表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境伯爵家の剣神、神々に復讐するため旅に出る~月喰みの魔女と魔女の騎士~  作者: 嘉神かろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/28

第8話 基盤は整った

 昼食を終えてギルドに戻り、実技試験が始まる時間まで建物内をぶらぶらして過ごす。

 このエンシルは特別大きな町ではないけど、人の住まない地域がすぐそこにあるからか、冒険者ギルドは比較的規模の大きな方だ。


 その分設備も充実していて、時間を潰すには困らない。

 特に何を見るでもなくフラついているだけで、十分暇を潰せた。


「そろそろ時間だな」

「ええ。一階の奥の修練場、って言ってたわね」


 修練場は冒険者ギルドによってあったりなかったりするけど、無いところは町の外で実技試験を行うのだろうか?

 

 だとしたら、周辺の安全確保の依頼も定期的にだされそうだな。今後、確認してみても良いかもしれない。


 エンシルの修練場は、ギルドの裏手に作られていた。

 学校の体育館くらいの広さで、足下は土。周囲を金属の壁が覆っている。


 空がよく見えるから、雨の日に使うのは止めた方が良さそうだ。


 そこに先ほどの筆記試験で見た顔が集まっている。

 見たことがないのは、別の部屋で試験を受けていた連中か。

 ざっと二十人くらいだな。


 それで、試験官は……、ああ、あの人たちか。

 修練場の中央あたりで、受験者たちを見ながらひそひそ何か話している連中がいる。


 見て分かる範囲の実力でも、Aランクというなら納得できるレベルだ。


 しかし、試験官は五人か。Aランクへの報酬的に一人の可能性も考えていたから助かった。


 さすがにこの人数と一人が順に戦うとなると、休憩時間も含めてどれだけ待たされるか分からない。


「よーし、時間だ。点呼をとる。今いない奴は、受験の意思なしってことでいいな」


 これ、全員相手するのが面倒くさいからじゃないよな?

 そんな規定の話は聞いていない。


 まあ、時間を守れないのは信用に関わるからな。

 試験の趣旨からして、それほど横暴な話でもないだろう。


 試験官の一人、身の丈ほどの剣を背負った男がが一人ずつ呼ぶのに、受験者たちが反応していく。

 

 なんだか、学校を思い出すな。

 学校はクソ親父どもから離れられる場所だったからな、割と嫌いじゃなかった。


「いないのは、二人か。まあ、優秀な方だな。それじゃあ呼ばれたやつから前に出て、戦い方を言え。俺らのパーティで戦い方の近いやつが相手する」


 武器の相性を考慮せずに審査できるように、というところか。

 なら、俺の相手は今喋ってるあの男になるな。

 連中の中で一番強そうだし、リーダーなのかもしれない。


「まずは、アレク!」


 ん、俺からか。

 点呼の順番と違うな。


 まあどうでもいいか。

 早く終わるならこちらも助かる。


「見ての通り、剣士だ。よろしく頼む」

「ほう……。なら相手は俺だ。次は、ルナリス!」


 俺の次がルナリス……。文字の順でもないのか。

 そうすると、筆記の成績の順か?


「魔法師よ」

「なら、相手はレンジだな。そっちの辛気くさいやつだ」

「辛気くさいはないだろ? まあ、よろしく」


 それから次の二人まで呼ばれて、戦い方を確認されていた。

 偶然違う戦闘方法の四人が並んだけど、これで剣士が二人いたら、順番の前後入れ替えをしたのかもしれないな。


 Aランク、英雄と呼ばれ得るランクともなると、さすがに色々考えている。


「それじゃあ、アレクに、ルナリス。用意ができたら言ってくれ」


 さて、いよいよか。

 相手は個人でAランク。このレベルに苦戦するわけにはいかない。

 レフトアの騎士団長や父さんは、冒険者で言えばSランククラスの強さだった。


 つまり、この男にはあっさり勝てなければ話にならない。


「いつでも大丈夫だ」

「同じく」

「よし、それじゃあ適当な場所に移動しよう」


 ルナたちと十分に距離をとった位置で試験官の男と向かい合う。

 さすがに魔剣は使えないから、構えるのは屋敷から持ってきた一般騎士用の鉄剣だ。


 こうして見ると、なおさら大きく見えるな。

 俺も日本ならかなり身長が高い部類の背丈だとは思うが、この男はもう一回りくらい大きいじゃないか?


