表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第八章 上級職転職編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

145/354

ヴォルクスの双璧

第八章は以上で終了となります。

次回は一話だけ、閑話を挟みます!

 その日のヴォルクスは、早朝から騒がしかった。


 普段の住民なら、家で朝食を食べている時間だ。それにも拘らず、今日は多くの人々が、外で何かを話し合っている。


 ボク達、『白の叡智』のメンバーは、外に出て顔を見合わせる。一体何が起こっているというのだろうか?


 すると、人だかりの中から、一人の人物が飛び出して来た。よく見ると、その人物はメリッサであった。


「ア、アレク様……! 急いで、中央広場までお越し下さい……!」


「中央広場……?」


 ボク達は首を傾げながらも、メリッサの指示に従う。彼女の案内に続き、クランの仲間全員で中央広場まで移動した。


 そして、中央広場に到着し、騒ぎの理由が何となく理解出来た。


 そこには、巨大なレッド・ドラゴンが転がされていたのだ。まるで、その存在を住民全てに誇示するかの様に……。


「ふふ、ようやく来ましたわね?」


「アンリエッタ……?」


 声を掛けられ、ボクは初めて気付く。レッド・ドラゴンの前に並ぶ、『銀の翼竜』の一同に。


 ……いや、よく見れば、メンバーはそれだけでは無い。『黄金の剣』のメンバーも混じっている。何故か、リュートさんと、マリアさんは不在だけれど。


「これは、『銀の翼竜』と『黄金の剣』が、合同で倒したって事かな?」


 ゴールド級クランである『銀の翼竜』単独では、レッド・ドラゴン討伐は難しいだろう。


 しかし、ミスリル級クラン『黄金の剣』と合同なら話は別だ。小規模なレイドバトルと思えば、レッド・ドラゴンは程良い相手と考えられる。


 しかし、ボクの言葉に対し、否定の声が返って来る。


「アレクさん、それは違います……。これは、ボク達『銀の翼竜』が単独で撃破したんです……」


 その声の持ち主はポルクだ。アンリエッタの隣に並び、ボクに鋭い視線を向けている。


 様子のおかしいポルクに、ボクは首を傾げる。そして、彼に対して質問を投げかける。


「流石に、『銀の翼竜』単独は厳しく無い? それに、後ろの彼等は?」


 ボクは、ポルクの背後を指差す。そこには、狙撃手スナイパー魔導士ウィザード暗殺者アサシン拳聖チャンピオンが立っている。彼等はいずれも、『黄金の剣』との交流会で、顔を合わせた事がある。


 指摘されたポルクは、一瞬だけ顔を歪める。しかし、すぐに首を振って返答する。


「今の彼等は、『銀の翼竜』のメンバーです。……『黄金の剣』は『銀の翼竜』が吸収しました」


「『黄金の剣』を、吸収した……?」


 少し遅れ、言葉の意味を理解し始める。そして、ボクはその意味に、ポカンと口を開いてしまう。


 格下の『銀の翼竜』が、ヴォルクスのトップクランを吸収した? そんな事が、可能なのだろうか?


 いや、『黄金の剣』も『銀の翼竜』も、メンバーは全て領主の私兵だ。領主が認めれば、実行する事自体は可能なのだろう。


 しかし、そんな事が許されるのか? 領民や他の貴族から、強権を発動したと、領主が突き上げを喰らう気がするんだけど……?


「えっと、それは本当の事なのかな……?」


 ボクは信じられず、アンリエッタに訊ねる。すると、彼女はニコリと微笑んで見せた。


「ええ、本当の事ですわ。これは、お父様もお認めになった事です。……それと、今日、この時をもって、『銀の翼竜』のリーダーは、ポルクに引き継がれましたわ」


「は……?」


 リーダーがポルクに変更? 領主が認めた事? 状況がまったく読めないんだけど……。


 ボクが混乱していると、ポルクは一歩前へ出る。そして、強張った顔で、ボクへと告げる。


「前に言いましたよね……? 差を開かれる位なら、ボクはライバルにだって頭を下げるって……」


「うん、ゴールド級向けの、講習会を開いた時の事だね……」


 そして、その理由はアンリエッタから聞いた。ボクと競う為に、強くなろうと必死なのだと。


 しかし、どうして今になり、その事を口にする? 状況と何か関係するのか……?


 ポルクはギュッと手を握る。そして、苦しそうな表情をボクへと向ける。


「ボクは、父上に頭を下げました……。活動停止する位なら、『黄金の剣』を譲って欲しいと……。そして、『銀の翼竜』を、ボクの物にしたいと……」


「えっと……。どうして、そんなお願いを……?」


 何故か、ポルクの表情には余裕が無かった。何かに追われる様な、必死さが滲んでいた。


 ボクは怪訝に思いながら、ポルクに質問を投げかける。


「決まってるじゃないですか……。貴方に負けない為……。貴方に置いて行かれない為です……! その為だったら、ボクはプライドだって捨ててみせます……!」


「えっと……」


 ポルクはどうして、ここまで興奮しているのだろう? 父親に頭を下げる事が、そんなに嫌だったのだろうか?


