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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第十一章 レクイエム編

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アレク、悲しみを受け止める

 アンリエッタは、ボクの胸に顔を埋めている。これでも、先程よりは落ち着いた方だ。


 それでもまだ、時折すすり泣く声が聞こえているけどね……。


 そんな悲しみの満ちた部屋で、ポルクがポツポツと語り出した。


「アベル兄様も……。昔は優しかったんです……」


 その呟きに、ボクはじっと耳を傾ける。背後のギルも、何も言わずに控えていた。


 ポルクは悲痛な面持ちで、ぎこちなく笑みを浮かべる。


「ボクが小さな時は、良く遊んでくれました……。とっても、ノンビリしていて、無邪気な人だったんですよ……?」


「はい……。私もその頃は、友人として接して頂いておりました……」


 背後のギルもポツリと呟く。その頃の、アベルさんとの思い出があるみたいだ。


 ……というより、ギルは二十歳でアンリエッタ達より年上。アベルさんとは、同世代な気がする。


 それに、元々ギルは、アベルさんの執事になる予定だったんだよな……。


「それが、変わってしまったのは……。恐らく、母様が死んでからでしょう……」


 ユリウスさんの奥さん。そして、ポルクやアンリエッタの母親。


 噂では聞いた事がある。十年程前に、病気で他界してしまったと……。


「小さかった、ボクや姉様も悲しみました……。ですが、アベル兄様の悲しみは、それよりも深かったみたいです……。母様の死を受け入れられず……。神や世界を呪い……。父様をも恨みました……」


「ユリウスさんを……?」


 母親を病気で亡くし、神や世界を呪うのまだはわかる。しかし、それで父親を恨む理由が、ボクにはピンと来なかった。


 すると、ポルクはゆっくりと息を吐く。拳を握って、苦し気に声を絞り出す。


「アベル兄様の逆恨みです……。父様が公務で、母様の死に目に会えなかった……。それで、母様より仕事を優先したんだって……」


 ボクには理解出来なかった。生前では、両親の死に目に、会えなかった事もあるかもしれない……。


 しかし、爺ちゃんの死に目には会った。悲しかったけど、それで誰かを恨む事は無かった。


 それは、爺ちゃんが幸せそうに、この世を去ったお陰なのだろう……。


「ポルク達の母さんは……。幸せそうだった……?」


「え……?」


 ボクの質問に、ポルクは驚いた表情を浮かべる。その質問が、唐突過ぎたのだろう。


 しかし、すぐに笑みを浮かべる。ほんの僅かだけど、苦しそうな表情が緩む……。


「ええ……。父様を……そして、ボク達を愛して逝きました……。ボク達に、幸せになってと、微笑んで逝きましたよ……」


「そっか……」


 ならば、爺ちゃんの死に際と、大きく変わる事は無いのだろう。


 本人が満足して逝けたのなら、後は残された者達が、どう思うかというだけである。


 アベルさんはきっと、母親への愛が大き過ぎて、その死を受け止められなかった……。


 その処理しきれなかった感情を、周囲へぶつける事しか、出来なかったのである……。


「家族みんなで、幸せになりたかった……。それだけなのに……。何がいけなかったんでしょう……?」


 ポルクのその呟きに、誰も何も答えない。その答えは、誰も持っていないからだ……。


 そして、ボクはそっと、アンリエッタの背中を撫でる……。


 ボク達はヴェインさん達の戻りを、ただ静かに待ち続ける事しか出来なかった……。

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