キーデル、5
「メンデル様が逮捕された……。」
「え?」
「何て?」
トルニエ事件の作戦会議のためにいつものメンバーが集まった王宮の一室で、俺の言葉に二人はキョトンとした表情をしている。無理もない。
「詳しいことはわからんがこの前、辻斬り討伐隊が編成された日にお前ら、接触しただろ、辻斬りに。」
「ああ。……クソ!」
グレンが悔しそうな顔をする。今まで戦いに負けたことがないグレンだ。まあ、負けてないとはいえ勝てなかったことが悔しいのだろう……。まあ、今はそんなことはどうでもいい。
「それで?」
フレロレがキョトンとしたまま聞いてくる。
俺は話を続ける。
「お前らの証言が一致する人物としてメンデル様に白羽の矢が立った。」
「なんで??」
「グレン、あの日の翌日に呼ばれただろう。辻斬り討伐隊作戦会議に!その時なんて証言したんだ?」
「俺が言ったのは……、大柄で戦闘能力が高い人だけど……。言われてみれば確かにメンデル様は当てはまるな……。」
「確かにグレンが証言した大柄で戦いが強い人で、さらに僕の遠目で見てた感想を加えれば、戦いの経験が豊富で尚且つ地理的な情報が頭に入っていて馬に乗れる部下なり友がいる人物となるとメンデル様は一番怪しい……。」
グレンの後にフレロレが付け加える。二人ともメンデル様が容疑者であることは認めているものの歯切れが悪い……。
フレロレが質問をしてくる。
「でもメンデル様はずっと本部にいたんじゃないの?」
「いや、何でもずっとはいなかったらしい。」
「とは言ってもほとんどいたんじゃないの?」
「俺は会議に参加してなかったからわからないけど最初に誰かが冗談ぽくいったらしい。誰も本気にしてなかったらしいんだけど、メンデル様だけ本気にしちゃってね。疑われたことに怒っちゃったメンデル様が絶対に私じゃないからって言って自宅を捜索させたんだよ。そしたら、自宅からお前らが証言した犯人のものと思われる真っ黒のローブが見つかったらしい。」
「そんなの。誰かが嵌めただけなんじゃないのか?陰謀なんじゃないのか?」
グレンが声を荒げる。
「俺もそう思うよ。ただトルニエ事件と違って辻斬り事件は国民に知れ渡っている。自宅から発見されたところを民衆にも見られた以上何もしないわけにはいかなくなったらしく、とりあえずメンデル様は王宮の地下牢に入れられた。自分から入ったって感じだけど……。」
「そう……。治安部隊は辻斬りを何か月も捕まえられなくて国民から不信感を抱かれていたしね……。対策本部長が真犯人だったらそれは捕まえられないだろう。そう納得するのが普通だろうね。」
フレロレが声のトーンを落として呟いた。
「まあ、でも俺はあの人は違うと思うけどな。」
グレンはしばらく考えていたが何を思ってかそう言った。
「根拠は?」
「根拠は……今はない。あの時仮面を引っぺがせればよかったんだけど……。」
グレンの言葉に少しほっとする。
「じゃあ、無実を立証するのは難しいな。俺もあの人は違うと思う……。俺も特に根拠とかないけど……。」
「まあ、ここで何を言ってもあの人が違うのなら放っておけばそのうち解放されるだろう。」
グレンが遠くを見つめて呟いた。
「そうだろうな。オーネンスさんって人が今全力で辻斬り事件を捜査している。あの人は優秀な人だからそのうち何かわかってくると思うよ。」
グレンやフレロレには悪いが実は俺はこの状況を少し喜んでいる。
何せ、
「差し当たっては国の会議が問題だな。メンデル様がいないんじゃ政治的な側面は誰が指揮を執るんだ?」
とグレンが言う通り、メンデル様の不在が最も影響を与えるのが国の5人会議なのだ。
「そうなんだ。メンデル様に代わって一時的になるかもしれないけどゴルジオ様が繰り上げで大臣となる。今日俺がこの街に来たのはそれの付き添い。」
そう、これで俺は国に関われる。いや、関わるどころの話ではない。間接的に動かせる、そんな立場まで一気に大出世だ!
そもそも国を背負って立つ立場なんてそうそうなれるもんじゃない。
だけど、俺の同郷のグレンやフレロレは国の中心にいた。
もちろん発言権とかそんなのはなかっただろうけどただそこにいれることが俺にはうらやましかった。
「それじゃあ、しばらくは首都にいるのか?」
グレンが言う
「そうなる。」
「それじゃあ近いうちに3人で飲みに行こうぜ!」
「ああ。」
それも大きな楽しみだ。
……ただし、
「今度行く場所は俺かフレロレに決めさせてくれ!」
この街にある数多くの飲み屋から一件消えただけだが……。




