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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第九章 ヴァーム砦防衛戦編

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閑話:ユリウスの憂鬱

 私がこのヴォルクス領の領主となり、どれ程の時間が過ぎただろうか?


 伝説のクラン『ホワイト・オウル』が去って少ししてからだ。恐らくは、二十年以上になるだろう。


 私は自らの執務室で、秘書からの報告を聞く。彼の名はフューズと言い、彼との付き合いも二十年近い事になるな……。


 私はフューズの報告に満足する。領地経営の報告は順調――いや、アレク君のお陰で上向きだからだ。


 ただ、ヴァーム砦の欠員は、頭が痛い問題ではある。しかし、こちらは予算も組み、部隊の再編成も進めている。後は状況が落ち着くのを待つのみである……。


「……私からの報告は、以上となります」


「ご苦労。いつも、助かっているよ……」


 本当に、彼が居なければ、私一人ではどうにもならない。


 それ程までに、ここ最近のヴォルクスでは、良くも悪くも変化に富んでいるからな……。


 そして、軽く頭を下げるフューズに、私はいつもの如く質問する。


「あ~、それで、アベルの方はどうだ……?」


 アベルとは、私の長男の名だ。いずれは、私の後を継ぎ、このヴォルクスの領主になる予定の。


 しかし、アベルは余り才能が有る方では無い。今もフューズに再教育を任せている所なのだ。


 そして、彼の反応はいつも通り。私の望む物では無かった……。


「アベル坊ちゃんは、相変わらずですよ……。身が入っておりませんね……」


「そうか……」


 このやり取りは、毎日の日課となっている。フューズの返しも淡々とした物だ。


 しかし、親としては期待してしまう。子育てとは、本当に難しい物である……。


 私は小さく息を吐く。すると、今日はフューズの言葉が続く。


「ユリウス様……。いい加減、諦めては如何ですか……?」


「うん……?」


 フューズの言葉に、私は思わず眉を寄せる。それは、彼の言いたい事が理解出来たが故に。


 そして、私がもっとも望んでいない決断についてだ……。


「アベル坊ちゃんは、領地経営――いえ、人の上に立つ器ではありません。多くの民が望む通り、ポルク坊ちゃんを、後釜にすべきです」


「それは……」


 その忠告は、周囲の多くから上がる物だ。友人のザナックからも、耳にタコが出来る程に言われている。


 アベルは兎に角視野が狭い。それに対し、ポルクは視野が広く、周囲への気配りも出来る。


 ヴォルクスの多くの民が、ポルクを望む事は理解している。しかし、それを決断するという事は、アベルを切り捨てるという事になる。


 私は一人の親として、その決断だけは取りたく無かった……。


「ユリウス様が、男手一つで育てられ、愛情を持って接している……。それは、周りから見れば一目瞭然。しかし、当のアベル坊ちゃんには、伝わっていないご様子です……」


「まあ、子供というものは、そういう物なのだろう……」


 アンリエッタは素直で、ポルクは賢い。それ故に、私への感謝の気持ちを示してくれる。ただ、それは二人が優秀過ぎる為だ。


 アベルは才能は無いが、普通の子なのだ。優秀な妹や弟と比べては、可哀そうという物である。


 そんな、私の考えが伝わったのだろう。フューズは大げさにため息を吐く。


「跡目争いを避けたい気持ちもわかります……。しかし、このままの方が、余程大きな火種を残してしまいます。それは、ユリウス様もご理解していますよね?」


「勿論、わかっている……」


 だからこそ、アンリエッタにはセスを付け、ポルクには『銀の翼竜』を与えた。


 アレク君とも良好な関係を築き、更にはヴェイン殿へもサポートを依頼した。


 ここまで優秀な人材で周りを固めれば、平凡なアベルでも上手くやれる事だろう。


 余程の事が無い限り、周囲の人材が、周辺の外敵を排除してくれるはずである。


 ……それと、欲を言えば、アンリエッタにはアレク君と結婚して欲しい所だな。


 そうすれば、アレク君は確実にこのヴォルクスを守ってくれる。この領地も長年に渡り、安全が約束されるはずだからな。


 私が未来予想を脳内で行っていると、フューズは再びため息を吐く。


「ユリウス様の考えはわかっております……。ただ、アベル坊ちゃんについては、もう少し良く考えてみて下さい……」


「わかった、わかった……。他に打てる手が無いか、改めて考えておくよ……」


 しつこいフューズに、私は手を振って示す。それを見た彼は、小さな息を吐いて退室する。


 そして、私は彼の背を見送り、顔には苦笑を浮かべる。彼の気持ちに感謝しつつ。


「本当に、わかっているのだ……。最悪の未来が、訪れる可能性も……」


 証拠が無いから何とも言えない。しかし、私達のすぐ背後まで、帝国の気配が迫っている。そんな予感も感じているのだから……。


「ヴェイン殿……。頼みますよ……」


 未来ある子供達に、少しでも良い環境を整えて上げたい。その鍵は、ヴェイン殿が握っている。


 彼なら上手くやってくれるだろうが、私の胸内には一抹の不安が残り続けた……。

次回の新章は、9/30(月)の0時に更新予定です!

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― 新着の感想 ―
[一言] 身内とていざという時厳しい采配振るえなきゃ上に立つ資格はないと思うがな。
2022/05/14 19:43 退会済み
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