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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第十三章 世界樹防衛戦編

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ユニーク・スキルの正体

 フェリシアの持つ魔導書。ネクロノミコンが力を解き放つ。


 黒い触手が伸び、ボクの召喚したヴァンパイアを包み込んだのだ。そして、次の瞬間……。


 ――ネクロノミコンが燃え尽きた。


「……は?」


 フェリシアの手の中で、一瞬だけ黒い炎が立ち上がる。


 そして、あっという間に灰となり、彼女の手から零れ落ちた。


 茫然と事態を見守る中、乾いた笑い声が耳に飛び込んで来る。


「――ハ、ハハッ……」


 その声に、皆の視線が集中する。


 声の主はフェリシア。彼女は自らの手を見つめ、徐々に笑い声を上げて行く。


「ハハハッ……。アハハハハ……!」


 見れば、周囲の帝国兵も戸惑っていた。この事態は想定外なのだろう。


 そして、ボクは召喚したヴァンパイア達を確かめる。


 四人のヴァンパイアは、『死者の支配ドミネート・アンデッド』の効果を受けていない。その証拠に、今も帝国兵を相手に戦い続けていた。


「可能性は、確かにあった……! 誰もが有り得ないと、一笑に付したが……!」


 その声に、再び皆の視線が集まる。フェリシアは、興奮した様子で叫んでいた。


 何故だか狂気を感じされる、壮絶な笑みを浮かべながら……。


「このワタクシでさえも、有り得ないと否定した……! その可能性が示す意味を考え……!」


「……っ!?」


 フェリシアの視線がボクに向く。その瞳は、真っ直ぐにボクを見つめていた。


 空腹の獣が、獲物を求める様な……。そんな、貪欲さを込めた瞳で……。


「だが、ここに証明された……! 有り得ないと思われた可能性……! その僅かな可能性が、真実なのだと証明された……!」


「何が、証明されたのですか……?」


 その視線が恐ろしく、ボクは思わず問い掛けてしまった。余りの眼圧に、黙っている事が出来なかったのだ。


 そして、フェリシアは語り出す。その溢れ出す情熱を、言葉に乗せて……。


「アーレウス皇子のスキルは、ワタクシの術では支配出来なかった……! しかし、それはワタクシの術式が、不完全だからではありません……!」


 フェリシアは自らの手を掲げる。それが証拠であるかの様に。


 しかし、当然ながら、そこには何も無い。持っていた魔導書は燃え尽きたのだ。既にその灰すら、どこかへと飛び散ってしまっている。


「ネクロノミコンが燃え尽きたのです……! 『伝説級レジェンダリー』のアイテムが、破壊されてしまったのです……! それはつまり、アーレウス皇子のスキルが、『伝説級レジェンダリー』では無かったと言う事になります……!」


「『伝説級レジェンダリー』では、無かった……」


 その言葉にようやく、フェリシアの意図が理解出来た。彼女が何に興奮しているのか……。


 ボクのスキルは『死者の支配ドミネート・アンデッド』を弾いた。そこから考えて、等級が『伝説級レジェンダリー』より下と言う事は有り得ない。


 そして、ネクロノミコンは破壊された。ボクのユニーク・スキルの抵抗によってだ。


 そうなると、ボクのユニーク・スキルは……。


「――そう! アーレウス皇子のスキルは『神級ゴッズ』! 我らが神の加護等ではありません! その様な、生易しい物では無かった! アーレウス皇子は、神の力そのものを振るわれていたのです!」


「そう、なるのか……?」


 ボクとしては、余りに実感が沸かない。これまで、通常の死霊術より、強力になるスキルとしか思っていなかったのだ。


 しかし、フェリシアの言う通り、先程の現象が示している。ボクのユニーク・スキルは、『神級ゴッズ』である可能性が高いと……。


「素晴らしい……。素晴らしいです、アーレウス皇子……! やはり、ワタクシの考えは、間違っていなかった……! アーレウス皇子こそが、我々を導く神子だったのだ……!」


