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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第十章 クラン対抗戦編

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アレク、懇親会に参加する

 王都ブランへやって来たボク達は、王国騎士団の出迎えを受けた。街の観光すら許されず、王城へと強制連行されてしまう。


 そして、王都滞在中の部屋を割り振られ、そこでの待機を命じられる。数時間後に行われる予定の、懇親会へと参加する為に。


 なお、その懇親会とは、王族と有力貴族、それに交流戦への参加クランが集まる場だ。国を守る者同士、お互いにコネクションを持とうという趣旨らしい。


 ただし、コネクション作りが目的の為、クランからの参加は三名までと指定があった。下手に人数が増えて騒いでは、王族や有力貴族を不快にさせてしまう為だろう。


 ……アンナ達はマナーに不安がある。そして、ドリーやグランは参加出来ず、大喜びだった。結果としては、こちらとしても助かった所はある。


「まあ、こういうメンバーになるよね?」


「ええ、順当な所ではないでしょうか?」


 ボクとポルクは苦笑を浮かべる。お互いの参加メンバーを眺めながら。


 ボク達『白の叡智』からは、ボク、ギリー、ギルが参加している。ギリーはサブリーダーであり、護衛の意味でも心強い。ギルは貴族のマナーをフォローする為にも、ボクにとっては必須の存在である。


 『銀の翼竜』からは、ポルク、アンリエッタ、セスが参加している。ポルクはリーダーで、アンリエッタはサブリーダー。セスは二人の世話係としても必要な人選である。


 懇親会は立食パーティー形式。それぞれが自由に移動し、交流を持ちやすい様にする為である。


 そして、王都への警戒心が強いボク達は、揃って空いたテーブルに固まっている。今の所は、ボク達から他のクランへ、挨拶に伺うつもりは無い。


「それにしても、王様って思ったより普通だね……」


「まあ、良くも悪くも……。余り、大きな声では言えないですけど……」


 会場の奥に目を向けるボク達。そこには、王族専用のスペースが用意されている。


 中央に座るのは、国王であるペンドラゴン十三世。四十過ぎのブロンドヘアーを持つ男性。そして、「ザ・王様」という恰好で、来客からの挨拶に対応している。


 ちなみに、ボク達も入場して、真っ先に挨拶を行った。「名声は聞き及んでいる」「今後の活躍に期待している」という、簡単な言葉だけを貰った。


 ……正直、拍子抜けである。期待する訳では無いが、何か一波乱あるかと構えていたのにね。


「ちなみに、第一王子と、第一王女の印象は……?」


 ポルクは小さな声で囁く。それに対し、ボクも小さな声で返事をする。


「第一王子は、少し傲慢さが気になる……。けど、思ったよりは常識人な気もするね……」


 王様の右手に座る二十歳程の青年。エドワード王子も、父親と一緒に挨拶に答えている。その受け答えも、立場に応じた真っ当な内容であった。


「第一王女は、底が知れない感じだね……。正直、近付きたくは無い所だね……」


 王様の左手には、ボクと同年代の少女が座る。彼女はシャルロッテ王女。王様の隣で、優雅に微笑み続けている。


 ……そして、ケトル村を訪れ、ボクと面識のある少女だ。


 シャルロッテ王女の背後には、クリスと言う名の女騎士も控えている。なので、見間違いや、良く似た姉妹という事も無いだろう。


 シャルロッテ王女との再会には動揺した。しかし、お互いに声を掛け合う事は無かった。その為、今の所は何も問題は起きていない。


 しかし、女騎士クリスは、ボクを見て眉をしかめた。表には出していないが、あちらとしても思う所はあるのだろう……。


 ボクは腕を組んで考え込む。そんな態度に、ポルクは何かを察したのだろう。何も言わず、ただ手にしたグラスに口を付けていた。


 ――と、そこへ声を掛ける人物が現れる。


「やあ、アレク君。パーティーは楽しんでいるかな?」


「ザナック侯爵……。ご無沙汰しています」


 笑顔で歩み寄って来たのは、ザナック=ハミルトンさん。ノーウェイ領の領主にして、ユリウスさんの親友である。


 彼は続いて、ポルクとアンリエッタにも笑みを向ける。そして、明るい表情で挨拶を続ける。


「やあ、ポルク君にアリエッタちゃん。君達も元気そうだね」


「ハミルトン侯爵もお変わりない様で何よりです」


「おじ様、お久しぶりですわね。私達も元気でやっております」


 ……今更だけど、ボクってずっとザナック侯爵って呼んでた。


 ユリウスさんは親友だから良いのだろうけど、それに釣られて呼ぶのは失礼だったかな?


