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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第九章 ヴァーム砦防衛戦編

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アレク、悪魔術士と再会する

 ボク達はヴァーム砦の、あらゆる場所を探した。それは、領主だけが知るという、隠し通路等も含めて。しかし、どこにも『黒死病ペスト』の元凶は見つからなかった。


 そして、調べていない箇所として、最後に『転移の間』が残った。そこは転移のスクロールの転移先。登録された、この砦の兵士達だけが使える部屋である。


 ボク達は嫌な予感を胸に抱き、地下の『転移の間』へと踏み込んだ。


「……よう。思ったより遅かったな」


「ゼロ……。やはり、君だったか……」


 部屋の中央には、大きな魔法陣が描かれていた。そして、その手前に、赤黒いローブに身を包んだ、悪魔術死デビル・サマナーの少女が佇んでいる。


 そして、その両隣には以前に会った、呪怨騎士カースド・ナイトの男と奈落童子スポーンの女。三人は無表情に、ボク達の事を見つめていた。


 更にボクは、ゼロの背後に視線を向ける。彼女のすぐ後ろには、一体の悪魔が立っていた。主人より頭一つ高く、爛れた肌をむき出しにした悪魔。手には豪華な装飾の付いた杖を持ち、肩にはボロボロのマントを羽織っている。


 ……間違いなく、その悪魔は『疫病王プラグ・ロード』であった。


「何故、君達がここに……」


「あ……? 転移したからに決まってんだろ……。詳しく話す気はねぇけどな……」


 ゼロは肩を竦め、気怠そうに答える。そして、ボクはその態度に眉を顰める。


 以前のゼロは、明らかに敵意を剥き出しにしていた。しかし、今回のこのやる気の無さは何だ?


 どう見ても、嫌々ここにいるみたいな態度なのだが……。


「……目的は何だ? この砦を、内部から攻略する気なのか?」


「まあ、な……。この砦の攻略も、目的の一つではあるな……」


 目的の一つではある……? それは、別の目的も含んでいるという事か……?


 ボクは内心で疑問を持つが、ゼロは特に気にした様子も見せない。そして、怠そうに手を上げ、軽く振って見せた。


「じゃあ、後は任せた……。白いのと領主を確保したら、後は全員殺して良いってよ……」


「うん……?」


 ゼロが誰かに指示を出す。ボクは首を捻って、部屋の様子を観察する。


 この転移の間には、魔法陣が存在するだけ。そして、今のこの部屋には、ゼロ達とボク達しか存在しない。


 ――と、唐突にギリーが、ボクの肩に手を置く。


「すまん……。気配に気づけなかった……。オレ達は、既に囲まれている……」


「え……!?」


 ギリーの言葉に反応するかの様に、周囲の空間がゆらりと揺らめく。すると、黒いローブに身を包んだ、十名の術者が姿を現した。彼等は手に短剣を持ち、その目はボクとユリウスさんに固定されていた。


「まさか……追跡者チェイサーか……?」


「ご名答……。流石に知ってたみたいだな……」


 追跡者チェイサーとは、盗賊Lv30、黒魔術師Lv30を前提とした上級職。対象の探索や追跡を得意とし、身を隠す能力にも秀でている。


 更には、魔術の力により、身を隠す能力はパーティーにも及ぶ。つまり、仲間全体を、安全に移動させる事が可能なジョブという事である……。


「これは……不味いな……」


 ボクは背中に嫌な汗が流れる。追跡者の背後から、悪魔術死デビル・サマナー呪怨騎士カースド・ナイト奈落童子スポーンらしき者達が姿を見せた為だ。


 ――合計40名の上級職。流石にこの人数は、相手をする事が難しい……。


「まさか、彼等はケルベロス特殊部隊か……?」


「へえ、オレ達の部隊名まで知ってんだ……?」


 ユリウスさんの言葉に、ゼロは僅かに口角を上げる。ただ、それ以上は何も言わない。興味も特に無さそうだった。


 そして、手を振り下ろし、彼等に対して指示を出す。


「じゃあ、さっさと片付けてくれ……。恐らく、地上もそろそろ、片が付く頃だろうしな……」


「地上も……? それは、どういう意味だ……!」


 ゼロの言葉にボクは叫ぶ。どうしようもなく、嫌な胸騒ぎを感じた為だ。


 すると、ゼロは初めて声を上げて笑う。心の底から、楽しそうに……。


「くっくっく……。はははっ……! だから言っただろ……? この砦の攻略も、目的の一つだってな……!」


「この砦の攻略だと……?」


 それは、先程のレッサー・デーモンの事を言っているのだろうか?


 確かに、『黒死病ペスト』による弱体化で、兵士達は苦しい状況だった。しかし、それはボク達の支援も有って、既に持ち直したはずだ。今では、残りの悪魔を討伐し終えているはずなのだが……。


「地上の悪魔で全てと思ったか? あんなのは、ただの囮だよ! お前達を誘き寄せる為のな!」


「ボク達を、誘き寄せる囮……」


 ゼロはニヤニヤと笑みを浮かべる。ボクの焦りが、嬉しくて仕方が無いらしい。


 ボクは焦燥を感じながらも、ゼロの言葉に耳を傾ける。


「本隊が行動を起こす合図は、お前達が地下へと降りる事だ! お前達がここに来た時点で、地上はグレーター・デーモンで溢れかえる! そして、多くの帝国兵が攻め込む手筈になってんだよ!」


「何だと……!? 帝国兵の到着は、まだ先のはずだ……!」


 ユリウスさんが焦った声を上げる。ボクも到着まで十日掛かると聞いていた為、その言葉には内心で同意していた。


 しかし、ゼロは軽く鼻で笑う。馬鹿にした様子で、ユリウスさんに向かって告げる。


「そんなもんは、ガセに決まってんだろ。既に砦は囲まれてたんだよ。お前達がやって来る前からな……」


「そんな、馬鹿な……」


 ユリウスさんは茫然と呟く。偽情報を掴まされていた事と、既に敵の策中にハマっていた事を知った為だ。


 ボクは脳内で打開策を考えるが、一向に良い案は浮かばない。会話による時間の引き延ばしも、もうそろそろ限界だろう……。


 そして、ゼロはつまらなそうに、ボクを一瞥する。そのまま、ボク達に背を向けて吐き捨てる。


「じゃあな……。もう、会う事もねぇだろうよ……」


 ゼロが魔法陣へと足を進める。そして、それに二人の従者も付き従う。


 彼等は魔法陣に足を乗せると、立ち上がる光に包まれ、その姿を消してしまう。恐らくは、帝国の領内へと転移したのだろう……。


 そして、それを合図に、周囲の敵兵が動き出す。ボクとユリウスさんを捕らえ、残りの者達は殺す為に……。

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