 興奮するその様子に、ボクは思わず目を剥いてしまう。フェリシアは感動の余り、ボロボロと涙を流し出したからだ。


 そして、その場に膝を付き、祈る様にボクを見つめる。


「アーレウス皇子……。どうか、帝国へお戻り下さい……。このフェリシア、アーレウス皇子の為ならば、命すら投げ出す覚悟で御座います……」


「な……!?」


 ゆっくりと頭を下げ、そのまま地に伏す。それは、紛れも無い平伏の証。日本的に言うなら、土下座という奴である……。


 恥も外聞も気にし無い。部下に見られている等と考えても居ない。それは、どこまでも真摯な訴えであった……。


 ――しかし、そんな訴えに、唐突な横槍が入る。


『――こちら、世界樹攻略班。現在、ヴァンパイアと交戦中。その数、およそ百体以上』


「何だと……?」


 声の発生源は、フェリシアの腕だ。正確には、腕の通信用リングからである。


 その声にフェリシアは顔を上げ、表情を一変させる。帝国軍大将の表情で、その通信に耳と傾けた。


『発生数から、殺害したエルフがアンデッド化した物と思われます。しかし、その異常な程の強さから、現状は防戦状態です。世界樹を攻め落とすのは困難。如何致しましょうか?』


 通信内容を聞き終え、フェリシアはゆっくりと視線を移す。


 彼女はボクを見つめ、悲し気に微笑んだ。


「なるほど……。手玉に取られたのは、こちらの方でしたか……」


「…………」


 どうやら、ボクのユニーク・スキルが、エルフの里まで及んでいたらしい。帝国兵に殺されたのは、この場の四人だけでは無かったからだ。


 そして、フェリシアは勘違いをした。ボクが性能試験を行った狙いが、あちらの防衛を行う為なのだと……。


「今はまだ、帝国に戻る気が無いのですね……?」


 フェリシアは、穏やかにボクへと問う。それは答えを知って、確認を取っている雰囲気だった。


 なので、ボクは静かに頷く。今はその勘違いに、便乗する時である……。


「ならば、我々は引く事に致します……。アーレウス皇子の気が向くまで、このフェリシアはお待ち致します……」


 フェリシアは、ゆっくりと立ち上がる。毅然とした表情で、ボクの事を見つめながら。


 そして、通信リングに向け、帝国軍の大将は宣言する。


「世界樹の攻略は中止。これより撤退する。拠点の撤去が済み次第、帝国まで帰還せよ!」


『ハッ! 承知致しました!』


 通信リングから了承の言葉が返る。恐らく、エルフの里では、帝国兵の撤退が始まった事だろう。


 そして、フェリシアはこの場の兵達にも指示を出す。彼等は迅速な行動で、この場から転移して消え去って行く。


「それでは、失礼致します。お気が変わられましたら、いつでもご連絡下さい」


 フェリシアは優雅に一礼する。そして、頭を下げた姿勢のまま、転移して消え去ってしまう。


 残されたのは、ボクの仲間達とヴァンパイアのみ。あっという間に、荒野は静けさに包まれた。


「嵐の様な、出来事だったな……」


 周囲を見渡せば、そこは完全な荒野。エルフの里を守る、迷いの森は残っていなかった。


 今回もまた、多くの命が奪われた……。守り切ったと言うには、余りにも犠牲が大きすぎる……。


「それじゃあ、報告に戻ろうか……?」


 ボクは仲間達に視線を向ける。彼等は一同に疲れた表情で頷いていた。


 そして、四人のヴァンパイアは、ボクに感謝を述べて消えてしまう。彼等の魂もまた、冥府へと届けられた事だろう……。


 ボクはジェラハムさんを蘇生させ、生き残ったメンバーで里を目指す。荒野と化した、地を踏みしめながら……。

第十三章は以上で終了となります。

次回は一話だけ、閑話を挟みます!

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― 新着の感想 ―
なんか主人公ずっと精神面成長してなくない?
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