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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第九章 ヴァーム砦防衛戦編

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サプライズ・パーティー

 今日はユリウスさんに呼ばれ、ヴォルクス城へと向かっている。移動は領主が用意した馬車だ。


 そして、ボクのお供はギリーとギル。呼ばれた面子を考えても、ヴァーム砦の件と考えるべきだろう。


 ただ、何故か事前に呼び出し内容が伝えられなかった。漏れては不味い、極秘の話なのかもしれないな……。


「アレク様、間も無く到着です」


「ええ、わかりました」


 ギルの声に頷き、ボクは窓から外を覗く。そこは既に貴族街を抜け、領主城の敷地内であった。


 そして、チラリとギリーにも視線を送る。彼はジッと目を瞑っている。周囲の気配でも探っているのだろう。


 程なくして、馬車が止まる。そして、扉を開き、出迎えたのは執事のセスさん。


 彼がここにいるという事は、アンリエッタとポルクも、今日は城にいるという事かな?


 『銀の翼竜』として活動していない時は、セスさんも城の使用人として働いていると聞いている為だ。


「旦那様がお待ちです。こちらへどうぞ」


 ボク達はセスさんの案内に従い、ヴォルクス城の中を進んで行く。何度も来た事のある、見慣れた廊下である。


 ただ、何故か今日は途中でルートが変わる、最上階にあるユリウスさんの執務室へ、向かっていないみたいだった。


「どこに向かっているのですか?」


「もう間もなく、到着致します」


 微妙に答えをはぐらかされる。先導する彼の背中を見る限り、どうやら答えてはくれないみたいだ。


 諦めたボクは、そのまま案内されるままに進む。そして、到着したのは、大きな扉を構えた、どこかのホールであった。


「では、中へどうぞ……」


「えっ……?」


 扉を開かれるが、中は真っ暗だった。薄っすらとテーブルやイスの気配は感じるが、分厚いカーテンの為か、外の明かりがまったく入って来ない。


 戸惑って案内役のセスに視線を向ける。しかし、ニコリと微笑むだけで、説明は一切行ってくれない。どうやら、何も聞かずに入れと言う事らしい……。


「まあ、いいか……」


 ここがヴォルクス城である以上、いきなり攻撃される事もないだろう。


 仮にあったとしても、それはそれで、ギリーが何とかしてくれるだろうし……。


 ボクはゆっくりと、ホールの中へと足を進める。



 ――すると、唐突に室内が光で溢れる。



「……っ!?」


 目が眩み、瞬時に状況が掴めなかった。しかし、ぼんやりとした視界の中で、多くの人が動くのを感じる。


 そして、更にボクへの追撃は続く。



 ――パン、パパン!



