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悪夢から覚めるために


 ティアナは何度も荒く呼吸をしていた。自分が生きているのか、はたまた死んでいるのか理解していなかった。とにかく今は、荒ぶる自身の神経や精神を落ち着かせることに専念していた。


「はぁ……はぁ……ど……どうなったのかしら?」


 周囲を見回し、辺り一面に広がっていたレーザーが消え、安堵した表情をしているナイトとウエートを見たティアナは、自身が生きていること、そして<ビームロール>をクリアしたことを察した。


「や……やったわ……」


 安堵したティアナは全身の力を失い、その場に倒れた。ナイトとウエートは急いでティアナの元に近付き、彼女を抱きかかえた。


「何とか……なったな」


「ええ。でも……」


 ナイトは不安な気持ちを捨てていなかった。まだ、ロココが何かをするのではないかと考えていたからだ。そんな中、モニターの中のロココが舌打ちをした。


「なーんだよ。あの高難易度をクリアしちまうとはな。運がいいねぇ」


「うるさいぞ!」


 ロココの言葉を聞いたウエートは、思わず叫んだ。ロココはウエートを茶化すような笑みを浮かべ、こう言った。


「まぁとりあえず今日はここまでにしておいてやるよ。大量にレーザーを使ったから、このポンコツのエネルギーもそれなりに使っちまった。俺は今からふかーい眠りに入る。明日までにどこかの衛星に立ち寄って、エネルギーの補充をしろ!」


 そう言うと、ロココは消えた。




 その後、生き残ったナイトたちはリビングキッチンルームにいた。ウエートはコーヒーを飲み、静かにこう言った。


「このまま奴のおもちゃになるのは勘弁だな」


「僕もそう思います。何か打開策を考えないと」


「そうね。あいつが何を考えているのか分からないけれど、このままだと私たち全員殺されるわ」


 ナイトとティアナはこう言った。ウエートはコーヒーカップをテーブルの上に置き、ナイトとティアナにこう言った。


「二人とも、思い出すんだ。あいつがどうしてこの宇宙船に来たのかを」


「それって……」


 ナイトは察した。ロココは隕石の回収と同時に心の体を乗っ取り、乗組員たちをゲームと称して殺していった。回収した謎の隕石をヤヴァーイ号から遠ざければ、ロココは消えると。


「あの隕石をどうにかすれば!」


「そうだ。そのためには、ワークルームにあるジギーハさんの部屋に行かなければならない」


「あいつは今、エネルギー節約のために姿を消しているわ。今がチャンスよ!」


 ティアナは立ち上がり、急いでワークルームのジギーハの部屋に向かった。ナイトとウエートも急いで立ち上がり、ティアナの後を追った。




 ワークルーム内のジギーハの部屋。中に入ったティアナは思わず吐き気を覚えた。目の前には額と後頭部から大量に出血し、倒れているジギーハの死体があった。


「ジギーハさん……」


 後から来たウエートは、ジギーハの死体を見て動揺し、ナイトは目をつぶって見ないようにした。


「とにかく……隕石を回収しよう。ロココが気付いていない今がチャンスだ」


 そう言って、ウエートは作業台の上にある隕石を手にした。隕石は生きているかのように紫色の光を放っているが、素手で触っても特に異常はなかった。


「回収成功だ」


「それでどうするの? このまま宇宙に放り投げるの?」


「そのつもりだ」


 ティアナの問いに対し、ウエートはこう答えた。




 サイドエリア。ウエートは宇宙服に着替え、台の上に置いてある隕石を手にした。


「ウエート船長、宇宙服や繋がっているケーブルのコントロールはAIの操作になっていますが……」


 不安な表情のナイトを見て、ウエートは笑った。


「大丈夫だ。AIに不具合があった時に、手動で操作ができるように設定してある。今、手動操作に切り替えたから、ロココの介入は絶対にないはずだ!」


「だといいんですが……」


 ナイトは不安だった。ロココがこの状況に気付き、邪魔をするのではないかと思っていた。そんな中、ティアナはてきぱきと作業をしていた。


「ティアナさん、手つきが速いですね」


「いざって時に学んでいたの。上司から言われてたの、素早く精密な行動は素晴らしい結果につながるって」


「確かにそうですね」


「ちんたらしてられないわ。ナイト君も手伝って」


「はい」


 その後、ナイトはティアナと一緒に作業を始めた。ナイトの操作により、ヤヴァーイ号のハッチが開き、宇宙に出られるようになった。


「ウエート、宇宙服にモニターが出てるはず。そこで、繋がっているケーブルの状況が分かるはず。モニターが出てる?」


「ああばっちりだ。ケーブルにも異常はないことが書かれてある」


「今のところ、あいつの介入はないわね。手動でやってるから、ないと思いたいけど……」


「あまりネガティブなことを考えるな。今は隕石を遠くに蹴り飛ばすことを考えるんだ」


「実際に蹴り飛ばすのはあなたじゃない」


「君たちの気持ちも込めて、遠くに蹴り飛ばすさ」


 ウエートはナイトとティアナの方を振り向き、笑顔でこう言った。


「ではウエート船長、準備が終わり次第に行動をお願いします!」


「準備は終わった! では、行くぞ!」


 ナイトの言葉に対してウエートはそう答え、勢いを付けて宇宙に飛び出した。


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