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タレニウム公国救国史 大公代理フレイアは、政略結婚で国難を乗り切れるのか⁉  作者: 武州青嵐(さくら青嵐)


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31話《メンフィス》ウェイドとロクラン

◇◇◇◇


 その一時間後。

 重装歩兵の休憩所として使用されるテント内に、ウェイドとロクランはいた。


「では、まだその幌付きの荷車の中身は確認できないんだな?」

 ウェイドに問われ、ロクランは頷く。


「人が入れ替わり立ち代わりしているそうなので、なにか調整の必要なものなのかもしれません」

「新兵器だろうか」


 ウェイドは腕を組み、ふう、と息を吐く。


 一番に考えられることはそれだろう。


 幌がついていること。

 戦場に持参させること。

 軍隊自体の歩みが遅いこと。


 そこから考えられるのは、こちらが見たこともない火器による新兵器を運んでいるのではないか、ということだ。


 だがロクランは慎重に応じた。


「馬車の大きさ的にはその可能性もありますし、火器だからこそ万全を期して歩みが遅いのかもしれませんが……」

「なんだ?」

「幌、というのが気になって」

「雨や朝露に濡らしたくないのではないか?」

「だとしたら、油紙を巻くとか。布で覆うことで事足りると思うんですよ」


 ロクランの言葉は慎重だ。ウェイドは自分の顎をつまみ、遠くを見るようにして考える。


「形体を知られたくない、とか? 布や油紙で巻いてしまえば、形がわかるじゃないか」

「なんのために」

「投石器などは、大きさからある程度飛距離が推測されるだろう?」


 言われてみればそうか、と今度はロクランが息を吐いた。


「まあ、なんにせよ、あんだけ動きが遅いんだ。慎重を期するなにかなんだろう。それがわかっただけよしとしよう」


 ウェイドは言うが、ロクランはなんともすっきりしない。

 本来であれば斥候をもう少し近づけて、中身がなんなのか確認したいところではあるのだが、かなり警備をつけられていて近づけないのだそうだ。


(中のものが出てくる様子がない、というのもな……)


 もしそれが新兵器だとしたら。

 そして、とても繊細で揺れや振動に弱いものであるのならば。


 例えば、工具を持ってはいるとか。

 あるいは、部品を取り出すとか。


 そのようなことがあるような気がする。


 だが、斥候に尋ねたところ、出入りする兵たちが、工具を持っている素振りはないのだという。


 あらかじめ中に工具類があるのだとしても。


(なにか……廃棄ぐらいはしそうだが)

 ロクランはちらりとウェイドを見た。


「ぼくが行って確かめて来ましょうか?」

「ん?」


 ウェイドは驚いたように目を少し見開いた。


「そんなに気になるのか」

「ええ。とんでもない新兵器だとしたら、もう一度作戦を見直さなくてはいけないでしょうし」


 いまから馬を飛ばせば、ぎりぎりいけるかもしれない。

 ゴステアを避けるように大きく迂回し、ハドリアヌス王がいる増援部隊に接近、遠間からでも望遠鏡で確認ができるかもしれない。


「どうせ、こちらの出立は二日後なのでしょう?」

「まあな。大公はそれでいくつもりのようだが……」


 あんな女、捨てていけばいいのに、とロクランは心の中で思う。


 セジェル軍の増援部隊の足が遅いこともあり、2日後に出発したとしても、ゴステアに着くのはおなじぐらいになるだろう。


 であるならば、自分が先に行き、様子を確かめ、そして近づいてきたウェイドに報告することは、時間的に可能……だろう。


「いや、ロクランはここに残ってほしい」

 ウェイドが即断した。


「近衛が別動隊として現在、本体から離れる準備をしている。これ以上の離脱は、危険だしな」

「……あの女性兵のこともありますしね」


 ロクランは忌々し気に言う。

 フレイアが作成した女性だけの騎兵。

 あれをどう使うつもりなのか皆目見当もつかない。


「幌馬車については、斥候からの報告をまとう」

 ウェイドに言われ、ロクランはしぶしぶうなずいた。


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