 何かが炸裂する、乾いた音が鳴り響く。それも、一か所では無く、ボクを囲む様に多数だ。


 その後、何かがボクの頭上に舞い落ちる。ボクはそれを手に取り、回復した視力で確かめる。


「紙……吹雪……?」


 足元を見ると、無数の紙吹雪と、多くの紙テープが散乱している。


 ボクは戸惑ったまま、視線を前へと向ける。そこには、ボクの良く知る顔が並んでいた。


「「「……お誕生日、おめでとう!!!」」」


「は……?」


 ボクの正面には、ユリウスさん、アンリエッタ、ポルクが立っている。


 更にその後ろには、ワトソンさん、リュートさん、マリアさんの姿まである。


 右手側には、アンナ、ハティ、ルージュ、ロレーヌ。それと、ドリーとグランの姿が。


 左手側には、ハンスさん、リア、シア、カイル。それに、メリッサとメアリーの姿も。


 この場の全員が、ボクに向かって拍手をしていた。手には、クラッカーと思われる残骸を持ち……。


「これは、一体……」


 ボクが茫然と佇んでいると、背後からギルとセスさんがやって来る。そして、ボクを左右に挟んで、エスコートを始める。


「アレク様、どうぞ前へ」


「え……?」


 言われるままに、前へと進む。背後を振り向くと、ギリーも微笑みながら、後を付いて来ていた。


 どうやら、ボクだけが知らされていなかったらしい。このドッキリを……。


 ボクは苦笑を浮かべ、案内された先のユリウスさんへ問う。


「どうしてまた、こんな企画を……?」


「はははっ! 決まっているだろう? その方が、面白いからじゃないか!」


 気兼ねない笑いに、左右の姉弟も釣られて笑う。


 そして、ボクは大げさに溜め息を吐くと、会場の全員が笑い声を漏らす。


「アレクも今日で十六歳ですわね? お誕生日、おめでとうございます」


「アレクさん、おめでとう御座います。今日は存分に楽しんで下さい!」


 アンリエッタとポルクが、続いてボクに声を掛ける。


 ボクは肩を竦めて、二人に視線を送る。


「ありがとう。ただ、こういうドッキリは、今回限りにしてね?」


 ボクの返しに、二人はただ笑うだけ。約束してくれないのが、不安の残る所だな……。


 そして、左右からも人が集まって来る。アンナ達や、ハンスさん達である。


「去年は、忙しくて出来なかったから……」


「うん、今年こそって、皆で企画したんだ」


 アンナとハンスさんの台詞で、昨年の今頃を思い出す。


 ……そういえば、悪魔公対策に奔走していて、それどころじゃ無かったな。


 そうか。あれからもう、一年が経ったのか。時間の流れって凄く早いね……。


「ねえねえ、ボスは何飲む? お酒? それとも、ジュースにしとく?」


「アレク殿には、ワインをお勧めします。ここの品揃えは素晴らしいですよ!」


「先生……。時間があれば、是非私達とも……」


「だから、もっとハッキリ言えって! 別に先生は怒ったりしねぇからさ?」


「やあやあ、久しぶりだね! マリアの事で、お礼を言わせてくれないかな?」


「リュート……。それはもう少し落ち着いてからにしましょう?」


 何というか、一斉に皆が話しかけて来た。流石にこの人数は、同時に相手出来ないよ……。


 困惑するボクに、ユリウスさんが大きく笑う。そして、大きく手を打ち鳴らした。


「はっはっはっ! 皆の気持ちはわかるが、それでは話が出来ないだろう! 全員、それぞれ割り振った席に移動しろ! アレク君は、順番に回ってくれるからな!」


 その声に従い、皆が渋々と移動を開始する。名残惜しそうに視線を向けるが、最後には全員が席に着いて、席のメンバーと会話を始めた。


 ……ちなみに余談だけど、ボクの本当の誕生日は不明だ。ボクは爺ちゃんに拾われた身だからね。


 なので、この誕生日とは、爺ちゃんがボクを拾った日である。正しい誕生日では無いのだ。


 ただ、その事を伝えたボクに、爺ちゃんは笑ってこう言った……。



 ――祝いたいという気持ちが大切なのじゃよ。そんな事は、些細な事じゃ……とね。



 ボクは爺ちゃんを思い出し、懐かしい気持ちに浸ってしまう。そんなボクの右肩に、不意にユリウスさんの手が置かれる。そして、彼は小さく囁いた。


「これが、君の守りたかった者達なのだろう……?」


「え……?」


 ボクは驚き、ユリウスさんの顔を見る。彼のその目は、悪戯っぽくボクを見つめていた。


 ……どうやら、ユリウスさんは知っているみたいだ。少し前までの、ボクの状態について。


 或いは、メリッサから報告が上がったのかもしれない。ボクが精神的に参っている等と……。


 なので、ボクは二ッと笑い、ユリウスさんへ真っ直ぐに告げる。


「はい。彼等こそが、ボクの戦う理由です」


「そうか……。なら、しっかり守らねばな」


 その言葉に、ボクは力強く頷きを返す。そして、ユリウスさんは、嬉しそうに微笑みを返した。


 ボクは改めて、ボクの仲間達に視線を向ける。ボクが大切に思い、ボクの事を思ってくれる人達を。


 そして、改めて初心を思い出す。ボクが何を思って、クランを立ち上げたのか……。



 ――それは、身内を守る為だ。



 初めは、ギリーとアンナから始まった。たった二人の家族を、ボクは何が何でも守ろうと誓った。


 その次に、メリッサとメアリーに出会った。ハティ、ルージュ、ロレーヌを仲間に加えた。


 彼等とも同じ時間を過ごす中で、家族の様な絆を感じる様になって行った。


 そして、ハンスさんが加わった。彼がシア、リア、カイルを連れて来た。


 薬師ギルドとの件で、皆が一緒に頑張ってくれた。彼等もボクにとっては身内同然だ。


 そして、アンリエッタ、ポルクに出会い、リュートさんとマリアさんにも出会った。


 皆で一緒に悪魔公と戦った。共に過ごす時間は短くとも、その濃密な時間が、彼等との仲を深めてくれた。


 そして、ユリウスさん、ワトソンさん。それに、ギルとセス。


 ボクの近く、或いは遠くで、いつでも見守ってくれている。ボクの事を裏でフォローしてくれる。


 ――彼等を守る為なら、ボクは何だってやってみせる。


 自然とボクは、心の中で新たな誓いを立てていた……。


「手の届く範囲で……。やれる事を、やってみます……」


「ああ、そうだな……。アレク君はそれで良いのだろう」


 ユリウスさんの優しい後押しで、ボクの決心は固まる。


 ボクの力は万能なんかじゃない。だからこそ、出来る事だけやれば良い。


 手の届く範囲で、本当に大切な物だけは必ず守る。それだけは、かならず守って見せる。


 それが、ボクの初心であり、これからも変わらない生き方なのだ……。

第九章は以上で終了となります。

次回は一話だけ、閑話を挟みます!

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