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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第三章 クラン結成編

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ロレーヌ、ゴブリン島の戦い(前編)

クラン加入メンバー視点。

暫くの間、更新が月、水、土の週三日を予定。

 今日はとても鬱である。何故なら、クランのお仕事で、ゴブリンを狩りに行くからである。


 正直、倒すだけなら大した相手じゃ無い。海底洞窟の地上階の魔物の方が強い位だからね。


 ……ただ、ゴブリンは人型なんだよね。


 海底洞窟の魚介類とは勝手が違う。人の形をした魔物を倒す事に、どうしても気分が乗らないのだ。


「基本は海底洞窟と同じです。ただし、ノーマルゴブリンは、ロレーヌさんが倒してしまって構いません」


「了解です……」


 ボスがいつも通りに指示を出す。あたしは軽く頷いてみせる。


 気分は乗らないが、ボスに逆らうつもりもない。


 それに、これまでも沢山の血を見てきたのだ。今更、魔物を倒せないという事はないだろう。


「まずは、鉱山の村を目指しましょう。奥に進む程、ゴブリンの数も増えるはずです」


 ボスに促され、あたし達は森の中へと進んで行く。当然ながら、先頭はあたしだ。皆は探索の邪魔にならない様に、少し離れて着いて来る。


「はあ……。すぐに慣れると良いんだけど……」


 皆に聞こえない距離の為、あたしはボソリと呟いた。まあ、きっとすぐに慣れるはずだ。


 海底洞窟での魔物狩りも、一日あればすぐに慣れてしまったしね……。




 結果から言うと、初日では流石に慣れなかった。倒した数が圧倒的に少なかった事もあるだろう。


 ……少ないと言っても、十匹は倒してるんだけどね。


 更に問題なのが、ゴブリンの急所である。ゴブリンの急所は心臓なのだ。サクッと刃を突き刺せば、当然ながらドバッと血が噴き出す。


 最初の一匹めなんて、まともに血を浴びてしまった。そして、半泣きとなったあたしに、ボスが水とタオルを用意してくれたのだ。


 ……ちなみに、ボスが血を拭おうとして、アンナちゃんが慌てて交代したりもした。


 そんなトラウマもあり、今日のあたしは血に怯えながら狩りをしていた。


 戦闘自体は苦戦しなかったけど、精神的な疲労がとても辛い状況だった。


「さあ、準備が出来ましたよ」


 ボスの声に顔を上げる。気が付くと、ボスが夕飯の準備を終えていた。


 ちなみに、今は鉱山の村で借りた小屋の中だ。ボスが村長と交渉して、小屋を借りる所は見ていたので知っている。


「お腹が膨れれば、気力も回復しますよ?」


「うん、ありがとう……」


 ボスが気遣う様に、スープの皿を差し出して来た。あたしは用意されたスプーンを手に取り、ボスのスープに口を付けた。


「あ、美味しい……」


 胃に落ちたスープが身体を温めてくれる。それだけでジンワリと、身体に力が戻った気がした。


 あたしが続けてスープを口にしていると、ふっとボスの視線に気付いた。


「……どうかしたかな?」


「少しは元気が出たみたいですね」


 ボスの目がすごく優しかった。その目はアンナちゃんを見る時と同じ目だ。


 安心感を覚えるその目に、あたしは心が大きく揺れた。


「な、ななな、何なのさ……!?」


 動揺したあたしは、自分でもよくわからない事を口にする。


 しかし、ボスはクスリと笑って口を開く。


「ロレーヌさんは頑張ってくれています。本当は血が嫌いなのに、仲間の為に頑張ってる事を知っていますよ。……だから、今晩だけでもゆっくり休んでおいて下さい」


「……は、はいぃ」


 その優しい声音に心がグラグラ揺れる。


 いつもは厳しいボスだけに、弱った時だけ優しいのはズルいと思う……。


「……っ!?」


 しかし、当然の如く、背筋に悪寒が走る。アンナちゃんがあたしを監視していた!


「…………」


「う、うぅ……」


 アンナちゃんはじっと見つめている。決して口にはしないが、何を言いたいかは目が語っている。


 ……兄に手を出すのは許さないと。


 あたしが冷や汗を流していると、ボスは何かを勘違いしたらしい。バッグからタオルを取り出して、あたしに手渡して来た。


「思った以上に疲れてるみたいですね。今から湯を沸かして、体を拭ける様にします。明日の為にも、今は食べれるだけ食べておいて下さい」


「は、はい……」


 あたしがガクガク頷くと、ボスはスッと立ち上がる。これからお湯を沸かすつもりなのだろう。


 そして、それを見たアンナちゃんも立ち上がる。お湯を沸かすのを手伝うつもりなのだろう。


 そんな二人を眺めながら、あたしは手にしたスープを再び口にする。


 ……うん。まだ温かくて美味しいね。


 違う意味で疲れたあたしは、それを癒す為に食事を進めた。疲れの為か、いつもよりは食べられなかった。


 ただ、それでもボスの食事は美味しかった。


 そして、男性陣は夜の間も見張り番を担当してくれた。


 あたしとアンナちゃんは寝ていて良いと言われたので、今日の所はお言葉に甘えさせて貰う事にした。




 翌朝にあたしが目を覚ますと、朝食の準備が出来ていた。美味しい食事とボスの微笑みに、あたしの心が再び揺さぶられる。


 ……やめて! これ以上、アンナちゃんのヘイトを稼ぎたくないの!?


