アレク、招待状を受け取る
この章から、週三(月・水・土)の0時で更新する予定です。
更新ペースが安定してくれれば良いのですが……。
今日もまた、ボクは領主の城に呼ばれていた。ここ最近は、週次で呼ばれている気がする……。
そして、今日の用事は真面目な物らしい。迎えの馬車には、アンリエッタとポルクの姿があった。ボクはギリーとギルを連れ、ユリウスさんの元へとやって来たのだった。
「クラン……対抗戦……?」
「うむ。王国主催の催し物に、『白の叡智』も招かれている」
応接間のソファーに座り、手渡された手紙を受け取る。それは、国王の署名入り招待状。『白の叡智』への、参加要請であった。
ちなみに、ボクの向かいにはユリウスさんが座り、その隣にはポルクが座っている。
ギリーとギルは、ボクの背後に控る。そして、ボクの隣には、何故かアンリエッタが座っている。
……いや、この配置はおかしいだろ。外堀を埋められてるみたいで、背中に嫌な汗が滲んで来る。
「そして、ポルク達『銀の翼竜』にも、同じく招待状が届いている。招待状が送られているのは、ミスリル級のクランのみらしいな」
「はあ……。なるほど……」
ボクは手元の招待状に目を落とす。回りくどい書き方をしており、とても長い文章である……。
そして、要約するとペンドラゴン王国内のクランで、交流戦を行おうという呼び掛け。お互いに実力を確かめ合い、冒険者同士で切磋琢磨して欲しいという趣旨が書かれている。
ボクは招待状を、背後のギルに手渡す。そして、ボクはユリウスさんへ、皮肉を込めて訊ねる。
「こんな事をしてる場合ですかね? 王都の復興は、そこまで進んでるんですか?」
ボクが揶揄したのは、レッド・ドラゴン襲来の傷跡の事だ。王国は騎士団が大打撃を受け、クランも勢力が半減している。
王都の街並みだって、多くの建物が燃え崩れたと聞いている。王都の住民にだって、それなりの死傷者は出ているはずなのだ。
交流戦なんて行う余力があるなら、それを王都の復興支援の資金に回すべきと思うんだけどね……。
しかし、ユリウスさんは、ボクの反応を予想していたらしい。皮肉気な笑みで、大きく頷いて見せる。
「アレク君の意見はもっともだ。しかし、王族や貴族は、そう考えないのだよ。彼等にとって最も大切なのは、周囲に対する見栄なのだからね」
「ああ、そういう事ですか……」
つまり、王国中の国民が、ボロボロの王都に不安を持っている。それに対して、王族や貴族は、これだけの余裕があると見せたいのだ。
クラン対抗戦という余興を行い、これだけの力があると誇示したいのだろう。何ともくだらない事である……。
そして、今度は隣のアンリエッタが、クスクスと笑う。ボクに対して、優しく諭す。
「あら? でもこれは、悪くない考えなのですよ? 交流戦で王都の活気も出ますし、国民の多くが安心を得る事が出来るのですから」
「それに、王都とヴォルクス領の関係が、良好であるアピールにもなるでしょう。今がどうかは別として、ボク達が参加する事で、今後の交流が活性化する可能性は高いですね」
「それに何より、貴族も王都の民も、いい加減に待ちわびているのだ。賢者ゲイルの後継者を、いつになればその目で見れるのかとね」
どうやら、彼等は参加に前向きな考えみたいだね。三人とも、貴族の考えを持っているから……。
そして、どうもこの流れは良くない。ボクの退路を断とうという流れに思える……。
「……ちなみに、断る事は出来ますか?」
ボクはユリウスさんへ訊ねる。そんなボクに、ユリウスさんは困った表情を浮かべている。明らかに作っているとわかる、わざとらしい表情を……。
「ふむ……。これまで、王都側からアレク君を庇い続けて来たが、これを断ると難しくなるな……。恐らくは国王達も強硬手段に出ざるを得ない……。国王からの勅令により、王都への移転を余儀なくされる事だろう……」
「まあ、それは大変ですわね……」
「流石に勅令は断れませんね……」
何という三文芝居……。三人共に、口元がにやけているのだが……?
ボクは諦めて息を吐く。そして、肩を竦めて意思を示す。
「わかりましたよ……。今回は大人しく、王都へ行く事にします……」
ボクの返事に、三人はクスクスと笑う。想定通りの結果となり、実に満足そうな表情をしている。
そんな彼等の態度に、ボクは苦笑を浮かべる。内心では良い機会かとも思い。
……それというのも、王都から逃げ続けるのも、そろそろ限界だと感じていたからだ。
先程ユリウスさんが、これ以上は庇えないと言った。そして、それが冗談では無い事を、ボクは理解していた。ヴァーム砦の一件もあるからだ。
そして、今回ならアンリエッタやポルクも同行する事になる。二人のフォローがあれば、幾分かは状況がマシになると思えた。
――後はボクが、王女を前に平静でいられるかだが……。
ボクは背後に視線を向ける。すると、やはりギリーが心配そうに、ボクの事を見つめていた。
アンナには伝えていない。だけど、ギリーは知っているのだ。ケトル村襲撃の引き金が、王女の来訪によるものだと……。
なので、ボクは笑みを浮かべる。ギリーを安心させる為、力強く頷いて見せた。
……きっと大丈夫。今のボクはあの時と違う。守るべき物が沢山増えたのだから。
ギリーやアンナ。そして、大切な仲間達の為である。王女を前にしても耐えてみせる。
こうしてボクは、王族達の待つ、王都へと向かう事を決心するのだった……。




