フレロレ、5
僕はペアになった人とパトロールしていたら突如、誰かがものすごい速さでこっちに駆けてきた……。
少し身構えたがその男は警備隊の制服を着ている、敵ではなさそうだ……。
「あ、あの……ハァー、ハァー。辻斬りが現れました。援軍をお願いします。」
息を切らした青年がしどろもどろに声を出す。
この人……、確かグレンと一緒だった……名前は……、忘れた。
僕は誰かといるときに沈黙が流れてもまったく気にしないタイプなのだが、僕のペアになった子はそうでもないらしい。そわそわしていたのだがいっこうに話しかけてこない。何かきっかけがあればと思っていたんだけど……。
そのきっかけは終了の合図でした……。
まあグレンなら一人でも大丈夫だろうけど、街がすっかり闇におおわれているせいか妙な不安に駆られる……。僕のペアだった子に本部への援軍をお願いし、ペデル君(資料をチラ見した)と一緒に先に現場に向かうことにした。
ペデル君に導かれるままたどり着いた現場では刃物と刃物がぶつかり合う音が響いていた。すでに戦っている。
僕たちはすぐに敵からは見えない位置に隠れ、遠目で戦況を伺う。
グレンと黒づくめのローブに仮面をつけた男が戦っている。その周りに……二人。
敵は……合計3人。
しかし、何かおかしい。
別に敵が何人いてもおかしくはないが、3対1の状況なのになぜか敵の他二人は戦いに参加せず、邪魔にならないところで眺めているだけだ。
なぜ他の二人は加勢しない?
こうやって警備隊とかち合った時点でとっとと倒したいはず。
もしくは正体がばれないうちに逃げ出したいはず。
今まで何の証拠も残さず、その存在すら確かのものではなかった辻斬りがなぜこんなところで時間を使っているんだ……?
グレンは強い。
敵は防戦一方だ。
グレンの技はこの国最強と呼ばれた人からの直伝の必殺技ばかりだ。
いや、逆の見方をするならよく持ちこたえている。
大矛を短く持ちグレンの2本の剣をうまくさばいている。
グレンの攻撃を捌くなんてそうそうできるもんじゃない。
相当戦場での経験があるか……、太刀筋を知っているか……。
敵は何者なんだ?
いや、そんなのは捕まえてみればわかる。
確かブローム様が設置したトラップは……、結構遠いな……。
まあ、今グレンが戦っている奴以外のただ見ているだけの二人を抑えれば……。
見たところその二人は戦っている奴よりも小柄で弱そうだ。
グレンが3人の意識を引きつけているうちに裏から襲い掛かれば行ける。
味方に増援が来ちゃうと逃げられるかもしれない。
速さが大事だ……。
「ペデル君、行くよ!あそこの二人を裏から狙う!」
「ええ。そんなの嫌ですよ。かっこ悪い!」
……彼は、思っていたよりも聞き分けが悪かった。
「いいから。勝機はそこしかない!」
「奇襲なんて、そんなのかっこ悪いっすよ。男なら正々堂々正面からじゃないっすか!」
……くっ。
さっき移動中に僕がガルネシアの奇跡には参加してないって言った時からなんかなめられてる気がする……。
「シー。ちょっと声が大きいよ。あとね、ペデル君。ガルネシアの奇跡も奇襲みたいなものじゃないか。かっこいいのはわかるけど時と場合も……。」
「いや、ガルネシアの奇跡は最後正々堂々戦ったじゃないっすか。俺も英雄になりたいんすよ!やるとしたらこのまま突撃っす!でもグレンさんのあの戦いっぷりすげぇっすね!」
やれやれ……。
僕に名声や実績がないばっかりに……。
仕方ない。こうなったら僕一人でやるしかない。
敵に気付かれないように建物の陰に隠れながら背中から一撃をかませる位置に場所をとる。
久しぶりに、数年ぶりに腰にぶら下がった剣をゆっくり引き抜く……。
異様なほど胸の鼓動が高鳴る。
落ち着け、僕……。
そして突け!
ピィーーーーー
と突如、頭上から大きな笛の音がなる。
見上げるともう一人黒ずくめがいた。
気づかなかった。
敵にばれている奇襲ほど愚かな行為はない。
あの二人がこっちに襲い掛かってきたら僕は……。
しかし、二人の黒ずくめはどこからともなく大きな手振りをすると、そこから馬が4頭あらわれた。
暗い上に初めに陣取った位置が遠くてわからなかったが、黒い布で馬を隠していたのか……。
グレンと戦っていたやつも頭上にいたやつも馬に乗ってどこかへ立ち去った……。
もちろんこちらには馬の用意はない。
「クソ、逃げられた!」
グレンが吐き捨てるように地面を蹴る。
グレンが戦っていた相手に限って言えば逃げられたとかそんなレベルじゃない。
いや、向こうが攻撃してこなかったことを踏まえると展開はもっと読めない。
まあいいか。
あの身長であの強さ、そして馬を持っている、いや持っているかどうかはわからないけど少なくとも馬に乗れる人物……。
大体はわかった……。




