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休みの時間はおしまい


 翌朝、ウエートはキッチンにある食料管理モニターを操作し、朝食の用意をしていた。ナイトはやつれ切った表情のティアナを見て、心配した。


「ティアナさん、あれから何かあったんですか?」


「ケケケ。あの人に思う存分愛されたんだろ? あんたらの声が俺の部屋まで届いたぜ」


 と、笑いながらベルンゼがこう言った。ティアナは面白半分で話をするベルンゼを睨んだが、ウエートが朝食とコーヒーを持ってナイトたちが座る机にやって来た。


「うるさかったか? それはすまなかった」


「愛する人がいるってことは、本当に素晴らしいことですねぇ。羨ましいですよ」


 皮肉交じりにそう言った後、ベルンゼはコーヒーを受け取って一口飲んだ。それから朝食の時間となったが、誰も口を開かなかった。重々しい空気が支配する中、突如モニターの電源が点いた。


「来やがったか」


 ベルンゼは口の中のパンを飲み込んでこう言った。モニターには、ロココの姿が映っていた。


「よーお前ら! 早速だが次のゲームを始めるぞ!」


「まだ飯を食ったばっかりだ。まともなコンディションじゃねーよ」


 ベルンゼはそう言ったが、ウエートはベルンゼに喋るなと告げ、ロココの方を見た。


「もう少し時間をくれないか?」


「やだね。俺がテメーの言うことを聞くと思ってんのか?」


「少しは親切心があると思ったが」


「そんなくだらねーもん持ち合わせちゃいねーよ! じゃあ次のゲームの説明をする! 今すぐ廊下に出ろ!」


 と言って、ロココが映るモニターの電源が消えた。ベルンゼは舌打ちをして立ち上がり、ウエートもその後に続いた。


「ティアナさん、僕が助けます」


「ありがとう」


 ナイトは気を悪くしているティアナに手を貸し、立ち上がらせた。それからベルンゼとウエートと少し遅れる形で廊下に出た。




 廊下に出たナイトとティアナは、目の前の光景を見て驚いた。


「ど……どうして対侵入者用のレーザートラップが作動しているんだ?」


 と、ナイトはこう言った。


 ヤーヴァイ号には対侵入者のために、廊下や一部部屋にレーザートラップが仕掛けられている。ヤーヴァイ号に入る資格を持ち合わせていない悪党、あるいは危険な未確認生物が侵入した場合に発動し、高熱で放たれるレーザーによって問答無用で焼き切ってしまう恐ろしい罠なのだ。


 それは本来、外部からの侵入があった時に発動する物であり、手動で動かすことは絶対にできないのだ。それが今、発動している。


「レーザートラップの作動もできるのか……」


 冷や汗をかきながら、ウエートは呟いた。だがその直後、レーザーは消えた。


「何がしたいんだ、本当に」


「俺がレーザートラップを扱えることだよ」


 ベルンゼの言葉に反応するかのように、近くのモニターにロココの顔が映った。


「次のゲームはこいつを利用した<ビームロール>だ! ルールは単純、レーザーを潜り抜けながらゴールを目指すだけだ! 今回は特別だから、制限時間はない!」


「ケッ、SFアクション映画みたいなことをやれってか? 悪いがあれはお芝居だ! 俺らみたいな運動音痴がサクッとできるもんじゃない!」


 ベルンゼは身勝手なロココの態度に感情的になり、大声で怒鳴った。ナイトとウエートがベルンゼを止めようとしたが、ベルンゼは二人を振り払い、ロココが映るモニターに近付いた。


「お前の目的は何だ⁉ ただ遊びたいだけか? 遊びたいなら他でやれ! 俺たちをおもちゃにして遊ぶことはねーじゃねーか! テメーのせいで三人死んじまったんだ! 三人だ!」


「それがどうした⁉ たかが三人くたばっただけじゃないか‼ まだ半分も死んでねーだろうが‼」


「お前は人の命を何だと思ってんだこの野郎!」


「何も思っちゃいないさ! 俺にとってはそんなのこと、どうでもいいんだよ! とにかく俺の言うことを聞け‼ プッツンしたせいでお忘れですかー? 俺は自由にレーザートラップを使えるんだぜ? その気になれば、テメーのそのブサイクな面のど真ん中に、レーザーで風穴空けることができるんだ! おっと、それじゃあダメだな。ブサイク面なんて見たくないから、ゴリラのイチモツのように極太なレーザーでテメーのブサイク面を焼き消したほうがいいな‼ ギャハハハハハ!」


「このクソが‼」


 ロココの罵倒を聞き、ベルンゼの怒りは限界に達した。ベルンゼは力を込めてモニターを殴った。だが、モニターは割れなかった。


「残念だったな、ブサイク短気君! そのご自慢の弱っちぃ拳で俺が映るモニターを壊すことはできませんでしたねぇ‼」


「この野郎! もう一発殴ってやる!」


「止めるんだベルンゼ‼」


 モニターに殴りかかろうとしたベルンゼを、後ろからウエートが止めた。ベルンゼはウエートの手から離れようとしたが、ウエートは力強くベルンゼの右腕を掴んでいた。


「あんな些細な挑発に乗るんじゃない。ここで怒りを爆発させても無意味だ」


「けど! あんな風に言われたら、誰だって怒るだろうが‼ あんただってそうだろ? あのクソAIに短小イチモツとか言われたら腹が立つだろ⁉」


「確かにそうだ。だが、モニターを殴り壊しても、あいつは死なない」


 と、静かにウエートはこう言った。ベルンゼは息を荒げていたが、何とか落ち着きを取り戻した。


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