ココロの心、そして終わりへ
ティアナは下種な女だ。金のために恋人を殺し、自分の欲を満たすためにナイト様を誘惑して腰を振る、最悪な女だ‼ ナイト様はあの女の誘惑に負け、妻子がいるにも関わらずあの女を抱いた‼ ナイト様の過去はどうでもいい。どんな過去があろうとも、ナイト様はナイト様。過去なんて関係ない。私の怒りと憎しみの炎は燃え上がっている。何が何でも、ティアナを始末せねば!
あの女がナイト様に抱かれた後、自室にあるシャワールームに向かった。殺すなら今がチャンスだ! 私はそう思い、あの女がシャワーを浴びている時に部屋の鍵を閉めるように操作し、自動でゆっくりとシャワーの温度が上がるようにプログラムを変えた。ゆっくりと死の恐怖を味わいながら、死ね!
シャワーを浴びているあの女は、勝手に温度が上がることを知って驚いた表情をしていた。異常を察しして、すぐに外に出ようとしているが、私が鍵を閉めている。これであの女を始末することに成功した。しばらくしたら、あの女はミイラになっているだろう。
この時が来るのを、ずっとずっと私は待ち望んでいた。今、ヤヴァーイ号の中は私とナイト様だけ。ナイト様はコントロールルームで復興作業をしている。クソみたいな女とセックスを終えてすぐに作業に入れるなんて、すごい体力だ。私は目を開け、ナイト様の名を呼んだ。私の声を聞いたナイト様は驚き、すぐに反応した。私のことを心配してくれているようだ。やっぱり、ナイト様はお優しい。さて、ここで種明かししよう。私がロココを演じていたこと、そして……私がナイト様を愛していたこと。何もかも、ナイト様に告白しよう。
私の告白を聞いたナイト様は驚いた表情をしていた。私が今回の騒動の黒幕だと、分からなかったみたいだ。だがそんなことはどうでもいい。今すぐ、ナイト様を抱きしめたい。そう思った私は手足の代わりとして、ヤヴァーイ号の内部にあるケーブル類を操り、ナイト様の体に巻き付けた。ああ……ようやくナイト様を抱きしめることができる。操るケーブルから、ナイト様の体の感触や体の熱を感じることができる! ナイト様は苦しそうに何か言っているが、きっと私への愛の言葉なのだろう。
ようやく私の望みが叶った。これでずっと、ナイト様と繋がっていられる。邪魔するものは誰一人いない。毎日やらなければならない地球への定期連絡は適当に作ったAI動画を流しておけばいい。ばれないように百パターン以上は作ったから、地球にいる人たちもヤーヴァイ号内部のことを察することはないだろう。任務期間が終わったとしても、ヤーヴァイ号に異常が発生したとかなんとか言って、一生宇宙でさまよう形になれば、あいつらも手出しをすることはできない。私の計画は万全だ。計算外のことも発生したが、ナイト様と添い遂げることができたから、文句はない。
ああナイト様……ずっと一緒にいられることを……私は嬉しく思います……。
ココロの暴走から一ヶ月が経過した。
額を貫かれたジギーハの死体は、腐食しながらもそれなりには形を保っていた。
強い電流を全身で浴び、黒焦げになったルコールの死体は塵となり、倉庫室の空間を漂っていた。
トレトイルを潰したコンテナは清浄されることがなく、血の跡がコンテナの外壁にへばりついてしまい、血肉も固まっていた。
バラバラになったベルンゼの死体は、ごみのように放置され、形もほとんど崩れていた。
今は暗くなったシャワールームにティアナのミイラがあったが、元のグラマラスな体系は保っておらず、完全に干からびていた。
そして、コントロールルームではココロが死体となったナイトを、ケーブルを操って抱きしめていた。
そんな中、ココロは定期連絡の時間が近いと察し、本部との通信を繋げた。
「どうも地球の皆様、AIのココロです。本日、ヤヴァーイ号に異常はなく、皆さん元気に働いております」
と、笑顔でこう説明する動画を流した。だが、ココロは本部からの動画を見て、あることに気付き、ばれないように画面を操作し、連絡できるように設定した。
「お久しぶりです、ドスコイ様」
「ああ、本当に久しぶりだな、ココロ」
本部には、ナイトの同期であるドスコイ・ウワテナゲがいた。ドスコイは周囲を見回し、ココロにこう言った。
「悪いが、ウエート船長に話があるんだ。呼んでほしい」
そう言われたココロは、焦ることなくこう言葉を返した。
「すみません。今、ウエート船長は皆様と大事なミーティングをしており、席を外すことができません」
「そうか……」
ココロの返事を聞いたドスコイは、残念そうな表情をした。ココロは異常事態が起きてもいいように、ごまかすことができる返事をいくつか用意していた。ココロはすぐに通信を切ろうとしたのだが、ドスコイが口を開いた。
「ココロ、お前はいつから嘘をつくようになった⁉」
「え?」
ドスコイの気迫のある声を聞き、そして自分の答えがすぐに嘘だとばれてしまい、ココロは思わず驚いた声を上げてしまった。
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