新たな方針
あの後、ポルクやアンリエッタ。それに、アンナ達に、共同墓地での出来事を話した。複雑な心境だっただろうが、誰もが何も言わずに言葉を飲んだ。
そして、帝国の企てを聞いた、ヴェインさんとフューズさん。二人には心当たりがあったらしい。しかし、証拠は既に消されており、帝国の関係者は既に撤退済みだろうと話していた。
ボク、ポルク、フューズさん、ヴェインさんの四人は、その後も残って話し合った。帝国への備え。王侯貴族への対処。ヴォルクス領の経営。それぞれの、取るべき方針について……。
その翌日に、ボクは『白の叡智』の仲間達を集める。朝食前の時間、クランハウスのリビングへと……。
「あ~、そういう訳で、今日から彼女が、新しく仲間に加わる事になりました~」
「皆様ご存知と思いますが、元『銀の翼竜』のアンリエッタです。宜しくお願い致しますわ」
アンリエッタは、ペコリと頭を下げる。ヴォルクス城から直行で来た為、今の彼女は白のドレス姿。場所を考えると、ちょっと珍しい光景である。
そして、そんなアンリエッタを、メンバーは茫然と眺める。『白の叡智』の全員が、状況に付いて来れていなかった。
ちなみに、そのメンバーにはギルも含まれている。実はボクも朝帰りの為、まだ彼にすら話して無かったりする。
アンリエッタは顔を上げ、一同にニコリと微笑む。その笑顔はいつも通り。ヴォルクス城で見せた感情は、ここでは出さないつもりらしい。
「ア、アレク様……。これは、一体どういう……」
皆が固まる中で、珍しくギルが発言する。普段であれば、彼は皆の陰になりたがる。
しかし、今回ばかりは流石に、黙っていられなかったらしい……。
「ポルク達と話し合ってね……。これが、ベストだろうって結論になった……」
「ですから、その経緯をご説明下さい……!」
おぉ、ギルから始めてツッコミを受けた……。謎の感動があるな……。
ボクは回らない頭を何とか動かす。そして、少しずつ説明を行う。
「えっと、ポルクが新領主に就任……。『銀の翼竜』は解散……。アンリエッタの扱いに困る……。本人の希望で『白の叡智』に加入……って流れだけど、オーケー?」
「アレク……。お前、寝てないのか……?」
呆れた様子で、ギリーが訊ねて来る。それに対し、ボクは苦笑を浮かべる。
そして、状況を察してくれたのだろう。ギルは気を取り直し、改めてボクに質問する。
「では、本当にアンリエッタ様は……?」
「はい、今日からこちらでお世話になりますわ」
ギルの問いに、微笑みで返すアンリエッタ。その返事に、一同は再び驚きを示す。
そんな中でも、一番驚いたらしいのが……。
「ア、アンナちゃん……!? 気をしっかり……!」
よろけて倒れそうな所を、隣のロレーヌが支えていた。どうやら、人見知りなアンナには、衝撃が強過ぎたらしい。
そんなアンナの様子に、アンリエッタはクスクス笑っていた。
「あ~、それと、当面はクラン方針として、レベルアップと、装備強化に集中するから……。メリッサとかクラン事務局には、ポルクの方から連絡行ってると思うよ……」
「ふむ……。北への備えか……?」
ギリーの質問に、ボクは頷いて見せる。ただし、それだけでは無いので、補足説明も行う。
「それも当然あるね……。後は、最高難易度の依頼を達成可能になって、この国全体の発展を促す……。この国の狩場を開拓しまくって、冒険者や兵士の全体的な底上げを行う予定……」
「なるほど。高級素材の流通とか、狩場情報の公開を行うんだね?」
ボクの言葉に、ハンスさんが真っ先に理解を示す。そして、その言葉で、大半のメンバーは理解したみたいだ。
ただ、シア達の製造組は、理解出来ていない様子。なので、一応の説明を加えておく。
「あ~、オリハルコンとか、ドラゴンの鱗とか……。素材が流通すれば、高級装備の値段が下がる……。狩場情報が公開されれば、今までより一段上の狩場に挑める……。そうやって、人が育ちやすい環境を作って行く……。そうすれば、カーズ帝国も迂闊に手を出せなくなるからね……」
これが、ポルク達と相談して決めた、『白の叡智』の活動方針である。ただ、強いだけの個のクランでは無い。ボク達は、全てのクランを引っ張り上げる、リーダー的なクランとなるのである。
その他にも、話し合った事は色々ある。アンリエッタ加入の理由なんかも……。
ただ、今すぐ話す必要は無いだろう。ボクの出自なんかも、今すぐ何かが出来る訳でも無いしね……。
……というか、もうそろそろヤバいな。
目を開けてるのも辛くなって来た……。流石にもう、休ませて貰うか……。
「あ……。アレク……!」
「ん……?」
隣のアンリエッタが、ボクに呼び掛けて来る。ボクは朦朧とする頭で、彼女の方へ振り向く。
すると、アンリエッタは、ニコリと微笑む。そして、何故かこちらに、両腕を広げて見せた。
「どうぞ、お休み下さい」
「は……?」
アンリエッタは何を言ってるんだろう? 彼女の意図が、まったくわからない……。
そう思うと同時に、ボクは限界を迎える。目も開けていられず、その場でグラリと姿勢を崩す。
「あっ……!?」
アンナの短い叫びが聞こえる。しかし、ボクは何の反応も出来無かった。
ボクは柔らかな何かに包まれ、そのまま深い眠りへと落ちてしまう……。




