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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第十四章 ヴォルクス帰還編

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アレク、対策を検討する

 今夜はペンドラゴン城で、会議が開催される。参加メンバーはボク、エドワード王、ザナック侯爵、それにポルク公爵だ。


 実質的なこの国のトップ。その四人が一堂に集まる事になった。


「いやはや、この顔ぶれが集まるとは……。一昔前では、考えも出来ませんでしたな……」


「うむ。これも、アレクの人望という奴だろう。実に良き事である!」


 戸惑った様子のザナック侯爵。それに対し、機嫌良さそうに答えるエド。


 そんな二人を見つめ、緊張した様子でポルクが訊ねる。


「しかし、急な呼び出しでしたね……。緊急の件とありましたが、議題は来月の結婚式でしょうか……?」


 ポルクの視線がボクに向く。詳しい話は手紙に書けなかった。なので、この反応も仕方が無いだろう。


 そして、エドが困った表情を浮かべる。チラチラとボクを見ながら、言い難そうに口を開いた。


「あ~、その、何だ……。そういう、目出たい話であれば良かったのだが……」


「エド。詳しくは、ボクから説明しましょう」


 ボクの助け舟に、エドが明らかな安堵の息を吐く。この件は非常に重い……。


 彼としても、余り口にしたい内容では無いのだろう。


 そして、ボクは視線をザナックさんに向ける。彼も興味深そうに、身を乗り出していた。


 ――なので、ボクは単刀直入に告げる。


「ボク達はカーズ帝国を甘く見ていた。このままでは、ペンドラゴン王国は滅ぼされる」


「…………は?」


 端的に言い過ぎた為、ポルクの思考が追い付かなかったらしい。彼はポカンと口を開いていた。


 勿論、ザナックさんも固まってしまっている。その為、ボクは二人に、補足の説明を行う。


「エルフの里で、帝国軍の一部と交戦した。そして、その戦力は圧倒的だった。あの場に居た数百人だけでも――いや、敵の大将が乗り出すだけで、ペンドラゴン城が落城する可能性すらある」


