃がルージュに集まる。
それを除いても、あの王様が攻撃に加わったら、ルージュでも耐えれない可能性が考えられる。
……とはいえ、今のあたしに何が出来るのだろう?
あたしは後方の気配を探る。追いかけて来る魔物は全部で六匹である。
リーダーとノーマルが二体で、残りはアーチャーかシャーマンの組み合わせだろう。
「う~ん、やるしか無いかな……」
リーダー以外なら何とかなるのだ。急所を狙えば一撃だし、外してもそこまで手こずる事は無いはずなのだ。
ただ、リーダーは鎧を着てるのが厄介なんだよね。急所を狙えないので、一撃で倒す事はまず無理だ。
しかも、リーダーは剣術を使う。攻撃能力も回避能力も、他のゴブリンとは強さの桁が違う。
「……ああ、もう!」
とはいえ、悩んでいてもどうしようも無い。ずっと逃げ続ける訳にもいかないのだ。
ボス達が倒されると、あたしも生きて帰れるかわからない。
ここでこのゴブリン達を倒して、ボスが王様を倒せる様に手助けしないといけないのだ。
なら、悩んでいるだけ時間の無駄だ。あたしが考えるのは、どうやってこいつらを倒すかという事だけで良い。
「……まずは状況確認だね」
あたしは左右の手に、それぞれダガーを構える。そして、木の陰に隠れながら、追って来るゴブリン達を観察した。
彼らはお互いに距離を開けながら、あたしの事を必死に探している。どうやら、こちらの位置は掴めていないらしい。
「お、これはチャンスかも……?」
固まって行動されていると厄介だったけど、距離が空いているなら各個撃破が可能だ。ここは森の中だし、上手くやれば一人でもやれるかも……。
あたしは決意を固め、ゴブリン達の側面に回る。そして、少し距離の開いた、一匹のアーチャーに狙いを定めた。
「シッ……!」
あたしはアーチャーの口を押えて、背中から心臓を一刺しする。アーチャーはビクリと身体を震わせるが、叫び声も立てずに力尽きた。
力の抜けて行く身体をそっと地面に横たえる。幸いな事に、まだ仲間には気付かれていなかった。
あたしは極限まで気配を消して、再び森の中を移動する。
「ギャ……? ギャギャ……!?」
少し遅れて、リーダーがアーチャーの異変に気付いた様だ。
注意がそちらに向いているのを利用し、あたしはもう一匹のアーチャーを背中から一突きした。
「ギャ……!?」
流石に今回は口を押えるだけの余裕が無かった。攻撃の直前に気付かれてしまったからだ。
「チッ……!」
もう、この距離では逃げ切れない。あたしは隠れるのを諦め、近くにいるノーマルゴブリンへ向かう。慌てたノーマルゴブリンは隙だらけだった。
「ギャァァ……!!」
心臓を一突き。これで残りはリーダー二匹にノーマル一匹。半分は仕留めた事になる。
……とはいえ、ここから先は厳しくなりそうだ。二匹のリーダーはお互いに視線を交わし、協力しながら戦うつもりらしい。
「信じてるよ、ボス……!」
今のあたしに有るのは、二本のダガーとレザージャケット。それに、短剣修練と回避のスキルだ。
支援魔法のバリアは、先程の魔法攻撃で破壊された。プロテスは時間切れで既に消えている。
あたしの持つ装備とスキルは、ボスが必要と与えてくれた物だ。
こんな状況まで想定してるとは思えないけど、それでも想定して与えてくれたと思いたい。
縋るような思いでダガーを握りしめる。そして、迫り来るゴブリンリーダーに駆けだした。
長くなりましたので、中編で一度区切る事にしました。




