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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第八章 上級職転職編

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閑話:ガウルの研究室

 知識を求め、私は日夜研究に明け暮れている。この世界の謎を解き明かすには、どれだけの時間があっても、足りるという事が無いからな。


 そして、私は寿命と言う制約を外す為、アンデッド化という手段を取った。正直、転生の秘儀は賭けの要素も多かった。成功確率は五分五分といった所であった……。


 しかし、私は賭けに勝った。アンデッド化に成功し、精神の安定化にも成功した。これに失敗すれば、ただの理性無き魔物と化してしまう。そういった最悪の事態も、無事に乗り切る事が出来た。


 ……やはり、高位アンデッドへの転生が、精神安定化の成否に関わるみたいだ。


 まあ、過去の話はこの程度で良いだろう。今は新たな実験を行っている最中。実験の結果を確認する所なのだから……。


『さて、会話は可能そうかね?』


 水槽に浮かぶソレに、私は問い掛ける。大きさは人間の赤ん坊程度。その姿は、手足を捥がれた昆虫といった所だろうか?


『……貴様が私を作り出したのか?』


 私の質問に、ソレは返事を返す。どうやら、私の作り出した魔法生物は、想定通りに意思を宿したみたいだ。


 私はその結果に満足し、ソレに対して対話を試みる。


『その通り。君を作ったのは私だ。……それで、君には記憶が残っているのかね?』


『ああ、記憶なら存在している……。私の本体が持つ、大体の記憶がな……』


 私の研究は、無事に成功したらしい。理論は完璧だったと思うが、実行するのは初めてのこと。想定外の事態が発生せず、私は内心で安堵の息を吐く。


 そして、更に実験の成否を確認する為、私は彼に対して質問を投げ掛ける。


『それでは、君の本体の名前を、私に教えてくれるかね?』


『悪魔公ダークレム……。それが、私の本体の名前だ……』


 ……素晴らしい。実験は完璧に成功したという事だ……!


 そして、彼に記憶が残っているなら、研究は次の段階へと進めるという事になる……。


『それで、君の最後の記憶はどこで途切れている……?』


『人間達との戦いだな……。彼等に追い詰められ、彼等のリーダーに、憎悪を抱いた所までだ……』


 ふむ……? やはり、本体から切り離された所までという事か……。まあ、その先の記憶は、この先の研究には不要。なので、特に問題は無いだろうがね。


 私は水槽に浮かぶ、悪魔公のコピーをジッと見つめる。彼もまた、昆虫の様な瞳で、私の事を見つめ返していた。


 ……そもそもの話となるが、この実験は悪魔公の爪を手にした事から始まる。私はアレク達の戦いを、この地から遠隔で傍観していた。そして、使い魔を利用して、切り離された爪を回収していたのだ。


 それと言うのも、悪魔公復活の可能性は、私も以前から気付いていたからだ。ただ、復活の結果を観察する為、放置するつもりでいただけでね。


 そして、手に入れた爪を核とし、新たな生命を作ればどうなるか? 上手く行けば、神話の世界を知る、悪魔公ダークレムの知識が、手に入るのでは? ……そう、考えたのだ。


 その考えを実現する為、悪魔公の爪を素材に「生命の種」を作成し、「生命創造クリエイト・ホムンクルス」と悪魔召喚の術を組み合わせ、新たな生命の創造を行った。


 その魔法生物は、「蘇生ラスト霊薬エリクサー」で満たした水槽内でしか生命を維持出来ない。しかし、意思を持ち、素体の記憶を持った状態で、誕生させる事に成功したという訳だ。


 ……ああ、ここから、どれだけの知識が引き出せるか、考えるだけで興奮が止まらないな。


『いくつか質問したい事がある……。まずは、君の本体は、どの様にして生まれたのかね?』


『闇と死の神である、スレイン様によって生み出された……。大きな力を持つ悪魔や魔神は、その大半がスレイン様の生み出した存在だ……』


 伝承には残っていたが、やはりスレイン神が悪魔や魔神を生み出しているのか……。


 伝承が正しかったと証明され、私は大きな満足感を得る。


『では、スレイン神は、どうして悪魔を生み出した? 悪魔の存在意義は何なのかね?』


『人という種と戦う為だ……。人に倒され、人を成長させる為に、我々は存在している……』


 ……何だと? 人に倒される為に、悪魔や魔神が存在している?


 どう考えても、人では太刀打ち出来ない存在もいるはずだ。それにも関わらず、倒される為に存在すると言うのか?


『では、ジョブやスキルや魔法という存在も、神々が用意し、人を成長させる為にあるのかね?』


『恐らくはそうだろう……。しかし、スレイン様や、スルラン神が用意した訳では無い……。どの様に発生したかは、私にもわからない……』


 最高神の二柱が関与していないだと……? つまり、神々とは違う、別の何者かが存在している……?


 そうなると、トゥルー・バイブルも、神々が齎した訳では無いという事か……?


『神々とは別に、同等の何かが存在するのかね? 君はその存在について、どれだけの知識がある?』


『…………』


 しかし、私の質問に、彼は返事を返さない。何かの禁則事項かと思ったが、恐らくはそうでは無い……。


『魔力が尽きたか……』


 彼の活動を維持しているのは、「蘇生ラスト霊薬エリクサー」が持つ魔力である。その魔力量はとても多く、人を一人生き返らせられる程なのだ。


 ……しかし、高位の悪魔を維持するには、それでも数分しか持たないらしい。それ程までに、高位の悪魔の持つ魔力は、桁が違うと言う事なのだろう。


『仕方が無い……。次は、より大きな水槽を用意するかな……?』


 倍の大きさにすれば、持続時間は倍になると思われる。しかし、それでは燃費が悪いな……。


 「蘇生ラスト霊薬エリクサー」の作成にも、それなりの時間が必要となる。そして、その素材も大量に確保出来ている訳では無い。今から収取するのも、時間が掛かってしまう……。


 ならば、別の魔力維持方法を検討する方が建設的だろうか? 大サイズの魔石を複数利用した、魔力発生装置の様な物を……。


『そういえば、アレクが『水神の魔石』を確保していたな……』


 アレなら、大魔石より大きな魔力を宿している。より効率的に、魔力の供給が可能かもしれない……。


 次にアレクが訪問する時までに、交渉材料を用意しておかねばな……。


 私はその様な事を考えながら、一人で思考に没頭するのであった。

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