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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第九章 ヴァーム砦防衛戦編

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死者との取引

 敵兵がジリジリと迫る。ボク達の様子を伺い、飛びかかるタイミングを計っていた。


「くっ……。よもや、この様な事態になろうとは……」


 ユリウスさんが苦し気に呟く。腰の剣を抜刀し、油断無く構えながら。


 そして、ギリーや、ユリウスさんの護衛達も、それぞれの武器を構える。誰もが最後まで、抗う意思を示していた。


 ――ただし、ボクという例外を除いて。


「アレは……何だ……?」


「む……? どうした……?」


 ボクの異変に気付いたギリーが、ボクへと質問を投げかける。


 しかし、ボクは返事を返さない。明らかな異常に、それから目を離せないでいた。


「まさか……ユニーク・スキルの……効果なのか……?」


 視線の先は、この部屋から地上へと続く階段。敵兵の囲みの背後に向いていた。


 そして、どうやらその異常は、ボク以外に気付けていない。その光景に誰も反応を示してしていないのだから。


 ――大量の死霊が、続々と階段を下りているというのに。


『おめでとうございます。交流を望む死霊の数が五十名を超えました。『死者との交信』はレベルが上がり、死者の訴えが聞こえる様になりました』


「な……!?」


 唐突に鳴り響く天の声。この声が聞こえたのは、死霊術士ネクロマンサーへの転職以来だ。


 更に天の声は続く。説明はまだ、終わっていないみたいだった。


『おめでとうございます。交流を望む死霊の数が百名を超えました。『死者との交信』はレベルが上がり、死者との会話が可能になりました』


「人数が……増えている……?」


 ボクは茫然と部屋を見渡す。そこには入りきれない程の、多くの死霊が佇んでいた。


 しかも、それで終わりでは無い。階段の先から、更に多くの気配が感じられた。


 ボクはその状況に困惑する。ミーアの時にあれ程望んだレベルアップ。それが、これ程簡単に実現してしまった為だ。


 アンナが止めてくれたから良かった。しかし、あのまま続けていても、このスキルはレベルアップしなかったという事だ。


 死者との交流という、条件を満たせずにいたのだから……。


『おめでとうございます。交流を望む死霊の数が三百名を超えました。『死者との交信』はレベルが上がり、『死者との取引』へ進化しました』


「スキルの……進化……?」


 確かに、以前に聞いた天の声も、進化の可能性は示唆していた。それが、百名の死霊と交流する事だったらしい。


 それと同時に、ボクは手を握り締める。この三百名とは、地上で戦死した兵士達の魂だから。


 今もなお、地上では敵兵による虐殺が続いているという事だからだ……。


『『死者との取引』は、死者の魂へアンデッドの体を提供する能力となります。スキル使用者の代償は、召喚時の精神力のみ。具現化したアンデッドは、以降独立して活動を開始する事となります』


「術者の支配下に無いという事か……」


 それは、危険な事では無いのだろうか……?


 アンデッドとなった死者が、願いに従って行動を起こす。人を害する事も、十分にあり得る。


 望みを聞いて、それを聞き入れるか判断出来るなら、まだ良いのだが……。


『なお、望みを叶えたアンデッドは、冥府へと送られます。また、召喚されて二十四時間が経過した場合も、同様に冥府へと送られる事になります。』


「再召喚不可と、一日という時間制限か……」


 確かに無制限で召喚出来るなら、大量のアンデッド軍団を作る事が可能となる。


 ……そのアンデッド化した死霊が、望みを叶えられなければだが。


『おめでとうございます。交流を望む死霊の数が五百名を超えました。『死者との取引』はレベルが上がり、アンデッド化した死者を支配下に置ける様になりました』


「五百……」


 この砦には、千二百名の兵士が在籍していた。その半数近くが死んだ事を意味する……。


 ボクはその事実に歯噛みする。今の状況を、何とかして止めなくてはならない……。


 ――と、そこで更に異常が起こる。


 周囲の死者が、それぞれに口を開き始めたのだ。ボクに対して、望みを口にし始めたのだ。


『敵が憎い……。このままでは終われない……』


『戦う力が欲しい……。敵に復讐がしたい……』


『家族を守らねば……。敵を殺さねば……』


 負の感情を伴う訴え。それが、大合唱で鳴り響く。


 あまりの音量に耳を塞ぐが、意味は無かった。何故なら、それらは思念であり、音では無いからだ。


『オレ達に……! 戦う力を……!』


『敵を殺す力を……! 復讐の機会を……!』


『家族を守る為……! 戦う力を……!』


 五百を超える、死霊による大合唱。頭が割れそうになり、ボクはその場に蹲る。


 それに気づき、ギルがボクの肩に手を乗せる。ボクに対して、何かを叫んでいた。


 しかし、その声は死者の声にかき消され、まったく聞く事が出来なかった……。


『『『オレ達に……! 戦う力を……!』』』


『『『敵を殺す力を……! 復讐の機会を……!』』』


『『『家族を守る為……! 戦う力を……!』』』


「あ、あああ……! 黙れ……黙れぇ……!!!」


 視界の端に敵兵が映る。しかし、彼等も困惑して、ボクの状況を見守っていた。


 そんな彼等に対し、敵兵は殺気を向けている。しかし、霊体の彼等では、その意思を届ける事すら出来なかった……。


「力が欲しいなら、くれてやる……! 敵と戦う力を……!」


 ボクは鳴り止まぬ合唱の中、彼等に対して死霊術を発動させる。最も良く利用する死霊術を……。


召喚サモン……スケルトン騎士ナイト……!」


 死霊術は効果を発揮する。しかし、いつもとは違う、何かが体から溢れ出した。


 ――その結果、ヴァーム砦はアンデッドの群れで埋め尽くされる事となる。

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