第14話 練習の成果をみるまで!
「ソウタ? なにかいうことは?」
日が沈む頃俺らは調査から帰り、ミーナの部屋つまりはキーナさんの家に戻ってきた。
そして部屋にはルナが仁王立ちで待ち構えていた。
「あの? ルナさん? こちらものっぴきならない事態だったもので…」
「こっちものっぴきならない状態だったんだけど? 怒らないから言ってごらん?」
優しい言葉とは裏腹に顔が全く笑ってない。
とりあえず、今日あったことをルナに話してみる。
「なるほど。 つまりは魔王幹部との戦闘で追い込まれて仕方なく使ったのね? それなら…怒るに怒れないね。 ソウタは大丈夫だったの?」
「ああ、その後もう一回唱えたら今度はルークが出てきてな? 助けてもらったんだ」
「そっか。 でもこっちはその…練習中に、いきなりなくなって…その…」
「まぁ、ソウタがルナのパンツを召喚したのは幹部と戦う前の雑魚との戦闘でだがな」
と、着替え終わったミーナが口を挟む。
余計なこと言うなよ!
「へぇ? 嘘ついたんだ?」
「嘘じゃない! あれもあれでピンチだったから仕方なく…」
「まぁボーッとしてて魔物の接近に気づかなくて反応が遅れたからピンチになったんだけどな」
「ミーナ! なんでそうやって余計なことをさっきから!」
ルナからはシベリアなんて生温い、 とんでも無い冷気を帯びた殺気を感じる。
俺は祈った。
あの適当な神さまに。
どうか哀れな子羊に神のご加護を。
「なかなか頑丈だな、ソウタは」
とミーナはボコボコにされた俺の手当てをしてくれる。
手当てしてくれるのはありがたいのだが、余計なことは言わないで欲しかった。
「そういえば、遺跡の中になにかあったのか?」
「あったといえばあったしなかったと言ったらなかった。 要するに革新的な発見はなかったのだが、この辺でよく見つかる古代の遺品みたいなのはいくつかあったな。 もっとゆっくり調べてみたかったのだが、エスタの奴がいたせいで遺跡内の魔毒の濃度が高くてな、長くはいられなかった」
「魔毒?」
「知らんのか? ほれ、エスタの奴からなんか威圧感みたいなの感じただろ? あれが、魔毒だよ。 まぁ魔物の持っている魔力は人間に毒があるからそう言っているだけでどちらも同じ魔力で使い道には変わり無いんだがな」
なるほど、確かに身体に悪そうな感じしたもんなー
「それより悪かったな。 結局海の魔物の件は解決できなかった」
「いいよ、別にそこまで急ぐ旅でも無いし。 それにエスタ曰くその同僚の癇癪が治ればまた通れるんだろ? それなら気長に待つさ」
「そうか、ほれ一応手当ては済んだぞ。 後はルナと仲直りして回復魔法かけてもらえ」
仲直りったってしばらく機嫌なおしてくれなさそうなんだが…
するとミーナは立ち上がり部屋を出ようとする。
「さぁ、行くぞ、ソウタ」
「いくってどこに?」
「決まってるだろ? 仲直りしにだ」
と俺を連れ出しどこかに行こうとする。
ミーナに連れて行かれたのはギルドだった。
なんでこんなとこにルナがいるとわかるんだ?
「ほれ、入った入った。 いい席はちゃんと取ってあるぞ」
と中に入る。
するとギルドに併設された酒場にはたくさんの人がというかほぼ満席で立ち飲みしてる人もいるくらいだ。
「親父! 僕とこの少年にビール!」
「ミーナちゃんこんなとこに来るなんて久々だな!」
といい酒場の親父は俺とミーナにキンキンに冷えたビールを持ってくる。
「お、おい、 ミーナ。 なんでこんなとこに連れてきたんだ?」
「なに、ただの仕事の打ち上げさ。 それより今から面白いのが始まるぞ?」
すると酒場の舞台に司会の人らしき人がたつ。
「えー、皆さんお待たせしました! 本日のメインショー、同劇場No.1の踊り子キーナちゃんと旅人の飛び入り参加! ルナちゃんのステージです!」
わぁぁぁっと大きな歓声が上がる。
すると出てきたキーナさんとルナは綺麗なロングダンスを見に纏い息のあった踊りを見せてくれる。それはもう2人に見惚れるくらいだった。
「どうだい? すごいだろ?」
とニヤニヤしながらこちらをみるミーナ。
なんで自分がやってもいないのに誇らしげなんだよ。
キーナさんとルナはその後も会場をわかせ、最後はたくさんの拍手や酔っ払いどものヤジを受けていた。そして
「ソウタ、 ほれついてこい」
とミーナは俺の手を掴みステージ裏へ引きずっていく。
そこは楽屋になっていた。
「あらお姉ちゃん、ソウタくん見に来てくれていたの?」
「な、ななななななななななな、なんで!?」
とルナは顔を赤くして煙を出している。
「いやな、ソウタがどうしても仲間の晴れ姿が見たいと言ってな。 僕はそれにしょうがなくついてきたんだ。 それにしても2人ともお疲れ様」
「えっ!? ちがっ! いったっ!」
と俺が言いかけたらミーナは俺の足を踏み、いいから合わせておけと耳打ちする。
「そ、そうなの? そうなら最初っから言ってよ! それでどうだった?」
とルナが上目遣いで聞いてきたので素直に感想を言ってみた。
「ああ! すごかったよ、その服も似合ってるしなんかこう動作1つ1つに惚れそうになるというかなんというか…」
というとルナは下を向き肩をプルプル震わせている。
「どうした?」
「どうしたもこうしたもこんなみんながいるところでなに言ってんの、バカっ!」
と殴られた。
なんで!? 感想言っただけなのに!
ミーナを見てみるとやれやれといった顔でキーナさんも同じような顔をしている。
「全く本人たちは幸せだねー」
「ふふふ、ごちそうさま。 これを期にお姉ちゃんも探したら? いくらなんでも20超えてるのになにも無いのもどうかとおもうわよ」
「僕は研究が恋人だよ、大きなお世話だ!」
みんな気にして無いけど俺一応けが人なんだけどな?
労ってほしいな。とくに心の面とかさ。
その後なんだかんだでルナに回復魔法をかけてもらい、今晩はミーナの家に泊めてもらえることになった。
「そっか、結局海の魔物の件は解決しなかったんだ」
次の朝、ルナはトーストをかじりながら昨日中途半端になってしまった話の続きを聞いていた。
「それじゃ海路は諦めて陸路で行くしか無いね。 すごく遠回りになるけど」
「陸路でもいけるのか?」
俺もトーストをかじる。
「うん。 ここから北にの『ランダス』の街を目指してそこから皇都を目指せるよ」
その順序で行くしか無いねとルナはいい、牛乳を一気に飲み干す。
まぁただ単純に魔王を倒してもしょうがないからな冒険者らしいことをしてもいいだろう。
というか、俺はエスタでさえても出なかったのに魔王なんて倒せるのか?
やっぱあの神さまにもっとすごい装備要求するんだった。
と今更ながら後悔する。
「そうか、もう行くのか」
俺らが街を出発するときミーナとキーナさんが見送りに来てくれた。
「短い間だったけど、いろいろとありがとう」
「なに礼には及ばないよ、この先も気をつけてな」
こうして俺らは次の街『ランダス』の街を目指すことになった。




