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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第三章 クラン結成編

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ロレーヌ、ゴブリン島の戦い(中編)

クラン加入メンバー視点終了。

暫くの間、更新が月、水、土の週三日を予定。

 ヤバい。ゴブリンの群れがこっちに向かってる。


 流石にルージュでも、あの数は厳しいよね……。


 慌ててボスに目を向ける。すると、ボスは魔法を完成させた所だった。


「サンダー・ストーム!」


 その魔法により、ゴブリンの群れが薙ぎ払われる。


 そして、浮足立っていたあたし達に、ボスの指示が飛ぶ。


「ルージュさんはリーダー中心に足止めを。ロレーヌさんは背後に回って後衛の削り。アンナはファイア・ストームで数を減らして」


 指示はいつも通りだ。自信満々のボスの態度に、あたし達は気持ちを立て直す。


 そう、あたし達はいつも通りに動くだけで良いのだ。ボスがそう指示する以上は、それで問題無く魔物は倒せるはずだ。


 一月にも満たない付き合いだが、そう思える程度にはボスへの信頼感は募っている。


「プロテス……バリア……」


 ボスからの支援魔法が飛んで来る。この支援魔法があれば、しばらくは単独で行動しても安全である。


 あたしはボスの指示に従って、森へと姿を隠した。そして、ゴブリンの気配を避けて群れの側面へと回り込む。


「うん、わかりやすい……」


 ゴブリンリーダーとノーマルゴブリンが、前面に出てルージュ達へと向かっている。


 そして、その様子を眺めながら、距離を置いてゴブリンアーチャーとゴブリンシャーマンが距離を取っていた。


 あたしはこのアーチャーとシャーマンを、森に潜んでコッソリ倒せば良い。


 ヒット&アウェイで倒していけば、確実に数を減らして行けるだろう。


「いっちょやりますか……」


 あたしは油断したアーチャーの一体に狙いを定める。


 そして、スッと近寄って背中から一突きする。


「ギャアアアア……!?」


 アーチャーの心臓にダガーが突き刺さる。それを素早く引き抜くと、あたしは再び森の中へと姿を晦ます。


「「「ギャギャ……!」」」


 仲間がやられた事に気付いた数匹が、あたしを探して森へと入って来る。


 しかし、あたしは既に移動を開始しており、彼らの向かう先にはいない。あたしは距離を稼いで、離れた場所の群れへと向かっていた。


 ゴブリンは全て村に集まっているらしく、森の中には一切の気配が無かった。あたしにとっては非常に助かる状況だ。


 そして、村を挟んで反対近い位置まで移動する。こちらは先程の騒ぎに気付いておらず、意識がルージュ達に向いたままである。


「では、失礼しますよっと……」


 あたしは森の近くにいたシャーマンを狙う。そのシャーマンも攻撃に気付けず、あたしに心臓を一突きにされた。


「ギャ……!?」


 あたしは再び森へと消える。追いかける数匹を無視して、森の中を密かに移動し続ける。


「うんうん、順調だね……」


 両サイドの後衛を襲撃する事で、戦力の半分がこちらに意識を向けている。


 警戒されると倒すのは難しいが、この状況だけでもルージュの支援になっているだろう。


 とはいえ、ずっと森に隠れている訳にもいかない。油断している相手を探して、もう一撃を食らわせてやらないとね。


「……っ!?」


 ゾクリと悪寒が走る。直感に頼って横へ飛ぶと、あたしの元いた場所に複数の木矢が刺さっていた。


「え、ちょっ……!?」


 しかし、攻撃は終わっていなかった。魔法の火矢が複数飛来し、その半分があたしの身体に被弾する。


「くっ……!?」


 あたしは吹き飛ばされた勢いを利用し、そのまま転がって森の木陰に隠れる。ボスの支援魔法のお陰で、ダメージはそれ程でも無い。


 あたしはまだまだ動ける事を確認し、木の陰から攻撃元の様子を探った。そして、そいつの存在に気付き、大きく目を見開いた。


「……なに、あれ?」


 あたしが見たのは、巨大なゴブリンだった。通常のゴブリンの二倍以上のサイズがある。


 そいつがあたしに向かって指差し、周囲のゴブリンに指示を出しているのだ。


「あれは、ヤバいかな……?」


