ゴルジオ、4
「キーデルくん、明日からしばらく出張することになりました。帰りはいつになるのやら……。後は頼みます。」
「えーと、何があるんですか?」
「メンデル将軍に呼び出されてしまいまして……。どうしても首都バルヴァンに帰らなくてはならないのですよ。ほら、だいぶ前からあの町で時々あらわれていた辻斬りがいたじゃないですか?それの討伐するための作戦が完成したらしいのですよ。」
「ああ、それですか。俺もゴルジオ様が呼ばれているのでそのうち行きますよ。何でもローテーションで請け負うことになってて……。まあ、先一週間の間に辻斬りが捕まらなければの話ですけどね。けど、なんでオーネンスさんは別行動なんでしょうね?」
「私はメンデル様の部下としてその作戦の指揮系統を担うことになってまして……。」
「ええ、すごいじゃないですか!」
「私くらい賢いと必然的にそうなります。なので……。」
「大丈夫ですよ!ゴルジオ様の見張りは俺がしっかりやっておきます!言っても飲み屋とこの南区駐屯所の往復でしょうけどね。」
「けど、あの人勝手な行動とることが多いから一人じゃ大変でしょう。」
「心配ありません。あの人馬鹿だから酒に誘えばホイホイついてきますんで!酒の席ならあの人は逃げ出しませんからね!」
「ハッハッハ。確かにその通りですね!」
……何がおかしい!誰がバカだ!
バカっていう方がバカなんだぞ!
キーデルとオーネンス。
こそこそと何か話してると思って物陰から立ち聞きしていたら好き放題言いやがって!
ふん、今日はキーデルに何言われようと奴とは一緒に飲みに行かん!
「おや?ゴルジオ将軍。こんなところで何を?」
部屋から出てきたオーネンスとばったり目が合った。
「いや……。」
こいつらとは戦っても勝てる気がしない。もちろん口での話だが……。
「まあいいです。明日から出張で首都の方に行きます。」
……まあいいですってなんだよ。どんだけなめられてんだ……。
ここは一発ガツンと言っといた方が……。
「お前――!」
かなり気合を入れて言ったつもりだったが……。
「それでは失礼します。」
とは言って何事もないように素通りする。
殴り飛ばしてやる!
いきり立って近寄ったが、背中から肩に腕を絡めてきたキーデルに抑えられる。
あーイライラしてきた!
何でもいいから俺のこのストレスを発散できないか!
クソ!
「まあまあ、ゴルジオ様。一度押さえて押さえて。あっ、そうだ、今日行きましょう!」
俺をなだめようとしているキーデルが振りほどかれないように頑張りながら言った。
あーイライラする!
もうあいつはどっかいっちまったしよ!
誰かぶん殴るか酒でも飲んで気分転換するか女と遊ぶしか……。
「旦那!何大声出してんすか?」
そう言ってひょこひょこと近寄ってくるギミーをとりあえず一発ぶん殴る。
「よし、キーデル行こうか!お前も来い、ギミー!」
「もう、酒飲みに行くたびに俺を殴るのは勘弁してくだせぇ……。」
「悪い悪い。」
これからこいつらと酒を一杯!
……ん?あれ?
……キーデルと?
「何、難しい顔してるんですか?行けばきっと楽しいですよ!」
キーデルが俺のイライラを吹っ飛ばすかのような元気な声を出す。
「……、まあ、そうだな!」
難しいこと考えるのはもういいや、俺はバカだ。
自分の感情に素直に生きよう!
バカでもいいじゃないか!
バカでも俺は今を楽しく生きているんだから。