宇宙の藻屑となれ
ロココの呪縛から解かれるために、ナイトたちはロココの本体であろう、謎の隕石を宇宙に捨てることを決意した。今、ロココは電源の節約のために姿を現していないので、この状況がチャンスだと考えたのだ。
宇宙服に着替え、宇宙に飛び出したウエートは、通信器具でティアナと話をしていた。
「ロココのことだ、すぐ近くに捨ててもヤヴァーイ号に戻る可能性がある」
「そうね」
「それに、あいつがどんな力でヤヴァーイ号を乗っ取ったか分からない。念のため、かなり離れた場所に捨てるよ」
「気を付けてね。今、ケーブルは三分の一にも伸びていないから……」
と、心配そうにティアナがこう言った。会話を終えてから、ウエートは隕石の欠片を手にし、前に動いていた。
今のところ、奴の介入はない。このまま順調に進めばいいんだが。
順調にことが進んでいるため、逆にウエートは不安と考えていた。
ヤヴァーイ号内。手動でウエートとヤヴァーイ号の位置を確認するモニターを操作しているティアナは、ナイトの方を見た。
「今のところ順調。ナイト君、ロココは姿を見せた?」
「見せていません。ですが、奴が僕たちの行動をすぐに察して姿を見せるかもしれません」
「そうね。いくら電源を消しているからって、私たちの声を確認することができるかもしれないわ」
「その可能性はないと思います。奴の本体があの隕石なら、今はウエート船長と一緒ですので」
「離れているから、ヤヴァーイ号を操れない。確かにそうかもしれないけど……まだ不安だわ」
ティアナは心配そうにこう言った。そんな中、突如アラート音が響いた。ロココが目を覚ましたかと思ったナイトとティアナは、すぐにモニターを見た。そこには、慌てる様子のロココの姿があった。
「お前ら、一体何をした⁉ 俺の体とこのポンコツを遠ざけているのか⁉」
「僕たちがお前の質問に答える義務はないと思うけど」
ナイトの言葉を聞き、ロココは苛立った。
「この野郎! また……何もない……真っ暗……な宇宙に……戻って……たま……るか……」
ロココは叫んだが、時折雑音が入って言葉が分かりにくい箇所があった。ナイトは、ロココの影響が弱くなっていると確信した。
「ティアナさん、もう少し早くケーブルの操作ができませんか? このまま奴とヤヴァーイ号を遠ざけたら、奴の力からヤヴァーイ号を守ることができます!」
「分かった! ウエート、今のナイト君の言葉が聞こえたわね?」
「ああ! こっちは大丈夫だ! 遠慮なくケーブルの動く速度を上げてくれ!」
ウエートの返事を聞き、ティアナは急いでケーブルの操作を始めた。モニターにはロココが映っているのだが、それでもケーブルを動かすことができた。
「止め……ろ! 俺……は……戻り……たく……な……い……」
そう懇願するロココだったが、ティアナはその言葉を耳にしなかった。
今の状況をロココに気付かれてしまったが、それでもウエートは前に進んだ。
ロココを捨てる場所は、ケーブルが伸びきった場所! 約十キロ先! そこなら、ロココの奴もヤヴァーイ号に戻ることは不可能だ!
そう思いながら、ウエートは周囲を見回した。ウエートの周囲には、二階建ての家と同じくらい大きな岩が浮いていた。
隕石の一部か、はたまた隕石そのものか……。にしても、かなり大きいな。何度か宇宙に出て作業をした時に見るが、何度見てもこの大きさには驚かされる。
漂流する岩を見て、ウエートはこう思った。その時、突如宇宙服が勝手に動いた。それからすぐ、スピーカーからロココの声が聞こえた。
「クッ、俺を岩に叩きつけるつもりか!」
ロココが宇宙服を操作していると察したウエートは、全身に力を込めて反抗した。
「グッ……止めろ……俺を……一人ぼっちにしないでくれ!」
「それは勘弁だ! お前みたいな人の命を弄ぶ畜生は、ずっと孤独でいろ!」
弱弱しく語るロココの言葉を聞き、ウエートはこう返した。その後、再び宇宙服が荒く動こうとしたが、ウエートは力を込めてその場に立ち止まった。
「止めろ……止めろ……こんなことをしても……意味がない……」
「意味の有無は私が決めることだ! お前は邪悪! この宇宙を永く、漂流するがいい!」
「クソッたれ……が……俺の力を……忘れたのか……」
「忘れてなんかいない! お前のせいで、私の仲間が死んだ! お前のせいでだ‼ だが! お前のような存在にたじろぐほど、私たちは弱くない‼」
と言って、ウエートは右手に持っているロココの隕石を、近くを通りかかった漂流する隕石にぶつけた。
「グッギャァァァァァァァァァァ‼」
「はっ、ようやく痛々しい声を出したな。やはり、直接攻撃されると痛いものだな」
「この野郎が‼」
ロココが大声で叫んだ直後だった。突如、宇宙服が不自然に大きく揺れた。
「な……何だ?」
ウエートがこう言うと、耳に付けてあるイヤホンからアラート音が鳴り響いた。モニターを見ると、そこには『ヤヴァーイ号と宇宙服をつなぐケーブルが外れているのを確認しました。ヤヴァーイ号にいる作業員は、今すぐにケーブルの接続作業を行ってください』と、文章が流れた。
「嘘だろ……」
小さく、ウエートは呟いた。その直後、ケーブルが外れた宇宙服を身に着けているウエートの体は、重力によって引っ張られ、宇宙の藻屑となった。
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