 王冠とマントを身に付けてるし、あれはきっと王様だね。孤児院で聞いた物語にも出て来た、ゴブリン王っていう超強い魔物だと思う。


 ……うん、あれの相手は無理だ。


 ボスの支援があるならともかく、一人でどうこう出来る相手じゃ無い。


 あたしは王様の視線を感じ、その場からそっと逃げ出した。森の中へと姿を消せば、流石に追いつかれる事は無いだろう。


 チラリと振り返ると、数匹のゴブリンリーダーが追って来ている。幸いというべきか、ゴブリンの王様は村の方へと戻って行った。


 しかし、安堵したのも束の間、あたしの脳裏に嫌な光景が過る。


「あ、ルージュがヤバいかも……」


 あたしが逃げたのがばれたら、アーチャーやシャーマンの攻撃がルージュに集まる。


 それを除いても、あの王様が攻撃に加わったら、ルージュでも耐えれない可能性が考えられる。


 ……とはいえ、今のあたしに何が出来るのだろう?


 あたしは後方の気配を探る。追いかけて来る魔物は全部で六匹である。


 リーダーとノーマルが二体で、残りはアーチャーかシャーマンの組み合わせだろう。


「う~ん、やるしか無いかな……」


 リーダー以外なら何とかなるのだ。急所を狙えば一撃だし、外してもそこまで手こずる事は無いはずなのだ。


 ただ、リーダーは鎧を着てるのが厄介なんだよね。急所を狙えないので、一撃で倒す事はまず無理だ。


 しかも、リーダーは剣術を使う。攻撃能力も回避能力も、他のゴブリンとは強さの桁が違う。


「……ああ、もう!」


 とはいえ、悩んでいてもどうしようも無い。ずっと逃げ続ける訳にもいかないのだ。


 ボス達が倒されると、あたしも生きて帰れるかわからない。


 ここでこのゴブリン達を倒して、ボスが王様を倒せる様に手助けしないといけないのだ。


 なら、悩んでいるだけ時間の無駄だ。あたしが考えるのは、どうやってこいつらを倒すかという事だけで良い。


「……まずは状況確認だね」


 あたしは左右の手に、それぞれダガーを構える。そして、木の陰に隠れながら、追って来るゴブリン達を観察した。


 彼らはお互いに距離を開けながら、あたしの事を必死に探している。どうやら、こちらの位置は掴めていないらしい。


「お、これはチャンスかも……?」


 固まって行動されていると厄介だったけど、距離が空いているなら各個撃破が可能だ。ここは森の中だし、上手くやれば一人でもやれるかも……。


 あたしは決意を固め、ゴブリン達の側面に回る。そして、少し距離の開いた、一匹のアーチャーに狙いを定めた。


「シッ……!」


 あたしはアーチャーの口を押えて、背中から心臓を一刺しする。アーチャーはビクリと身体を震わせるが、叫び声も立てずに力尽きた。


 力の抜けて行く身体をそっと地面に横たえる。幸いな事に、まだ仲間には気付かれていなかった。


 あたしは極限まで気配を消して、再び森の中を移動する。


「ギャ……? ギャギャ……!?」


 少し遅れて、リーダーがアーチャーの異変に気付いた様だ。


 注意がそちらに向いているのを利用し、あたしはもう一匹のアーチャーを背中から一突きした。


「ギャ……!?」


 流石に今回は口を押えるだけの余裕が無かった。攻撃の直前に気付かれてしまったからだ。


「チッ……!」


 もう、この距離では逃げ切れない。あたしは隠れるのを諦め、近くにいるノーマルゴブリンへ向かう。慌てたノーマルゴブリンは隙だらけだった。


「ギャァァ……!!」


 心臓を一突き。これで残りはリーダー二匹にノーマル一匹。半分は仕留めた事になる。


 ……とはいえ、ここから先は厳しくなりそうだ。二匹のリーダーはお互いに視線を交わし、協力しながら戦うつもりらしい。


「信じてるよ、ボス……!」


 今のあたしに有るのは、二本のダガーとレザージャケット。それに、短剣修練と回避のスキルだ。


 支援魔法のバリアは、先程の魔法攻撃で破壊された。プロテスは時間切れで既に消えている。


 あたしの持つ装備とスキルは、ボスが必要と与えてくれた物だ。


 こんな状況まで想定してるとは思えないけど、それでも想定して与えてくれたと思いたい。


 縋るような思いでダガーを握りしめる。そして、迫り来るゴブリンリーダーに駆けだした。

長くなりましたので、中編で一度区切る事にしました。

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