奇跡といざこざ
二度目の<アスレチックダイ>に指名されたのはナイト。ナイトは自身が持つタブレットをティアナに託し、<アスレチックダイ>に挑戦する。トレトイルが挑んだ時と同じように何とかコンテナをかわすナイトだったが、残り時間あとわずかというところで、落下したコンテナがズボンのすそを下敷きにしてしまい、動けなくなってしまった。ズボンを脱ごうとしたその瞬間、ナイトの上からコンテナが落下した。
「キャア‼」
「ナイト君!」
潰されようとするナイトを見て、ティアナは悲鳴を上げて後ろを振り向き、ウエートは思わず手を伸ばした。
よっしゃ‼ このままあの野郎を潰してしまえ‼
ベルンゼは一人だけ、ナイトが潰されるのを心から喜んでいた。
自分は死ぬ。そう思ったナイトは、目をつぶって死を覚悟していた。しばらくして、ナイトは目を開け、自分がまだ生きていることを知った。
「運がいいなお前は」
と、ロココがこう言った。ナイトは上を見て、コンテナが落下しなかった理由を把握した。ナイトのズボンのすそを下敷きにしたコンテナが邪魔をして、落下するコンテナがナイトの上に落下しなかったのだ。
「た……助かったのか……」
安堵の息を吐きながら、ナイトはその場で横になった。その直後、時間切れのベルが鳴った。
「あーあ。成功しちまったかー。ラッキーだったな、本当によー」
ロココは残念そうにそう言うと、いそいそとアームを動かしてコンテナを片付けた。ウエートとティアナは急いで倒れているナイトに近付き、立ち上がるために肩を貸した。
「無事でよかったよ、ナイト君」
「いえ、僕は運がよかっただけです」
「でも、助かったのよ。もしかしたら、トレトイルが力を貸してくれたのかも」
話をするナイトたちを見て、ベルンゼは舌打ちをした。
<アスレチックダイ>が終わった後、ナイトたちはリビングキッチンルームにいた。あれからロココが何も言わないので、とりあえずリビングキッチンルームに戻って休むことにしたのだ。
ベルンゼはテーブルの上に置いてある自身のタブレットを使い、ヤーヴァイ号のコントロールシステムにアクセスしようとしていた。だが、どんなことをしてもロココが作った妨害システムによって邪魔をされてしまった。
「クソッ! このパターンもダメか! 本部に連絡が通じねぇ!」
タブレットを操作していたベルンゼは、大声で怒鳴った。その一方、ナイトは自分のタブレットでココロのプログラムを見ていた。
「これ、ココロちゃんのプログラム?」
と、コーヒーを飲みながらティアナがやって来た。ナイトはそうですと答え、プログラム修正を続けた。
「どこかにロココがいじった気配があるはず」
「ロココが?」
「ええ。ココロは非常に複雑なプログラムでできています。それさえ修正すれば何とかなるかもしれません」
「何とかなる? 三人死んじまったのに、もうどうにもなるわけがねーだろうが‼」
話を聞いていたベルンゼが、苛立ちながら叫んだ。その言葉に対し、ナイトは何も反論することができなかった。何もできないナイトを見て、ベルンゼは舌打ちをして近付いた。
「テメー、こんな時にあんなガキのAIをいじって何になるんだよ⁉ あのガキは変な奴に乗っ取られたって言っているが、本当はテメーが陰で皆を殺してんじゃねーのか⁉」
「僕はそんなことをしない! する理由が見当たらない!」
ナイトは立ち上がり、言葉を返した。反論を聞いて、苛立ったベルンゼはナイトを殴り倒した。ティアナが悲鳴を上げたことにより、ウエートが騒動に気付いた。
「ベルンゼ! ナイト君を殴ってもこの状況は解決しない!」
「うるせー‼ 筋肉だけのあんたは黙ってろ‼」
ウエートはベルンゼが怒りで暴走していると察し、仕方ないと思いつつベルンゼに近付き、ビンタした。強烈な音が響いた後、ナイトたちは身動きをしなかった。ビンタされたベルンゼは、しばらく呆然としていた。
「これで冷静になったか? いざこざを起こすのは止めろ。こんなバカなことをして状況が変わるか?」
ベルンゼは殴られた頬を軽く触れ、小さく頷いた。その後、大人しくなったベルンゼは座っていた場所に戻った。ウエートは倒れているナイトに近付き、声をかけた。
「大丈夫か?」
「ええ。大丈夫です。変なところにもぶつけていないので」
「大丈夫ならそれでいいが……君とベルンゼが過去に何があったか分からないが、今はそれどころの問題じゃない」
と言って、ウエートはナイトに肩を貸して立ち上がらせた。その後、ナイトはタブレットを手にしてウエートにこう言った。
「船長、状況変わる可能性があります」
「変わる? そう言えば、さっきからタブレットを操作していたが、何をしていたんだ?」
「僕のタブレットに、もう一つのココロのデータを作っています。ロココに体を乗っ取られる前のデータをこのタブレットにコピーしているんです」
「仲間を増やすのか」
「ええ。ココロを復活させれば、奴が出すゲーム攻略の手助けになると思います」
「同じAIなら、裏からいろいろと探れるというわけか」
「その通りです。すみません、少し時間をください」
「ああ。頼むぞ、ナイト君」
会話後、ナイトは急いで自身が持つタブレットでココロ復活の作業を行った。ティアナはただ、ロココがこの状況を察しないことをずっと祈っていた。
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