素顔
ウエートが身に着ける宇宙服から、ヤヴァーイ号を繋ぐケーブルが外れた。そのせいでウエートはロココの隕石と共に宇宙を漂う藻屑となった。
ヤヴァーイ号内。項垂れて何度も荒く深呼吸をしているティアナに近付いたナイトは、優しくティアナの肩を叩いた。
「ティアナさん……」
小さな声でティアナの名を呼び、その小さな声に反応し、ティアナはナイトの方を振り返り、強く抱きしめた。
「ナイト君……」
「落ち着きましょう。もう、ロココはヤヴァーイ号にはいないんですから……」
ナイトは優しくティアナの頭をなでつつ、モニターの方を見た。ロココが現れたせいでモニターに電源が付いたのだが、モニターに映るのは目をつぶって活動を停止しているココロの姿だった。
「ココロは……元に戻りました」
「でも、時間は……」
「ええ。元には戻りません。本部への連絡は、ココロが再起動してから行います。あんな出来事を信じてくれればいいんですが……」
心配する表情を浮かべ、ナイトはそう答えた。
すべてが終わった後、ナイトとティアナはプライベートルームにあるナイトの部屋にいた。そこで、二人は激しくセックスをしていた。激しいセックスを終えた後、呼吸をするナイトを見ながら、ティアナはうっとりしていた。
「あなた、噂通り性欲の獣ね」
「ええ。でも、あなたの表情を見る限り、もう野獣の虜じゃないですか」
「そうよ。あの人、体はでかいけど、イチモツは生まれたての赤ちゃんみたいにちっちゃいんですもの。興奮してでかくなったと本人が言っても、嘘だろうと思うくらいよ」
「でも、ティアナさんはウエート船長と付き合ってじゃないですか」
「好きであんな短小ゴリラと付き合ったわけじゃないわよ。あの人、船長って立場でしょ? 私たちより給料いいし、事故があった時の保険金も結構もらえるんだから」
「保険金か。そうか、だからわざとケーブルを外したんですね」
ナイトの言葉を聞き、ティアナは微笑んだ。
「仕事が終わったら、私のことを保険金目当てで殺人を犯した女だって告発するつもり?」
「するわけがない。ティアナさんみたいないい女を、牢屋に送るわけがない」
「共犯になるつもり? でもあなた、奥さんとお子さんがいたでしょ? 確か、ユイって名前の……」
「ユイのことは関係ないよ。嫁と子供がいるのに、女を抱いたら悪いって法律はない。訴えられるかもしれないけど、牢屋には入れられないよ」
「ばれたらまずいんじゃない?」
「殺人も同じさ。でも、浮気や罪なんてもんはばれなきゃいいし、証拠がなければあれこれ言うこともできない」
ナイトは笑みを浮かべながらそう言い、机の上の水を飲んだ。ティアナは起き上がり、水を飲み終えたナイトの上に覆いかぶさった。
「ねぇ、ルコールとベルンゼがあなたを殺したいほど憎んでいたけど、過去に何かあったの?」
「もしかしたら、学生当時にあいつらの彼女を僕が寝取ったかもしれない」
「抱いたってこと?」
「そう。学生の頃はいろんな女の子と遊びまわったから、どの子か記憶にないんだけど、まぁそのうちの誰かがあいつらの彼女で、僕に抱かれた後で破局なりなんなりしたってことだね」
「関係は続いているの?」
「分からないさ。今でも通じてる女の子はたくさんいるし、まぁ飽きたら一回やってそれでおしまいにしてるから」
「ワンナイトラブってことね。薄情だって言われない?」
「僕が他の子に目移りしやすいだけさ。ま、僕を熱くさせてくれないあの子らにも責任はあるってことで」
「それじゃあ私はどう?」
ティアナは笑みを浮かべ、ナイトの顔を舐めまわし、何度もキスをした。ナイトは上から抱き着いているティアナの腰に手を回し、そこから胸に触れた。
「僕の炎は火山のごとく燃えているよ」
「ふふ。うれしい。このままネクストラウンドに入っちゃう?」
「そうしたいのはやまやまだけど、ココロの調整もしたいんだ。まだ反応もしてないし」
「そう。じゃあ終わったら……」
「今夜は一晩中熱く過ごそう。なーに。今、この宇宙船にいるのは僕とあなただけですから」
「確かにね。それじゃあ、私はシャワーを浴びてくるわ」
「オッケー。すぐに作業を終わらせて、ベッドの上で待ってるよ」
会話を終えた後、ナイトは着替えてコントロールルームに向かい、ティアナは自室のシャワールームに向かった。
シャワールームに入り、ティアナは熱いシャワーで体を洗っていた。作業が終わった後で手元に入るウエートの保険金で、何を買おうかとティアナは考えていた。しばらくシャワーを浴びていたティアナだったが、シャワーの温度が徐々に上がっていくことに気付いた。
おかしいわね。温度設計はいじってないのに。
不審に思いつつ、ティアナは温度を示すモニターを見た。文字としてあらわされているのは、最初に設定した温度よりも高い数値だった。
「え? どうして?」
ティアナは思わず声を出した。温度を下げようと思い、ボタンを押した。だが、いくらボタンを押してもシャワーの温度は下がらず、それどころか温度は徐々に上昇していた。
「何よこれ? どうなってるの⁉」
焦ったティアナは、急いでシャワールームから出ようとした。しかし、シャワールームにはロックがかかっており、いくら扉を激しく動かしても、開くことはなかった。
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