 とまあ、朝から恐ろしい一幕もあったのだけど、二日目の狩りが始まった。今日は鉱山沿いにゴブリンの探索を行うつもりらしい。


 ボスとしては、昨日の成果に不満らしいね。今日はもっと多くの成果を狙うつもりらしい。


「ん、あれは……?」


 森の奥にゴブリンの気配を感じた。ただ、昨日までと違って、今回は複数の気配を感じる。恐らくは徒党を組んでいるのだろう。


 あたしは後方の仲間に手ぶりで合図を送る。あたしは右から回り込むので、タイミングを見て参戦する様にという合図だ。


 そして、あたしは迂回する様に森の中を進む。途中で対象を補足したけど、相手はノーマル、アーチャー、リーダーの三匹である。


 一番倒したいのはゴブリンリーダーだ。だけど、革の鎧を着ているので、急所狙いで一撃とはいかない。


 一撃で落とせないと反撃を食らうし、ファーストアタックには相応しい相手と言えない。


 二番目に倒したいのはゴブリンアーチャーだ。弓矢でリーダーを支援されると厄介な相手だ。


 こちらは鎧も来ていないし、急所狙いで倒せそうだな。


 最後はノーマルゴブリンだ。こいつは正直、大した相手では無い。不意打ちの急所狙いでなくても倒せるので、後回しでも問題が無いだろう。


 ……うん、あたしが狙うのはゴブリンアーチャーだね。


 リーダーはルージュに任せて、アンナちゃんに倒して貰おう。ノーマルゴブリンはその間に倒せたら倒す感じで。


 決断したら、後は行動に移すだけだ。あたしは気配を絶ち、足音を立てずに忍び寄る。そして、射程圏内に入ると、一気に距離を詰めた。


「ギャアアアア……!?」


 ゴブリンアーチャーが叫ぶ。断末魔の叫びと言う奴だ。


 あたしは背中に刺したダガーを引き抜く。心臓に刺さっていた為、勢い良く血が噴き出る。


 しかし、あたしはそれを浴びる事無く、彼等から距離を開けていた。


「ギャギャギャ……!」


 ゴブリンリーダーが怒り狂って叫ぶ。しかし、あたしに襲い掛かる前に、ルージュが乱入して足を阻んだ。


 それを見届けたあたしは、ノーマルゴブリンへと距離を詰める。


 手にした棍棒を振り上げるが、その動きは遅い。あたしは避けるまでも無く、喉を割きながら横をすり抜けた。


「うう、この感触には慣れないよ……」


 振り向くと、ノーマルゴブリンは崩れ落ちていた。そして、ゴブリンリーダーも焼け焦げて、地面に倒れた所だった。


 ゴブリンリーダーを中心としたパーティーとはいえ、所詮はゴブリンという事だろうか。初の団体戦にも関わらず、相手を瞬殺してしまったね。


 あたしは腰のポーチから布を取り出し、ダガーの血糊を拭き取った。そして、ダガーを腰に差すと、ボスの方に目を向ける。


「うん、問題無いね。このまま進むとしましょう」


 ボスは満足そうに頷いていた。どうやら及第点を頂けたらしい。


 あたし達はホッと胸を撫で下ろす。そして、倒したゴブリンの素材を回収すると、再び狩りを再開する。




 それから、三組程のゴブリンパーティーを倒し、合間に休憩も挟む。そして、その村を発見した。


「うわ……。すっごく沢山だね……」


 そこはゴブリンの村だった。数十と言うゴブリンが生活しており、流石のあたし達でも厳しそうな数に見える。


「あれは……まさか……!?」


 あたしはギョッとして振り向く。追いついたハスティールが叫んでいた。


 ……折角、隠れてたのに、どうして相手にバレる真似をするかな!?


 やはりというべきか、ゴブリン達がこちらに気付いてしまう。複数のゴブリンがこちらを指差すのが見えた。


 あたしはガックリと肩を落とし、ボスの方に視線を向ける。


 しかし、何故かボスは嬉しそうに目をギラギラさせていた。


「さあ、狩りの始まりです……」


 ボスが急にワイルドになった……!?


 ニヤリと笑うその表様に、あたしは何故か背筋がゾクゾクしていた。

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