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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第八章 上級職転職編

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アレク、追い込みを掛ける

 今日はクランメンバー全員で、ガーヴァ火山へ訪れている。目的はアンナ、ハティ、ルージュ、ロレーヌの追い込みである。このタイミングで、全員のレベルを上げ切ってしまい、全員を上級職へと転職させる予定なのだ。


 なお、カーヴァ火山の場所は、ペンドラゴン王国の北西に位置する。鉱物の発掘で有名エリアであり、ヴォルクスからの距離は、馬車なら十日以上は掛かる。しかし、ボク達ロードランナー便を利用した為、四日で到着する事が出来たけどね。


 ちなみに、ロードランナーは爬虫類型の魔物である。馬よりも一回り大きな肉食のトカゲで、見た目は丸っきり恐竜そのもの。鱗に覆われ、非常にタフな魔物で、Lv30程度のソロでは討伐困難。しかも、群れを作る魔物である為、状況次第では上級職でも苦戦する相手だ。


 しかし、この世界では魔物調教師ビーストテイマーがテイムする、便利な乗り物としての認識が強い。力が強く、走る速度も早い。そして、並みの魔物なら襲って来ても返り討ちである。唯一のネックは、熟練の魔物調教師ビーストテイマーしか扱えない為、利用料が高額である位だろうか……。


「さあ、着いたよ。ここがカーヴァ火山の天然洞窟だね」


「ふむ、ここが今日からの狩場か……」


 洞窟内に入り、ギリーが周囲の警戒を行う。ボクはマジック・ランタンを取り出し、洞窟内を明かりで照らす。洞窟内はゴツゴツした岩だらけで、草の一本も生えていない。苔すら存在せず、生命という物を感じさせないダンジョンだった。


 ……というより、もう少し先へ進むと、溶岩が流れるエリアすら存在する。ここは火属性の特殊な魔物しか生息せず、それなりに難易度の高いダンジョンなのだ。本来なら、基本職の狩場にはなり得ない場所なのである。


 しかし、ボク達には例のユニーク装備の存在がある。あの性能を存分に発揮すれば、ハティ達でも十分に活躍する事が可能なのである。


「……ん?」


 そこで、ふと異変に気付く。何故かロレーヌが汗だくとなっていた。他のメンバーは平気そうなのに、彼女だけが異常に汗をかいているのだ。


「あれ? ロレーヌって暑さに弱かったっけ?」


「いや、皆がおかしいんだよ……。この暑さで……何で平気なのさ……?」


「この暑さで……?」


 ボクは仲間達の顔色を伺う。ギリーにアンナ、ハティにルージュ、ドリーにグラン。それぞれが不思議そうに顔を見つめあっていた。


 しかし、ギルだけは何かを察したらしい。そして、ボクのマントを指さして説明を行う。


「アレク様、恐らくは水神様の加護の差かと。この中で、火属性耐性の防具を持たないのは、ロレーヌ様と私だけです。私は特殊なスーツで暑さ対策も万全ですが、ロレーヌ様はそうでは無いでしょうから……」


 ……特殊なスーツって何だ? 気になるけど、それは後回しで良いか。


 そして、ギルの指摘に皆の装備を考えてみる。ボクは水神のマントにブローチ。ギリーは水神のマント。アンナは水神のブローチ。ハティは水神の胸当て。ルージュは水神の盾。ドリーとグランは水神のバックラーを装備している。


 対してロレーヌは水神のダガーのみ。火属性耐性の防具は、特に何も用意していない。


「……って事は、水神シリーズの防具には、暑さの緩和も含まれている?」


「ええ、恐らくはそうかと思われます。通常のマジック・アイテムでは、その様な効果は聞きませんので」


 ギルの解説に一応の納得は出来た。ゲームでは関係無かったけど、このダンジョン内は高温だったらしい。そして、水神シリーズに隠された効果もあったらしい。まあ、偶然ではあるけど、水神祭に参加しといて良かったって所かな?


