クラン交流戦(一回戦)
懇親会の翌日。クラン交流戦は、朝から闘技場にて開催となった。
闘技場の場所は、王城近くの貴族街に存在する。観客の半数は貴族やその家族。残りの半数は、貴族とコネと持つ富豪や、ギルド幹部等の重役に付く者達である。
そして、一回戦の第一試合は、『白の叡智』vs『栄光の騎士』。早速、ボク達が王都のクランとぶつかる事となった。
ちなみに、ルールは四対四のチームバトル。四人全員が戦闘不能となるか、残った全員がギブアップすると決着となる。
……ちなみに、対戦相手を殺すと失格。ただし、怪我をする分には自己責任らしい。
『白の叡智』には賢者二名がいるし、『銀の翼竜』にも聖騎士が三名いる。怪我については特に気にする必要もなさそうだ。
「……で、チーム編成はこれで良いかな?」
ボクはメンバーへと視線を向ける。
今日の編成は、前衛にギル、ドリー、グラン。それに後衛のボクである。参加メンバーは、全員が頷いて見せた。
ちなみに、選抜理由は一番安定するから。それと、手の内を晒しても、問題にならないメンバーだからだ。
ギルは『白の叡智』で主戦力の修行僧。しかし、一般的なスキル構成の為、特に知られて不味い要素が無い。
ドリーとグランは、元々王都で活躍していた冒険者だ。その能力は既に、王都では知れ渡っている。
……逆に、余り知られたく無いのは、アンナ、ハティ、ルージュ、ロレーヌだ。
アンナは賢者だけで無く、魔導士も習得している。ハティの爆裂波動拳は、一般的に知られていないスキル。ルージュの守護者も同様。ロレーヌは身に着けた装備がヤバい……。
なので、彼女達は『白の叡智』の隠し玉である。隠しておけるなら、最後まで温存しておきたい所なのである。
ちなみに、ギリーの参加も難しい所だ。狙撃手は一般的な上級職だが、ギリーの技量が規格外すぎる。手加減するなら良いが、本気のギリーは見せない方が良いだろうな……。
ああ、それとボクも、賢者の能力しか使わないよ? 錬金術師は既に知られているけど、死霊術士の能力は、絶対に見せれない奴だからね……。
「じゃあ、このメンバーで……」
「よう、ドリー、グラン……!」
ボクの言葉を遮り、対戦相手が呼び掛けて来た。相手はフルプレートに身を包んだ騎士である。
ドリーとグランに視線を向ける。すると、何故か嫌そうな表情を浮かべていた。
「うっへ……。モーブスじゃねぇか……」
「あいつ、ミスリルに昇格したんか……」
どうやら、知り合いみたいだね。最も、顔を合わせたい仲ではなさそうだけど。
しかし、相手はニヤニヤと笑みを浮かべ、二人に対して叫び続ける。
「都落ちしたと思ったら、運良く拾われたみてぇだな! だが、このオレと当たったのは最悪だったろうけどな!」
モーブスさんとやらの叫びに、二人は返事を返そうとしない。肩を竦めて無視を決め込む。
その様子を見て、ボクは念の為に確認する。
「……やっちゃって、良いんだよね?」
「全然、オッケー。てか、思いっきり頼むわ」
「オレ等的には、借りを返しておきてぇしな」
モーブスさんは、仲の良い友達では無いらしい。これなら、心置きなくやれそうだ。ボクは、ギル、ドリー、グランを集め。この後の作戦を伝える。
モーブスさんは、しばらく何かを叫んでいた。しかし、審判の掛け声で、自らの位置へと戻る。どうやら、そろそろ試合開始の様だな……。
「それでは、第一回戦を開始する! ……両者、初め!」
相手のメンバーは、騎士であるモーブスさんを先頭にしたフォーメーション。
モーブスさんの左右には、一歩下がって聖騎士が二人。更に、少し離れた背後に、魔導士が一人という構成である。
モーブスさん達は、魔導士を守る様に、じっとボク達の様子を伺っていた。
「では、参ります……!」
こちらは、ギルを先頭に突撃する。その左右からは、ドリーとグランが追い駆ける。
相手側は、それぞれに一人ずつを相手取ろうと構えていた。しかし、それより早く、ボクの魔法が発動する。
「ピットフォール!」
黒魔術師の初級魔法。狙った足元に穴を掘り、相手の移動を数十秒妨げる魔法である。
……その魔法により、モーブスさんは穴の中へと落下する。
「ハッ……!」
モーブスさんは、胸から下が穴の中である。そんな彼を、ギルは跳躍して飛び越える。
そして、慌てるのが聖騎士二人。魔導士を守ろうと、ギルの方へと向き直る。
「「シールド・バッシュ……!!」」
そんな彼等の横っ面に、ドリーとグランのバックラーが炸裂する。二人の聖騎士は吹き飛ばされ、そのまま倒れて気を失ってしまう。
「ひっ……!?」
大規模な範囲魔法を唱えていたのだろう。魔導士はキャストすら完成出来ず、ギルに魔法を阻止されてしまう。
「三連脚……!」
ギルのスキルが炸裂する。素早い三連続の蹴りで、相手の体が軽く浮く。
……しかし、ギルの攻撃は終わっていない。ここから始まるのだ。
「鳳凰脚……!」
浮き上がった魔導士の顎に、炎を纏った蹴りが入る。その蹴りは、魔導士の体を、更に上空へと蹴り上げた。
ギルはバックステップで距離を取る。そして、最後の決め技を放つ。
「流星脚……!!」
助走を付けてギルが跳ぶ。そして、空中で一回転すると、彼の踵が魔導士の腹部へ吸い込まれて行く。
魔導士はその衝撃で、地面に強く叩きつけられる。そして、一度だけ地面で跳ねると、そのまま泡を吹いて動かなくなった。
「ハッサン……!?」
穴の中から、モーブスさんが叫ぶ。仲間の安否を心配して。
しかし、人の事を心配している場合だろうか? ボクの魔法は完成したのだけれど……。
「ボール・ライトニング……!」
「ぐぅおわっ……!?」
バスケットボール程の、雷の塊が直撃する。モーブスさんは十秒程感電し、そのまま動かなくなってしまう。
『ボール・ライトニング』は、賢者が習得できる雷属性の魔法。『ライトニング・ボルト』よりキャスト・タイムが二倍必要だが、その威力は五倍と非常に高い。
騎士は物理特化の上級職。『賢者シリーズ』の魔力補正もある、この一撃には耐えられないだろう。
ボクは審判に視線を向ける。彼は慌ててモーブスさんへと駆け寄る。そして、死亡していない事を確認し、試合終了の合図を行う。
「第一試合、勝者は『白の叡智』!」
「「「オオオオォォォ……!!」」」
ボク達の電撃作戦により、第一試合はあっと言う間に終わりを迎えた。
観客の声援に手を振りながら、ボク達は闘技場から退場するのだった。




