ココロの異変
隕石を回収したウエートは、ヤヴァーイ号に帰還した。ティアナは急いでウエートに近付き、宇宙作業服を脱がす手伝いをした。
「ふぅ……やっぱりこの中は息苦しいや」
「それでも、時間をかけて改良されたのよ。ずーっと過去の宇宙服よりも快適なはず」
「ははは。昔の人はこれよりもっと酷い環境で宇宙での作業をしてたのか」
「過去の苦労があるから、いろいろと変わってきたのよ」
ウエートとティアナが話している横で、ナイトは端末を使ってココロに話しかけていた。
「ココロ、ウエート船長のサポートお疲れ」
「私も一安心です。初めて作業のサポートを行いましたので。船長が無事でよかったです」
「ココロが一仕事したおかげだよ」
「褒めてくれるのですね? ありがとうございます」
端末の画面に映るココロは、とても嬉しそうな表情をした。ティアナ端末をのぞき込み、感心そうに声を上げた。
「すごいわねぇ。こうやって表情を変えることができるなんて」
「顔の細かい筋肉をプログラムで再現して、それをモデリングしたんです。かなり細かい作業だったので、その分データの容量も使いましたが」
ナイトが話をしていると、ジギーハが急いでナイトたちの元へ駆けつけた。
「隕石を回収したと聞いたぞ! どこだ、どこにある?」
「これです」
宇宙服を脱ぎ終えたウエートが、ケースの中に入ってある隕石の一部分をジギーハに見せた。それを見たジギーハは目を輝かせ、顔をケースにくっつけながら中の隕石を観察した。
「この六十五年、ありとあらゆる隕石を見てきたが、これは珍しい」
「何が珍しいんですか?」
ナイトが近付きながらこう聞くと、ジギーハは手元のライトで隕石を照らした。すると、光を照らされた部分が紫色に光り出した。
「光った」
「光るタイプの隕石は珍しくないが、紫色に光る隕石は見たことがない」
「もしかしたら、中に凶暴なエイリアンがいるとか……ないですよね?」
ナイトの言葉を聞いたティアナは隕石から後ろに下がったが、言葉に反応したココロがこう言った。
「宇宙探索が進んで千年以上経過していますが、今のところ地球に生息する動物以外の生命体は発見されておりません。この隕石を観察していますが、生命反応はありません」
「よかったぁ……」
「だから言っただろ。宇宙に行く前に、エイリアンとか出てくるホラー映画など見るんじゃないって」
安堵の息を吐くティアナに向かって、笑いながらウエートがこう言った。生命反応がないことを知ったナイトは、回収した隕石が一体何なのか気になり、ずっと見ていた。
隕石を回収して数時間が経過した。コントロールルームで作業をしていたルコールとベルンゼが、肩と首を回しながらリビングキッチンルームに入った。
「うーっす。こっちの方は終わりましたー」
「ノルマは達成しました。今のところ、異常がある衛星はありませんでした」
「そうか。お疲れさん。トレトイルさんが焼き菓子を作ったから、食べて休んでくれ」
ウエートは焼き菓子が入っているお盆を椅子に座るルコールとベルンゼに渡した。ルコールはクッキーを手にした後、キッチンで作業をしているトレトイルに頂きますと告げ、食べ始めた。
「船長、隕石は回収できたんですか? 俺たち、ずっとコントロールルームで作業してたので、情報が入ってないんですよ」
と、ベルンゼはマドレーヌを食べながらこう聞いた。言葉を聞いて反応したウエートは、持っているコーヒーカップを机の上に置き、話を始めた。
「隕石は回収した。今、ジギーハさんがワークルーム内にある作業室で調べているよ」
「とりあえず、一つの仕事は終わったみたいですね」
「じゃ、あとは衛星の管理ってとこか」
ルコールはコーヒーを飲んでこう言った。ウエートは頷き、言葉を続けた。
「ああ。まだ時間がかかるが、隕石の調査が終わったら俺も衛星の管理の仕事に入る。三人でやれば、すぐに終わるさ」
「だといいんですけどねぇ」
ベルンゼはそう返事をしながら、仲良く話をするナイトとティアナ、そしてココロを睨んだ。
ワークルーム内にあるジギーハの作業室。ここでジギーハは一人で隕石の調査をしていた。
「さてさて、お楽しみの時間と参りますかの! かわいいかわいい隕石ちゃん、今からじっくりねっぷりたっぷりと様子を見てやるからのー!」
興奮しているジギーハは、作業台の上にある隕石を見て満面の笑みを浮かべていた。手元のボタンを使って作業用の機械を動かし、隕石を調べ始めた。
同時刻、画面の中のココロが、辛そうな表情になった。
「ん? どうしたココロ?」
「すみませんナイト様、なんだかおかしいのです」
「おかしい? プログラムに異常が起きたか?」
「どうかしたの?」
心配そうな表情で、ティアナは尋ねた。様子がおかしいと察したウエートも近付き、ナイトを見た。
「実は、ココロがなんかおかしいみたいです。すみません、プライベートルームに戻ってプログラムを見てきます」
「ああ。分かった。急いで行ってきてくれ」
「分かりました。何か分かったら連絡します」
ナイトが走ってプライベートルームへ向かうのを見て、キッチンで作業をしていたトレトイルが不思議そうに呟いた。
「あれ? プログラムで作られたAIって、おかしくなるもんかねぇ?」
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