 ……と、ボクが一人で頷いていると、ロレーヌがボクを見つめていた。泣きそうな目で手を差し出し、フラフラと近寄って来る。


「ボス……。マジ、ヤバイんですけど……。洒落になってないんですけど……」


「えっと、どうするかな……って、ちょっと、何してるの!? しがみつかないで!」


「あ、ヒンヤリする……。あたし、もうボスから離れない……」


 どうやら、ボクの周囲には、水神の加護が張り巡らされているらしい。ボクに触れたロレーヌはそれを察知し、がっしりとボクにしがみつく。


 そして、それを見たアンナが反応する。鬼の形相で、間に割って入ろうとする。


「ロレーヌ……! は・な・れ・な・さ・い……!」


「やだ……! あたしは絶対に、ボスから離れないから……!」


「いたた……!? 無理やり引っ張らないで! わかった! ボクのブローチを貸すから! だから二人とも止めてよ!?」


 抱きつくロレーヌと、引き剥がそうとするアンナ。必死な二人の攻防に巻き込まれるボク。周囲はそんな光景を、生暖かい視線で見守っていた。


 そして、ボクが水神のブローチを渡す事で、この一悶着に決着が着いた。水神のブローチを付けたロレーヌは、無事に水神の加護を受ける事が出来たらしい。先ほどまでの汗は、すっかり止まっていた。


 その代わりに、アンナからのお仕置きで、頭を杖で強打されてしまう。今は頭を抱えて、地面を転げまわっている。


「はあ……。何だか開始前から疲れたよ……」


「ふむ……。それで、この先はどうする……?」


 状況が落ち着いたのを察知し、ギリーが行動方針を質問する。ロレーヌを除く全員が、ボクの言葉を待っていた。


「そうだね。ギリー、ドリー、グランは別行動で。三人は装備の性能確認と合わせて、火の魔石回収を宜しく」


「ああ、了解した……」


「おお! ユニーク装備の試し切りって事か!?」


「ひゅう! それって、楽しくなりそうじゃね?」


 それぞれの得物に視線を落とすと、三人はニヤリと笑う。戦闘狂みたいで不気味だけど、彼等なら大量の魔石を回収してくれるはず。それで交通費分位は回収可能だと思う。


 そして、ボクは残ったメンバーに視線を送る。


「アンナ達はいつも通りに狩りを進めて。危なそうな時は、ボクとギルでサポートするから」


「ええ、私も全力でサポートさせて頂きます」


 賢者のボクと、モンクのギル。この二人だけでも、それなりには戦う事が出来る。とはいえ、ボク達の力が必要な状況は、そう多く無いだろう。何せアンナ達も、今では十分に経験を積んだ冒険者達なのだから。


「わかった……。私達の実力を、お兄ちゃんに見せてあげる……」


「リーダー……。今のオレは、以前とは違うからな!」


「ええ、私達の実力を証明する、良い機会かもしれませんね」


「うう……。まだ、頭が痛いよう……」


 残念な子が一人いたが、一応ヒールで癒しておいた。この先の索敵に影響しても困るからね……。


 そして、ボクは全員に笑って見せる。


「心配はしていないよ。じゃあ、いつも通りに宜しくね?」


「「「「おう……!!」」」」


 四人の声がピタリと重なる。皆の気合は十分な様子だ。


 ボクはアンナ達が進むのを待ち、その後ろをギルと並んで追いかけるのだった。




 久々にアンナ達の狩りを見たけど、中々に安定しているね。お互いの連携もバッチリで、危うげ無く対応出来ている。


「ラヴァー・ゴーレムか! アレは私に任せたまえ!」


 体長三メートルはある溶岩のゴーレム。その攻撃を、ルージュは軽々と受け流す。明らかな体格差があるにも関わらず、それを感じさせない見事な盾捌きである。


「そっちに、フレイム・バットが二体行ったよ! ハティ、宜しく!」


 ロレーヌはロレーヌで、魔物の索敵、誘導を担当している。そして、魔物が一定数となると、ルージュやハティに任せた魔物を背面から攻撃する。アタッカーとしての役割も、今ではしっかり兼務している。


「任せろ! 雑魚はこっちで処理する!」


 ハティの成長も中々の物だ。金剛の構えで防御を固め、カウンタースキルで反撃を行う。特殊な型ではあるが、短時間のみの耐久型タンクの役割を担える様になっているのだ。勿論、指弾による援護も可能で、状況に合わせて器用に立ち回っていた。