「え……? 大将一人で……?」


 余りにも現実離れした説明に、ポルクは目を白黒させている。ザナックさんすら、ボクの言葉を信じられない表情である。


 しかし、これは紛れも無い事実。それ程までに、エクストラスキルの有無は、戦況に大きな影響を与えてしまうのだ。


 そして、ザナックさんはハッとした表情を浮かべ、ボクへと恐る恐る訊ねる。


「アレク君……。もしや、報告書にあった、迷いの森消失というのは……?」


「はい、その通りです。敵の大将が放った、たった一つのスキルの結果です」


 その回答で、二人は事態を理解した。二人は黙り、揃って眉を顰めていた。


 そんな二人を見て、エドが慌ててフォローに入る。お道化た口調で二人に声を掛けた。


「なになに、そこまで気落ちする事は無い。こういう状況こそ、アレクが輝く時だろう?」


「「…………」」


 エドの言葉で、二人は顔を上げる。そして、救いを求めて、ボクの事を見つめる。


 なのでボクは、二人に大きく頷いて見せる。現状で取れる、唯一の選択肢を示す。


「敵のスキルの正体は、エクストラスキルと言います。このエクストラスキルには、エクストラスキルでしか対抗出来ません」


「それは……具体的に、どうすれば良いのだね……?」


 ザナックさんが首を傾げる。ボクの説明に、ピンと来ていない様子だった。


 なので、まずはエクストラスキルの説明から行うべきだろう。


「エクストラスキルとは、全ての上級職に存在する奥義の様な物です。その効果は、伝説に語られるドラゴンや魔神の能力にも匹敵します」


「なるほど……。敵はそんなスキルを……」


 元々が冒険者だったという事もあるのだろう。ポルクはすぐに理解を示す。


 逆にザナックさんは、納得がいない様子で疑問を投げ掛ける。


「それは、簡単に習得出来る物なのかね? そうであれば、もう少し世に知られていると思うのだが……」


「ええ、エクストラスキルは、簡単に習得可能な物ではありません」


 ザナックさんの問いに、ボクはキッパリと告げる。正直、この世界で習得してる存在がいる等、考えもしていなかった。


 この世界の冒険者は、そこまで能力が高くない。あの世界のプレイヤー達とは違うのだから……。


「習得にはまず、ドラゴンや魔神等、伝説に語られる存在を倒す必要があります」


「「は……?」」


 ザナックさんとポルク。二人は揃って、間の抜けた声を出す。


 しかし、ボクは気にせず話を続ける。


「そして、そこで得られるアイテムを供物に、神々の試練に挑みます。そして、その試練を乗り越えると、神々よりエクストラスキルが与えられるのです」


「「……ち、ちょっと、待った!!」」


 説明を終えたボクは、二人の態度をジッと見つめる。この反応は予想出来ている。


 当然、次に二人が述べるであろう台詞も……。


「何を、無茶苦茶言っているのかね……!? 伝説の存在等、人間が倒せる相手では無いだろう……!」


「それに、神々の試練って何ですか……!? それこそ、伝説に語られる英雄譚サーガじゃないですか……!」


 慌てる二人を、苦笑して見つめるエド。彼は数日前に、既に同じ反応をボクに返したからね。


 そして、ボクは二人を静かに見つめる。そして、先日同様の答えを返す。


「カーズ帝国は、その英雄譚サーガを再現したんですよ。――悪魔王ダンテ。カーズ帝国の古の英雄……。その伝承を元に、『魔王召喚サモン・サタン』のスキルを習得してみせたのです」


「「…………」」


 それぞれの上級職には、それに対応する古の英雄が存在する。そして、英雄の伝承は各国に散らばる。


 その為、職によってはペンドラゴン王国では習得出来ないスキルも存在するのだが……。


「ペンドラゴン王国で取得可能なエクストラスキルは五つ。騎士の『勝利の剣(エクスカリバー)』。守護者の『神威の障壁(ゴッド・ガード)』。剣豪の『明鏡止水オール・カウンター』。狙撃手の『静止する世界(アイオーン)』。――そして、賢者の『森羅万象オール・オブ・クリエイション』になります」