 しかし、その考えは否定される。ボク達を見守る、アンリエッタによって。


「アレクは、一から自分で始め、全てその手で育てて来ましたわね? 全て譲り受けた、ポルクと違って……」


「ああ、そういう事か……」


 アンリエッタの瞳は、ボクの背後に控える、『白の叡智』の一同に向けられていた。


 アンナ、ハティ、ルージュ、ロレーヌは、全てボクが育てたメンバー。


 ギリー、ドリー、グランは同じ村で育ち、ボクと共にいる事を決めたメンバー。


 ハンスさん、ギル、メリッサは、ボクに好意を持ち、支えてくれるメンバー。


 ポルクは、『白の叡智』のメンバーと、『銀の翼竜』のメンバーを比べてしまったのだろう。


 全てをボク自身が集めたメンバーと、ポルクの父親から譲り受けたメンバーとして……。


「ポルクは、勘違いをしてるみたいだね」


「ボクが、勘違いですって……?」


 ボクの言葉に、ポルクは眉を寄せる。不快感を感じながらも、ボクの言葉を待っていた。


 なので、ボクは肩を竦め、彼に説明する。


「ポルクが領主様の力を借りた様に、ボクは爺ちゃんの名声に助けられている」


「それは……そうでしょうが……」


 爺ちゃんの名声は、このヴォルクスで大きな物だ。それは、ポルクも認める所だろう。


 しかし、それでも納得しないポルクに、ボクは更に続ける。


「それに、ボクは手段に拘った事も無い。一番効率的と思ったから、今の形を取っただけだ。……そもそも、この街に来た時のボクらには、余裕なんて無かったしね」


「う……それは……」


 ケトル村の襲撃は、ポルクも知る所である。そして、彼の兄に責任の一端が有る事も。


 ポルクは気不味そうに視線を逸らす。だけど、ボクは話しを止めない。


「ボク達は、形振り構わず戦って来た。持てる最善を考え、今の状況を作って来たんだ」


「…………」


 ポルクは俯き、ジッとボクの言葉を聞いている。今の彼に、反論の言葉は無さそうだ。


 そして、チラリと隣に視線を向ける。アンリエッタは、ボクの言葉を、嬉しそうに聞いていた。


「なのに、どうしてポルクは手段に拘るの? ボクと競いたいんでしょ? ボクのライバルって、その程度の覚悟で言ってたの?」


「ち、違います……! ボクの……ボクの覚悟は……!」


 ポルクは顔を上げ、必死に訴えようとする。


 しかし、ボクはそれを手で制し、ポルクに強い言葉を投げつける。


「なら、俯く理由が無いよね? ポルクはライバルとして、最善を尽くそうと思っただけでしょ?」


「……っ!?」


 ポルクはグッとはを噛み締める。そして、驚いた表情で、ボクを見つめていた。


 そして、ボクは苦笑を浮かべる。余裕が無く、周りが見えていない彼に対して。


「く、くくっ……」


 笑いを噛み堪えるボクを、ポルクは不思議そうに見ていた。まあ、今の彼には、その理由がわからないだろう。


 そして、ボクが笑った理由は、ポルクの背後にある。彼に信頼の眼差しを向ける、彼の仲間達が並んでいたからだ。


 彼等の顔を見ればわかる。彼等は領主の命令で、ただポルクに従っている訳では無いのだと。


 彼等もまた、ポルクと共にある事を望んでいる。彼の力になりたいと、そう願っているのだ。


「……ボクも、負けるつもりは無いよ。お互いに、ベストを尽くそう」


 ボクは二ッと笑みを向け、ポルクへ右手を差し出す。


 その手を見つめ、ポルクは茫然となる。そして、少しの間を開けて、ハッとボクの顔を見る。


「アレクさん……。貴方という人は……」


 ポルクは、無理やり笑みを浮かべる。泣いている様にも見える、不器用な笑みを。


 そして、ボクの右手を両手で掴む。熱く、力強い手で。


「はい……! ボクも、負けません……! 全力で、挑ませて頂きますから……!」


 ボクは、その手を強く握り返す。ポルクにボクの意思が伝わる様にと。


 そして、この光景は、ヴォルクス住民の多くが目撃した。彼等は当然の如く、この出来事を街中へと広める。


 ――その結果、『白の叡智』と『銀の翼竜』は、ヴォルクスの双璧と呼ばれる事となって行く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