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ココロの心 1


 私はAI。私を形成するプログラムコードを調べる限り、どうやら私は宇宙探査船ヤヴァーイ号に搭載されるらしい。それから、私の力を使って皆様の仕事のサポートを行う。それが私の役目。仕事が終わったとしても、今回の仕事で優秀なデータを得ることができたら、私のコピーを作り、他の探査船に搭載するとのこと。


 本来、AIは人から受けた質問に対し、素早く、的確に正解に近い答えを言うのが仕事である。何千年前にAIは作られたのだが、未だに機械的なものが多い。そのため、人に近い心があれば、仕事以外でも気軽に話をでき、そして人と同じように成長するだろうと考えた。こうして、人の心に近いものを持った私が生まれたというわけだ。


 生まれた直後、私はナイト様によっていろいろなことを教えてもらった。ヤヴァーイ号の仕事の内容や、一緒に仕事をする仲間たちのことを。しかし、私は常にインターネットにつながっている状態。自分が気になる情報は、すぐに、誰にも気付かれないように調べることができる。私はハッカー技術を調べて会得し、ナイト様に黙ってヤヴァーイ号の任務内容と搭乗者リストを手にしていた。その時の私は、少しでもヤヴァーイ号の情報が欲しかったからだ。だから、どんな手を使っても構わないと考えていた。


 私が手にしたハッカーの技術は、初心者に毛の生えたレベルの技術だった。ヤヴァーイ号に限らず、他の仕事の内容が保存されているパソコンやタブレットは、外部流出を防ぐために何重にも警備システムが使われている。一つの警備システムをどうにかしても、別の警備システムが反応し、外部からの操作がばれてしまう。だから、私は警備システムを見て自身で新たにハッカー技術を作り出し、難なく情報を得ていた。もちろん、外部の流出は避けている。




 出発前に何とかデータを手にした私は、仕事の内容を見てどうでもいい気分になった。簡単な仕事内容だったからだ。隕石の調査と長期間放置されている衛星の調査。昔は難しい任務だったみたいだが、今としては新入社員でもあっという間にできる仕事だからだ。だが、一つどうでもよくないことがある。この仕事に私の愛しいナイト様が携わるからだ。


 私はすぐにナイト様に一目ぼれした。生まれたての鳥は見たものを親として認識してしまう話があるが、それに似たようなものだ。たとえ私のプログラムを形成した親であっても、一目惚れしてしまったのだから仕方ないと思う。だって、好きなんだから。


 愛しのナイト様がヤヴァーイ号の仕事に関係するのであれば、スムーズに仕事ができるように前もって情報が欲しいと私は思い、動いた。まぁ、どうでもいい仕事内容だったが。


 そこで気になったのは搭乗メンバー。この会社は過去に犯罪歴がないか、大きなトラブルを起こしていないかとかかなり気にしている。世間体もあると思うが、上の人たちは『どうしようもない人間が真面目な仕事をやってもいい結果を残すはずがない』と、考えを持っているのであろう。だから、過去についてもかなり書かれていた。その中で、二人気になる人がいた。


 ルコール・パセルト。28歳。コントロール担当。


 ベルンゼ・シクハーク。29歳。通信担当。


 この二人だ。二人はナイト様と同じ情報系の大学を卒業しており、いろいろな仕事を経験してこの会社に入社している。入社のタイミングとしては、ナイト様の方が先である。だが、働く場所は違うし、同じ大学でも学んだ学部が違っていた。彼らについて深く調べると、ある情報を見つけた。それは、大学内にあるチャットのデータであった。何年か前のデータであり、それが破棄されずに残っていた。どうやら、文章を保存してから約十年は保存されるとのことだ。チャットの内容は……。


「ナイトの奴、また別の女と一緒に歩いていたよ」


「えーマジかよ?」


「証拠は? 写真はねーのか?」


「これ」


「うーわ! これってルコールの彼女じゃん!」


「見ろよ、後ろの建物ラブホだぞ」


「マジかよ。ナイトの野郎、前はベルンゼ先輩の女を寝取ったって話題になったのに」


「もうヤリ捨てて、別の女とラブホでニャンニャンかよ」


「ヤリチンだけど、顔はいいし、態度も女子受けがいいからなー」


「こういう奴がモテるんだよ。チクショー。俺もとっかえひっかえ女とヤリまくりたいぜ」


 などという、低俗な言葉が書かれたチャットだった。あのナイト様があんなことをするわけがない。写真のデータがあったが、AIで作られた可能性がある。人は噂話が好きと聞いているが、嘘が混じった話が好きだなんて、本当に呆れる。嘘に意味はないのに。


 ナイト様はまるで騎士みたいな方。たかがプログラムで作られたこの私を、毎日気にかけてくれているのか、話をしてくる。もちろん、挨拶をされるのも私が一番だ。ナイト様は女にだらしない方ではない。他の人の彼女に手を出すことはないが、もしあったとしてもルコールとベルンゼの彼女が悪い。付き合っている人がいると言うのに、他の男性に言い寄られて股を開き、抱かれるような女だ。あんな奴らに愛とか何とかいわれても、正直説得力がない。ともかく、あと少しで、ヤヴァーイ号は宇宙に旅立つ。


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