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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第十章 クラン対抗戦編

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クラン交流戦(二回戦)

 交流戦の参加クランは全八組。王都組が六組で、ヴォルクス組が二組である。


 そして、交流戦の一回戦は、全て午前中に終了した。全四試合だが、ボク達以外は普通に良い試合が行われた。


 勝利チームは『白の叡智』、『銀の翼竜』、『精霊の守り人』、『ミスティック・ソード』の四チームとなっている。いずれも、王都とヴォルクスでNo1とNo2のクラン。順当な結果と言えるだろう。


 続く第二回戦は、一戦目が『白の叡智』vs『ミスティック・ソード』。二戦目が『銀の翼竜』vs『精霊の守り人』である。


 お昼を食べ終え、ボク達の準備は万端。第二回戦も、同じメンバーで良いかと考えていた所、ギリーから思わぬ提案があった。


「試したい事がある……?」


「ああ、気になる事があってな……」


 どうも、二回戦はギリーが参戦したいらしい。王都のクランに対して、何か気になる所があるらしいのだ。


 まあ良いかと、ボクは気楽に考える。一応、釘だけは刺しておくけどね。


「良いけど、本気は出さないでね? 余り実力を知られたくないから」


「わかった……。程々に手を抜くとしよう……」


 ギリーは静かに頷きを返す。その為、ボクはメンバー編成を練り直し、二回戦に挑むのだった。




 そして、二戦目のメンバーは、ボク、ギリー、ドリー、グランの四名だ。前衛二人に後衛二人。そういう意味では至って普通の編成と言えるだろう。


 しかし、観客の視線は、ボク達のクランに釘付けである。何故なら、そのフォーメーションが異質な為である。


 先頭にはギリーが立っている。そして、少し下がって左右に、ドリーとグラン。更に下がってボクという配置だ。


 ――そう、後衛であるギリーが、最前線に立っているのだ。


 そして、対戦相手の『ミスティック・ソード』は、魔法剣士三名が前に立ち、その背後にスナイパーが控えている。


 彼等も困惑した様子で、ボク達の事を眺めていた。ただ、一回戦の事もあり、侮ったり油断したりはしてないみたいだけど。


「本当に、これで良いの?」


「ああ、これで問題無い……」


 ボクの質問に、ギリーは静かに頷く。そのやり取りに、ドリーとグランも肩を竦めていた。


 まあ、ギリーが良いというなら、きっと大丈夫なのだろう。こと戦闘に関しては、彼はこのクランでトップの実力者なのだから。


 ちなみに、彼の武器はコンポジット・ボウに変更してある。ケトル村で愛用していた、使いやすい小型の弓である。交流戦では殺傷能力が不要な為、取り回しの良さを考慮してのチョイスだ。


 更に、矢も特殊な物を用意してある。強力な麻痺毒を含む、アシスト用の矢であった。上手く急所に当たれば、運次第では一撃での無力化も可能だろう。


 ボク達は装備を点検して待つ。そして、少しすると審判が入場して来た。


 審判は双方のチームを見て、準備が整っている事を確認する。そして、手を振り上げて宣言した。


「それでは、二回戦、第一試合を開始する。……両者、始め!」


 その合図により、会場に緊張感が満ちる。初手は誰が動くのか、誰もが息を飲んで見守っていた。



 ――そんな中をギリーが進む。散歩の様な、気楽な歩みで。



 双方、ギリーの想定外な動きに固まる。今が試合中である事を、一瞬だが忘れてしまい……。


 そして、一番近くの魔法剣士が、ギリーの接近に反応する。彼は慌てて、ギリーに剣を振り下ろす。


「舐めるな……!」


 その攻撃は、ミスリル級に相応しい、鋭い一撃で会った。決して、その攻撃は遅い訳では無い……。


 しかし、道を譲るかの様に、ギリーが一歩横に逸れる。それだけで、相手の攻撃は、ギリーの横を過ぎ去ってしまった。


 そして、ギリーはすれ違い様に手を振るう。その次の瞬間には、魔法剣士の背中に、一本の矢が突き刺さっていた。


「は……?」


 その光景に、ボクはポカンと口を開く。会場には、魔法剣士の崩れる音のみ反響していた。


 ――誰もが無言。


 状況が理解出来ず、何を言えば良いかもわからなかった。


 しかし、そんな周囲を気にもせず、ギリーは歩み続けていた。もう一人の魔法剣士の元へ。


「……ッ! 貴様!」


 二人目の魔法剣士は、怒りの眼差しでギリーを見つめる。盾を構え、慎重にギリーの動きに注意を払う。


 そして、その攻撃は牽制だったのだろう。盾でしっかり身を固め、隙の小さな突きを放った。


 ……だが、次の瞬間に、魔法剣士は地面に転がっていた。


 しっかりとは見えなかった。だが、ギリーが肩を押したのは見えた。


 恐らくは回避と同時に、彼の背後に回ったのだろう……。


 そして、倒れた魔法剣士の背中には、当然の如く矢が刺さる。これで、二人目も無力化されてしまった。


「「「…………」」」


 その異常な状況に、誰もが戸惑いを感じていた。開始前に感じていた、試合への期待感など吹き飛ばされて。


 誰もがギリーに釘付けだった。ミスリル級クランの戦士を、赤子の様に捻るスナイパーに対して。


「く、来るな……! エア・カッター……!」


 三人目の魔法剣士は、風魔法でギリーを迎撃しようとする。三本の真空波が、ギリーに向かって行く。


 しかし、ギリーは直撃の瞬間に、ゆらりと体が揺れた。それだけで、彼は風魔法をすり抜けた。


 その動きに、魔法剣士は恐れ戦いた。腰が引けてしまい、僅かに隙を作ってしまった。


 その結果、彼の腹部にも、一本の矢が付き立つ事となる……。


「う、そ……だろ……?」


 魔法剣士は小さく呟く。そして、そのまま仰向けに倒れてしまう。


 ギリーはその様子を一瞥し、最後のスナイパーへ視線を向ける。


 しかし、そのスナイパーは弓矢を放り投げる。両手を上げて、降参の意思を示していた。


「しょ、勝者……『白の叡智』……」


 静寂に包まれた会場に、審判の小さな声が響く。


 ギリーは踵を返し、ボク達の元へと戻って来る。そして、その表情には、不機嫌さが滲んでいた。


「えっと……。お疲れ様……」


 ボクが声を掛けると、ギリーはその歩みを止める。そして、ボクの目を真っすぐ見つめた。


「やはり、弱すぎる……。王都のクランは、この程度なのか……?」


「いや、まあ……。ギリーが規格外すぎなんじゃない……?」


 ボクは苦笑で答えるが、ギリーは納得行かないみたいだ。渋い顔で、ただ首を振っていた。


 ボクは何も労せず、二回戦を勝利した。そして、沈黙の続く会場を、静かに去るのだった。

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