「そこまで、わかっているのか……」


 ザナックさんが息を吐く。安堵が半分、呆れが半分といった雰囲気だ。


 しかし、ポルクはザナックさんと異なり、難しい表情で訊ねる。


「守護者と狙撃手と賢者。この三つは、アレクさん達が習得可能でしょう。しかし、その他の候補者は……?」


 ポルクの疑念は理解出来る。神の試練に挑める者が、存在するのかという懸念だ。


 そして、ボクはポルクへと頷いて見せる。


「騎士団にLv50に達する騎士は存在しない。そして、冒険者の中にも、Lv50に達する剣豪は確認されていない」


「それじゃあ……」


 ポルクは眉を顰める。そして、悔しそうな表情を浮かべる。


 ポルクの抱える元『銀の翼竜』のメンバー。彼等もLv50には達する者は存在する。


 しかし、該当する上級職は狙撃手だけ。その彼も、装備はユニーク級以下で、神の試練に挑むに心許ないからだ。


 ボクはポルクに対し、力強く頷いて見せる。


「エクストラスキル習得は、ボク達に任せて貰おう。まずは、ボクとギリーとルージュ。この三人が習得するだけでも、帝国への備えが大きく違ってくるからね」


「本当に、歯がゆいですね……」


 エクストラスキル持ちは、多ければ多い程良い。しかし、現状はこの三人が、最低限の挑戦権を持っているメンバーである。


 それに、ポルクには悪いが、元『銀の翼竜』のメンバーは習得場所に難がある。装備が整っても、簡単に挑める場所には無いのだ。


 魔導士、魔法剣士はカーズ帝国。聖騎士は聖法国が習得場所となっている。ペンドラゴン王国とは、友好的な関係とは言えない国だ。


 そして、暗殺者、拳聖は飛竜王国。同盟国なので、まだマシとは言える。しかし、距離を考えると、簡単に出かけられる場所では無い。


「エクストラスキル対策は、今はこれ以外に無いでしょう。そして、カーズ帝国の脅威は、大将の能力だけではありません」


「それは、どういう事かね……?」


 ザナックさんは、疲れた様子で訊ねて来る。エクストラスキルだけで、もうお腹一杯な状態なのだろう。


 とはいえ、これは話しておかねばならない。こちらの備えは、皆にお願いする事になるのだから。


「カーズ帝国の兵士数百人は、全てユニーク級装備で身を固めていました。そのレベルも、恐らくは最大値に近い状況でしょう」


「そんな……。全員が、ミスリル級だと……?」


 ポルクの言うミスリル級とは、冒険者としてのランクの事だ。本来は、国防の兵士に使う指標では無い。


 しかし、その強さをイメージするには適していた。この国最高ランクの冒険者達。それに匹敵する強さを、敵の全兵士が持っているのだから。


「ええ、その通りです。その為、我々も練兵の見直しが必要となります」


「まあ、そうなるか……」


 ボクの言葉に、ザナックさんが同意を示す。その表情は実に渋い物だったが。


 そして、今の状況をわかりやすく例えると。敵軍の平均レベルは最大の50。


 それに対し、王国騎士団の平均レベルは35。ヴォルクス私兵団でも40である。


 装備を抜きにしても、その質が劣っているとわかる。


「その為、冒険者には高額でユニーク級装備の素材集めを依頼。軍事関係者には、平均レベルの底上げを行う事が、急務となっています」


「なるほど……」


 ポルクも疲れた表情を浮かべる。エクストラスキル以外にも、大変な備えが必要と理解したのだ。


 そして、その為には莫大な資金が必要となる。それは王都の財源だけでは賄い切れない程である。


 そうなると、資金を集める為に、貴族達からの協力も必要となる訳で……。


「わかった……。貴族達への説明と、協力要請はこちらで行おう……」


「ヴォルクスでも、出来る限りの資金と物資の支援を検討します……」


 二人の返答に、ボクとエドは揃って息を吐く。これで少しは、肩の荷が下りた。


 二人を巻き込んだ事は申し訳無いと思う。しかし、これは国の存亡に関わる問題なのだ。


 二人にとっても、他人事では無いからね……。


「あ、それと……」


「ん……?」


 話しが終わったと思ったら、ポルクが小さく手を上げる。


 そして、言い辛そうに、ボクへと視線を向ける。


「こんな状況ですが、来月の結婚式は……?」


「ああ、その事か……」


 ポルクの言いたい事はわかる。今の状況を考えるなら、延期や中止を検討すべきだ。


 しかし、それが出来ない理由もある。その辺りも話しておかないとな。


「結婚式は予定通り行います。そうでなければ、国中に不安が広がりますしね」


「そう、ですか……」


 ポルクが僅かに口元を緩める。その反応からすると、彼も行うべきと考えていたのだろう。


 その理由まではわからないが、ボクの抱える事情を説明しないとな。


「以前に軽く話したけど、ボクは帝国で生まれたんだ。そして、ボクは皇帝の息子らしいんだよね。――それもあって、帝国の大将は、ボクを味方だと勘違いしている」


「「は……?」」


 ボクの言葉に、二人は揃って口を開ける。その様子に、エドが再び苦笑する。


 ……エドとまったく同じ反応だしね。


「どうも、理由があってこの国で活動していると、勝手に推測してるみたいでね……。急な方針変更で、不審に思われたく無い事情もあるんだ」


「それは、どういう……?」


 困惑した表情のポルク。ザナックさんも、眉を顰めて耳を傾ける。


 ボクは苦笑を浮かべ、二人に説明を行う。


「エルフの里で会った時、敵将はボクを皇子として接してくれてね。実の所、帝国兵を撃退したと言うより、身を引いてくれたと言う方が正しいんだ……。ボクの考えを尊重してくれてさ……」


「「…………」」


 二人は揃って、何とも言えない表情となる。色々と認識にギャップがあったせいだろう。


 ボクは肩を竦め、彼等に続きを話す。


「勘違いしてくれてる間は、相手も大人しくしてくれる……。少しでも時間を稼ぐ為に、結婚式の予定を変えたくないんだ。勘違いに気付くと、相手がどう動くか不明だしね」


 その説明に、ザナックさんは納得する。ただし、疲れた様子で、椅子に背を預けているが。


 そして、ポルクは静かに頷き、顔を伏せる。


「そう、ですか……」


 ポルクは納得した様に返事を返す。そして、そのまま何も言わなくなる。


 ポルクが最後に発した言葉。それは、何故か泣き声の様に感じられた。


 不思議とそれが、ボクの中で強く印象に残った……。

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