 まあ、今更変える方が不自然だし、怒られて無いから大丈夫なんだろう……。


「本当はゆっくり話したい所なんだけど、挨拶する相手が多くてね……。君達の滞在中に時間が合えば、またゆっくり話をしよう」


「どうぞ、ボク達の事はお構いなく。周りの目もアレですしね?」


 周囲を見えれば、嫉妬や羨望の眼差しを感じる。何故なら、ザナックさんはユリウスさんに続く、王国No2の有力貴族なのだ。


 そんなザナックさんから、ボク達へ挨拶に向かったのだ。周囲の貴族やクランリーダーからは、余り良い印象を持って貰えていなかった。


 そして、軽く挨拶を済ませ、ザナックさんは別のテーブルへ移動する。すると、そのテーブルには、多くの人が集まり始めた。


「いや、あれを見ると、改めて凄いなって思うね……」


「ええ、ハミルトン侯爵は人当たりも良く、実力もありますからね。コネクションを強めたい人は、とても多いと思いますよ」


 ボクは会場を改めて観察する。ザナックさんのテーブルに集まっていない参加者も、遠くから様子を伺っている。


 力関係か何かで、他の人の挨拶を待っているのだろう。一人の挨拶が終わると、また一人が入れ替わる様に移動している。


 ……そして、それとは別に、ボクは気付いた事がある。


 荒事が得意そうなガタイの良い参加者は、その多くがボク達に注目している。決して、好意的な眼差しとは言えないけれど……。


 彼等は間違いなく、各クランの代表者だろう。明日以降の交流戦では、ボク達のライバルとなる存在である。


 慣れ合うつもりは無いみたいだね。なら、お互いに距離を置く方が正解か……。


 そんな事を考えていると、再びボク等に近寄る存在が現れる。


 ショートヘアーの緑髪。同じく緑の瞳に、尖がった耳。その人物はエルフの女性だった。


「貴方が『白の叡智』のアレク君ね。リリー姉さんから、話は聞いているわよ?」


「え……? リリーさんから……?」


 思いもよらぬ懐かしい名だ。驚くボクに、彼女はニコリと微笑んだ。


「私はクラン『精霊の守り人』でリーダーを務める、エルフのリリアナよ。リリー姉さんとは、血の繋がった実の妹になるわね」


「リリーさんの妹……!?」


 ボクはその事実に驚愕する。そして、彼女の言葉に、別の意味で驚かされる。


 リリアナさんは、「血の繋がった」という言葉を使った。彼女は、ボクとアンナの関係を知っているという事だ。血の繋がらない兄妹の関係である事を……。


 それはつまり、それだけボク達の情報が浸透しているという事だ。この王都ブランでも、『白の叡智』に関する情報が、十分に出回っているという事だろう。


 何せ、アンナとの関係は、リリーさんが去った後の事なのだから……。


 ボクが内心で苦い思いを抱いていると、アンリエッタがスッと前に出る。


「『精霊の守り人』……。噂は予てより伺っていますわ。 この二十年、王都でトップを維持するクランですわね!」


「トップ……って、二十年……!?」


 その長い年月に驚かされる。リリアナさんは、口元を手で覆ってクスクス笑う。


「私も英雄の妹ですもの。リリー姉さんの顔には、泥を塗れませんからね」


「はあ……。『ホワイト・オウル』関係者って、やはり規格外だよね……」


 最近加わった、ヴェインさんも英雄の一人。今もヴォルクスで、精力的に活動している事だろう。


 そして、リリーさんの妹もまた、王都でトップの実力者らしい。


 ……というか、ポルクとアンリエッタの視線が痛い。


 きっと、規格外筆頭の、お前が言うなとでも思っているのだろう……。


「えっと……。リリアナさんは、ボク達に敵意を持たないんですか?」


 ボクはさり気無く話題を変える。リリアナさんは、苦笑を浮かべて答えてくれる。


 これは空気を読んだ、大人の対応という奴だな……。


「私達は元々トップクランだしね。貴方達を妬む必要が無いもの。……というよりは、私達のクラン自身が、普段から妬まれてる立場にあるから……」


「二十年もトップを張れば、そういう事もありますよね……」


 かつてのヴォルクスは、No1が『黄金の剣』、No2が『銀の翼竜』だった。両者ともにヴォルクス領主の関係者である。


 更に、クラン事務局のトップはヴォルクス領主。ユリウスさんの人気は、住民だけで無く、冒険者全体でも、とても高い物である。


 結果、ヴォルクスのクランは、嫉妬や妬みとは無縁。比較的穏やかな空気で、街の為に活動する事が出来る環境なのだ。


 しかし、それは優れた領主の元だからこそ。そうで無い環境なら、出世レースで厳しい環境が生まれる。妬みや嫉みも、多く生まれる事だろう。


 ボクがリリアナさんに同情心を抱いていると、彼女はニッコリと微笑む。


「アレク君と戦えるのを、楽しみしているからね。……恐らく、決勝戦でぶつかるだろうから」


「え……? それって、決まってるんですか……?」


 リリアナさんのセリフは、確信を持っていると感じられた。何か情報を持っているのだろうか?


 しかし、リリアナさんは、軽く頭を振って答える。


「恐らくよ……? 王族や貴族の中では、そういう予定になっていると思うの……」


「ああ、そういう事ですか……」


 八百長とまでは行かないが、そういうシナリオは考えてられそうだ。この企画を盛り上げる為、必要な要素として……。


 リリアナさんは、王都で二十年も活動している。そういう場面を、何度も目にして来たのだろう。


 ボクが内心でゲンナリしていると、リリアナさんはスッと手を差し出して来た。


「でも、そんな事は気にする必要は無いわ。私達は正々堂々と、お互いの実力をぶつけ合うだけだからね?」


「……そうですね。それでは、マッチングした時は、お互いに正々堂々と戦いましょう!」


 ボクはリリアナさんの手を握る。彼女の思いを受け取って。


 そして、彼女は嬉しそうに笑う。ボクの気持ちを理解してくれて。


 こうして、ボク達は王都ブラウンでの初日。懇親会を終えるのだった。


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