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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第十三章 世界樹防衛戦編

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アレク、女王と謁見する

 あの後、騒ぎを聞きつけたエルフの女王が、使者を送り出してくれた。あの対応はジェラハムさんの独断だったらしく、ボク達はお咎め無しで里へと招かれる事となる。


 そして、ボクとリリアナさんの二人は、世界樹の麓まで向かっている。行き先が女王が住まう聖域らしく、代表のボク達以外は里で待機する必要があるらしい。


 まあ、リリアナさんの態度を見れば、護衛無しでも問題無いと思われる。彼女はそれが当然と言った態度で、女王の使者へと丁寧な対応を返していた。


 そして、ボクは流れに身を任せ、使者さんの案内に大人しく従う。この里の中心にある、世界樹の元へと向かって……。


「てか、随分と大きいんですね……」


「ええ、世界樹を超える樹木も、建造物も、この世界には存在しないでしょう」


 ボクの呟きに、リリアナさんは胸を反らして答える。前を歩く使者さんの背中もピンと張り、二人が誇りを感じている様子が伺えた。


 ちなみに、使者さんは見た目は三十過ぎた女性のエルフだ。大人しそうな感じで、余り口数は多くない。


 ボクは苦笑を浮かべつつも、再び世界樹へ視線を送る。実物と比較した訳では無いが、幹は東京タワーよりも高く思える。そこから更に、枝葉が伸びて天を覆っているのだ。


 ……薄暗いとは感じない。けれど、世界樹はエルフの里全体を覆っているらしい。


「それにしても、随分と距離がありそうですね……」


「ええ、そうですね。ですので、そろそろ精霊の力を借りましょう」


 そう言うと、リリアナさんは魔法を唱え始める。短い呪文が完成すると、ボク達の周囲に柔らかな風が吹き始めた。


「風の精霊の加護を得ました。これで、移動速度が上がりますよ」


 移動速度は五割増しと言った所だろうか? ヘイストの効果を全体化した感じかな?


「へえ……。ってか、どうして初めから使わなかったんですか?」


 ボクの何気ない質問に、何故かリリアナさんは顔を背ける。更には何故か、前を歩く使者さんまで挙動不審な態度となる。


 そして、ボクはその態度で何となく察した……。


「……初めての来客に自慢したかった?」


「な、ななな……何の事ですかね……!?」


 動揺を見せるリリアナさん。普段は冷静な態度なだけに、そのギャップがとても鮮烈だった。


 それと同時に、リリアナさんを始めて、リリーさんの妹だと感じる事が出来た。あの師匠もミーアにツッコまれて、よく目が泳いでいたな……。


 ボクは懐かしさを感じながらも、苦笑を浮かべる。そして、落ち着きを無くした二人に対し、軽く肩を竦めて言い放つ。


「まあ、何でも良いですよ。それよりも、女王を待たせるのも失礼でしょう?」


「そ、その通りですね……! 急いで女王様の元へと向かいましょう!」


 リリアナさんと使者さんは、激しく同意を返してくれた。先程の空気を誤魔化す様に、真剣な表情で移動速度を上げて行く。


「さあ、急いで下さい! 置いて行ってしまいますよ!」


「……仕方の無い姉妹だね」


 ボクは小さく呟くと、世界樹へと向かって小さく駆け出すのだった。




 世界樹の麓にある、大きな洞へと足を踏み込む。洞と言っても、ちょっとした屋敷が収まりそうなサイズで、中はダンジョンの様に複雑な構造となっている。


 そして、使者さんに案内されたのは、最奥の部屋らしき場所だ。木製の大きな扉の前には、巫女装束の二人のエルフが立っていた。


 その二人が、そっと扉を開くと、ボク達は部屋の中へと導かれて行く。室内は清浄な空気で満たされ、どこからともなく柔らかな光が注ぎ込まれていた。


 ……何となく、礼拝堂の様な雰囲気だなと感じてしまう。


「良くお越し下さいました。人間族の若き勇者よ……」


 声の主は白髪の老婆。水晶らしき透明なテーブルの奥に、木製の椅子に腰かけた人物である。


 質素な薄緑のドレスを纏い、両脇には二人の巫女を侍らせている。上品そうに微笑む彼女こそ、エルフの女王で間違い無さそうだった。


「初めまして、エルフ族の女王様。私の名は、アレク=ホワイト。ペンドラゴン王国で宮廷魔術師を務め、ペンドラゴン国王よりの使者として参った者です」


 部屋の中央へと進み、跪いて挨拶を行う。今の僕はペンドラゴン国王、エドワード=ペンドラゴンの代理。無作法な真似は見せられない。


 ――しかし、そんなボクの頭に、クスクスと笑い声が降り注ぐ。


 ボクは失礼があったかと、慌てて頭を上げる。そして、テーブル越しに女王の様子を伺う。


「ええ、アレクさんの事は、良く存じていますよ。この子の弟子なのでしょう?」


「え……?」


 エルフの女王は、右手の巫女へと視線を向ける。釣られて視線を向けると、その巫女は微かに口元を打緩めた。


 ……というか、その顔を見て、ボクは思わず叫んでしまう。


「リ、リリーさん……!?」


「気付くのが遅い……」


 不服そうな口調で呟いたのは、ボクの師匠でもあるリリーさん。十年近く経ったと言うのに、その顔はまったく変わって無かった。


 ……ちなみに、言い訳をすると、気付かなかったのは服装のせいだ。


 ボクの知るリリーさんは、常に旅人風の恰好だった。それが今は、白っぽい清楚な巫女装束を着ている。纏う雰囲気が完全に違っているのだ。


「服装で雰囲気が、随分と変わる物ですね……」


「むしろ、里ではこれが普通……。今の私は旅人じゃ無い……」


 まあ、言われてみれば、それもそうか。住み慣れた実家で、ずっと旅装束はあり得ない。


 それに、リリーさんが次代の女王候補という話は、子供の頃から聞いていた事でもあるしね……。


「さあ、まずは立ち上がって下さい。そして、どうぞ席へお掛け下さい」


「あ……。えっと……?」


 ボクはリリアナさんへと視線を向ける。女王の言葉に従っても、無礼にならないかを確認がしたかったからだ。


 そんなボクに、リリアナさんは優しく頷いて見せた。どうやら、席に着いても問題は無いらしい。


「それでは、お言葉に甘えまして……」


 ボクは立ち上がり、透明なテーブルへと歩み寄る。幸いな事に椅子は木製であり、草で編んだクッションも有って、座り心地は悪く無かった。


 ボクが席に着くのを確認し、待っていた女王は口を開く。柔らかではあるが、威厳の籠った声を発する。


「それでは、改めまして……。私は第八代目の女王ティタニア。この地で、世界樹の管理を任された者です」


 女王ティタニアは、まっすぐにボクを見つめる。その瞳は全てを見通すかの様に、とても澄んだ翡翠色であった。


 そして、女王ティタニアは、柔らかな笑顔と共に告げる。


「世界樹の危機に立ち向かう勇者よ。これより私は、貴方へと世界の秘密をお伝え致します……」


「は……?」


 その思わぬ言葉に、ボクはポカンと口を開く。


 ……ボクって、帝国の侵攻を防ぐ為に、エルフの里に救援に来たんだよね?


 間違っても、世界の危機を救う勇者とかでは無かったはずだよね?


 状況について行けないボクは、ただ女王ティタニアの言葉を待つのだった……。

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