 もしかしたら、俺の身長でも平均的なのかもしれないな。


「そういや自己紹介してなかったな。ダンテルだ。一応試験官の面目があるからな、お手柔らかに頼むぜ?」

「善処はする」


 さすがにAランク。実力差には気がついているか。

 口ではああ言っているが、目は楽しみだと言わんばかりに輝いている。


 この男、戦うことじたいが好きな部類かもしれないな。


「合図は私がします! 二組とも、準備はいいですね!?」


 試験官パーティの一人の声に、首肯を返す。

 構えは正眼。手早く決めよう。


「それでは、始め!」


 ダンテルが飛び出した。

 なかなか速い。

 筋骨隆々とした見た目に反するスピードだ。


 その勢いを乗せて、上段からの切り下ろし。

 これを正面から受けるのは、あまりいい選択では無いな。


 受け止める剣に角度をつけ、手首で柔らかく受け流す。

 そのまま横薙ぎ。


 これは更に深く潜り込むことで躱された。

 さすがにダメか。


 振り抜く勢いのままに振り向き、二撃目の横薙ぎを剣で受け止める。


「むっ!?」


 俺の体格で大剣を受け止められるとは思っていなかったのだろう。驚愕の声が漏れた。

 それでも隙は作らないあたり、歴戦の戦士には間違いない。


 ダンテルの剣を押さえ付けたまま、前蹴り。

 挟まれた腕ごと蹴り抜けば、彼の体は十メートル以上吹き飛んで、地面に轍を作った。


 その距離を一足飛びに詰め、喉へ剣を添える。

 チェックメイトだ。


「……参ったなこりゃ。想定以上だ。実力の半分も出させられなかった」

「いや、あんたもAランクなだけはあったよ」


 試験官をしてるだけあって人格的にも優れているのだろうか。

 妙な難癖をつけられることも覚悟していたけど、当然のように受け入れて評価してくれている。


「この後も修練場に残っていた方がいいか?」

「いや。どうせまだまだ時間がかかる。結果は受付を通して伝えるから、今日はもう帰ってもかまわんぞ」

「そうか。助かる」


 ずっといても邪魔なだけだしな。

 他の受験生の視線も鬱陶しいし、ルナが終わったらさっさと帰ろう。腹も減った。


「なぁ、さっきの二人の動き、見えたか……?」

「いや、まったく」

「あっちの姉ちゃんもやべぇぞ」

「私、辞退して帰ろうかな……」


 これは、失敗したかもしれないな。

 別に目立つ気も、他の受験者の心を折る気も無かったんだけど。


 とりあえず、適切に評価してもらえるだろうし、しっかり受けた方が良いと思うぞ。


 それで、ルナの方はどう――


「あいつ……」


 試験官の、レンジだったか。気の毒に。


 見えたのは、いつかも見たような見上げるほどの氷の塊だ。

 氷山と言ってもいいかもしれない。


 その中にはおそらくレンジの生み出したんだろう巨大な土の人形、ゴーレムがいて、彼自身も、氷山の山頂付近で首から下を凍りづけにされている。


 ルナの周辺の地面にはいくつも抉れた跡があるから、相手からの魔法は全て弾き落としたんだろう。

 圧倒的、というやつだな。


 やりすぎないように言っておくべきだったか?

 いや、あいつの実力なら、あれでもかなり加減した方だな。


「お待たせ」

「……はぁ」

「なによ?」


 やりすぎた自覚は無いらしい。

 たぶん、早く終わらせたかっただけだ。

 やろうと思えば、もっと目立たない方法もとれただろうに。


 まぁ、不可抗力ということにしておくか。

 氷も中身を砕かないようにちゃんと調整して消したみたいだし、問題ないだろう。


「いや、なんでもない。それより、もう帰っていいらしいぞ」

「あら、そうなの? じゃあ、一旦宿に戻りましょうか」


 しかし、これからのことを考えたら、一応目立たない必要性も説いておいた方がいいかもしれないな。


 ともかく、これであとは、結果を受け取るだけ。

 ようやく本来の目的に集中できるな。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