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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第十一章 レクイエム編

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アレク、ゼロの過去に触れる

 ゼロと謎の霊体。その二人の関係に、ボクは状況を理解出来ずにいた。


 すると、謎の霊体は、ボクへと視線を移す。そして、スッと頭を下げて来た。


『アレク様……。どうか、彼女と話をさせて下さい……』


 ――その声を聞き、ボクとは咄嗟に理解した。


 ボクは彼女の事を知っている。その気配は、ずっとボクの背後にあった。ボクが生まれた時からずっとである……。


 だからこそ、悪意ある存在とは思えなかった。ボクはすぐさま、彼女の願いを叶える事にする。


召喚サモンヴァンパイア」


「なっ……!?」


 咄嗟の召喚に、ゼロが焦った様子を見せる。この流れで、すぐ戦闘に突入するとは、考えていなかったのだろう。


 そして、物陰から飛び出す二つの陰。その姿は、怨霊騎士カースド・ナイト奈落童子スポーン。やはり、ゼロの仲間も控えていたみたいだ。


『マギー……。貴女は、マギーなのですね……?』


「は……?」


 真っ白な顔に、二本の牙。真っ黒なマントとタキシードに身を包んだ姿。彼女の姿は、紛れもないヴァンパイアだった。


 そして、召喚した魔物が話し出した。その状況に、ゼロ達が動きを止める。


『私の名はクリステル……。貴女の母です……。私が、わかりますか……?』


「クリス……テル……」


 その名を聞いて、ゼロの表情が豹変する。


 ――その感情は憤怒。


 クリステルと名乗るヴァンパイアに向かい、ゼロはヒステリックに叫び出した。


「クリ……ステル……クリステル……! 貴様が、オレを捨てた女か……!? その顔……。忌々しい程に似た顔……! 間違いねぇ……! テメェはオレの母親だな……!」


『マギー……』


 クリステルさんは、悲痛な表情を浮かべる。ゼロの姿に、悲しそうな眼差しを向ける。


 そこで、ボクは気付く。確かにゼロの言う通りだ。クリステルさんとゼロは、良く似た顔立ちをしている……。


 しかし、ゼロは大きく手を振り払った。そして、クリステルさんへと吐き捨てる。


「気安く、その名で呼ぶな……! オレを捨てておいて……! オレ達がどれ程苦しんだかも知らず……! 今更、母親面してんじゃねぇよ……!」


 ゼロ自身、気付いていないのかもしれない。彼女の瞳から、止めどなく溢れる涙に……。


 そして、ゼロの仲間は、そんな彼女を心配そうに見つめる。今にも暴発しそうな、余裕の無い彼女の姿を……。


「なあ、わかってるのか……? わかってたよな……!? オレを置いて、そいつを連れて行った……! その結果、オレ達がどうなるかって……!」


『仕方が無かったのです……。それは、必要な事だったのです……』


 クリステルさんは、顔を伏せて地面を見つめる。ゼロの視線に耐えかねたかの様に……。


 しかし、その反応が、ゼロに更なる火を点ける。


「仕方無かっただと……!? オレ達が地獄に落ちるのが、仕方無かったって言うのか……! お前のせいで、何人が死んだか知ってんのか……!? 知った上で、そんな事を口にしているのかよ……!?」


『あの国を救うには……。それしか無かったのです……』


 ゼロの激昂に、クリステルさんは耐える。その怒りを受け止め、それでも言葉を届けようとする。


 しかし、今のゼロの状態では、その思いが届くはずもない……。


「ふざけるな……! テメェだけは許さねえ……! オレのこの手で、もう一度殺してやる……! 二度とこの世に、戻って来れねぇようにな……!」


 腰を落とし、戦闘態勢を取ろうとするゼロ。しかし、ボク達が動くより先に、彼女の仲間が動いた。


「なっ……!? 離せ……!」


 怨霊騎士カースド・ナイトがゼロを羽交い絞めにする。そして、奈落童子スポーンの女が前に出る。彼女は帰還のスクロール片手に、クリステルさんを指差していた。


「後は、彼女に聞けと……?」


 奈落童子スポーンの女は静かに頷く。そして、手のスクロールを発動させた。


 その様子に、ギリーがスッと身を寄せ、訊ねて来た。


「良いのか……? このまま行かせて……?」


「うん……。多分、そうした方が良い気がする……。ボクの勘なんだけど……」


 ボクの返事にギリーが頷く。そして、構えた弓を下へと下ろす。


 ギリーならきっと、あのスクロールを狙えた。発動を阻害し、帰還を阻む事も出来たのだろう。


 しかし、ボクはクリステルさんに視線を向ける。彼女は静かに、ゼロの事を見つめていた。彼女を止める気が無さそうだった……。


「くそっ……! くそったれがぁ……!」


 叫び声を残し、ゼロ達が光に消えて行く。共同墓地には、静寂だけが残された。


 そして、ふっとクリステルさんが、ボクの方へと振り向いた。そのまま頭を垂れ、ボクに対して恭順の意を示す。


『全てを、お話しさせて頂きます。アレク様――いえ、アーレウス皇子……』


「アーレウス……皇子……?」


 クリステルさんが、その顔を上げる。彼女の瞳が、真っ直ぐにボクを見つめていた。


 そして、更なる混乱に追い込まれたボクは、ただ彼女の言葉を待つだけだった……。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 案の定、ゼロは見逃す方向ですね。やっぱりこの作品も、信賞必罰のバランスがどんどん悪くなる、侵した罪の重さに相応しい罰を与えるという基本を甘ちゃんな思考で忘れてしまう方向に行くのですね。…
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