「鬱陶しい……。まずは数を減らす……」


 メンバーの中で、頭一つ突出しているのはアンナだ。元々、黒魔術師としての攻撃能力、白魔術師としての補助能力を有していた。そして、それが賢者となった事で、一回り大きな効力を発揮する様になったのだ。


 賢者の攻撃能力は魔導士ウィザードに劣り、支援・回復能力は司祭プリーストに劣る。しかし、上級職である賢者が弱い訳が無い。ましてや、アンナはユニーク級である『賢者シリーズ』を装備しているのだ。


 使う魔法は黒魔術師、白魔術師のスキルであっても、威力は一回り大きく、更に回転速度は倍近くまで上がっている。今のアンナは、状況に応じた魔法を打ち続ける、魔法砲台と化しているのだった。


「まずは、雑魚から……」


 ダブル・マジックによる補助を利用し、アイシクル・ランスを二倍の効果で放つ。炎を纏った蝙蝠型の魔物は、あっという間に一体沈む。


 そして、一対一となったハティは、残った一体の相手をする。最後の止めははロレーヌが刺していたが、大きなダメージも無く、余裕の勝利である。


「堅いけど、それだけ……」


 アンナはハティとロレーヌには目もくれず、ルージュと戦うゴーレムに対象を定める。相手は溶岩の体を持つゴーレムである。アンナは弱点の水属性である『アイシクル・ランス』を叩き込み続けた。


「……っふう。流石はアンナ殿ですね。素晴らしい威力です!」


「お疲れ様……。いま、回復するから……」


 ゴーレムが足元に崩れ落ちると、ルージュがアンナに笑いかけた。そんな彼に、アンナは照れた様子でヒールを掛けて行く。


「はあ、凄いもんだね……」


「ええ、皆さまは強くなりました」


 ボクの呟きに、隣を歩くギルが答える。爽やかなその笑みには、どこか誇らしげな雰囲気が滲み出ていた。彼も仲間の成長を、心から喜んでいるのだろう。


 そもそも、本来ならラヴァー・ゴーレムは、上級職で無いと厳しい格上である。それを余裕で耐えるルージュは流石と言うべきだろう。盾による守りだけを鍛えた彼は、少々のレベル差など気にもしない。


 そして、それ以上に凄いのはアンナだ。装備のお陰もあるが、ダブル・マジック込みで魔法を打ち続け、その上で精神力の管理はしっかり行えている。あれだけの攻撃魔法を使い続けても、回復に回す精神力は、しっかりと確保しているのだ。


 しかし、アンナの凄さの本質はそこでは無い。ボクはその学習能力こそ、彼女の驚嘆すべき能力だと考えている。彼女は賢者に成りたてなのだ。それにも関わらず、賢者の特性と立ち回りを、恐ろしい速さで理解し始めている。


 確かに、ボクの立ち回りを見ているのもある。だがしかし、普通はそれを簡単に再現する事など出来ないはずだ。相当な時間を掛けて、彼女はイメージ・トレーニングを積んだ事だろう。その努力と信念こそが、彼女をここまで急成長させているのだ。


「アンナちゃん、魔石の回収終わったよ」


「ありがとう……。バッグに入れておくね……」


 ハティは回収した火の魔石をアンナに手渡す。そして、集めたアイテムは、アンナのマジック・バッグへと収められる。マジック・バッグを持つのは、ボクとアンナの二人だけ。自然とドロップの回収と管理は、ボクかアンナが担当する事になる。


 ちなみに、ロレーヌは魔物の探索へと戻って行った。もう少しすれば、数体の魔物を引き連れて戻って来る事だろう。


「じゃあ、ゆっくりロレーヌを追いかけよう……。二人とも、大丈夫……?」


「ああ、問題無いよ」


「ええ、先へ進みましょう」


 そして、三人はロレーヌの後を追い、ゆっくりと進み出す。そこには油断も無ければ、気負いも感じられない。魔物が徘徊するダンジョン内にも関わらず、三人は慣れた様子で歩いているのだ。


 ボクはギルと並び、そんなアンナ達に着いて行く。彼女たちは既に、守られるだけの存在では無い。その堂々とした背中を、ボクは頼もしく感じながら見つ続けた。

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[気になる点] 溶岩ならラヴァーじゃなくてラーヴァのような…
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