↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『みちくさ先生の魔法学園改革記』1年目1学期「いつも赤字続き」編  作者: 風待 行燈
第1章 『華麗ならぬ改革元年』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/16

第4話 教師たちの改革会議

  千年の歴史を持つ王立魔法学園には、立派なものが多い。


 立派な校舎。


 立派な講堂。


 立派な研究施設。


 そして、立派な会議室。


 もっとも、レオン・ハーグリーヴスには、その会議室が立派である必要性だけは、まだよく分からなかった。


「……こちらの部屋は、普段から使われているんですか?」


「月に一度ほどですな」


 隣を歩く財務長官オルガ・ハルデンが答えた。


「それ以外の日は?」


「使われておらん」


「もったいないですね」


「まったくだ。もっとも、隣の会議室は年に二度ほどしか使われんが」


「隣にもあるんですか?」


「ああ。さらに、その隣にも」


 レオンは足を止めた。


「……何のために?」


「会議室が足りなくなった場合に備えて、増築したそうだ」


「足りなくなったことは?」


「記録にある限り、一度も」


 オルガは平然と言った。


「そのうち一室を倉庫に転用しようとしたが、敷かれている絨毯が高価すぎて、取り外しと保管に費用がかかるという話になりましてな」


「絨毯?」


「三十年前に敷かれたものだが、いつか流行が戻るかもしれないという理由で、そのまま残されておる」


 レオンは返事をしなかった。


 学園の赤字には、まだ知らない理由が山ほどありそうだった。




 会議室には、二十名を超える教職員が集まっていた。


 魔術理論、魔術実技、古代魔術、魔導工学。


 歴史、文学、自然科学、芸術。


 この学園には、魔術以外にも多くの専門家がいる。


「レオン先生、こちらです」


 フェリクスが手を振った。


「ありがとうございます」


「今日の議題、拝見しました。補習制度についてお話しになるそうですね」


「ええ。まだ提案の段階ですが」


「私も、できることがあれば協力したいと思っています」


 若い教師は、真剣な表情でそう言った。


 そこへ、赤銅色の髪の女性が入ってきた。


「セレナ先生、おはようございます」


「おはようございます」


 セレナは二人に会釈した。


「昨日の件、報告書を拝見しました」


 レオンは頷いた。


「ご迷惑をおかけしました」


「先生が起こした騒動ではありませんよ」


 セレナはそう言ってから、少しだけ声を落とした。


「ただ、今日の会議では話題になるでしょうね」


「覚悟しています」


「それなら結構です」


 彼女は資料を抱え直し、席へ向かった。


 フェリクスが、その背中を見送った。


「……セレナ先生は、いつも的確ですね」


「ええ」


「私も、ああいう教師になりたいものです」


 レオンは微笑んだ。


 フェリクスは、心からそう思っているようだった。


     


 会議が始まった。


 最初の議題は、前日に起きた生徒同士の暴力事件だった。


「アルタン君が木の棒を振り上げ、それを止めようとしたカイル君が拳を振るった、ということでよろしいですかな」


 学園長が確認した。


「概ね、そのとおりです」


 レオンは答えた。


「ただし、カイル君の行為だけを取り上げるのも、アルタン君の行為だけを取り上げるのも、適切ではないと思います」


「それは当然だ」


 低い声がした。


 グラディウス教授だった。


「棒を振り上げた時点で、アルタンにも責任がある。カイルの暴力についても同様だ。理由があれば許されるという話ではない」


「はい」


「だが、二人だけを処分して終わらせるのも違うだろう」


 ベルナルディ教授が穏やかに続けた。


「その場にいた生徒たちの話も、よく聞いてあげたいものですな」


「私もそう思います」


 レオンが頷くと、グラディウスは彼を見た。


「ただし、聞くことと、許すことは別だぞ」


「承知しています」


「ならば結構。ベルナルディ先生も教え子に甘くならないように!」


 短いやり取りだった。


 だが、レオンはほっと安心した。


 厳しい教師も、穏やかな教師も、事件を軽く考えてはいなかった。


 その後、関係した生徒への聞き取りを続け、指導内容を整理することが確認された。


 誰か一人に責任を押しつける結論にはならなかった。


     




「続いて、施設管理費および接遇費についてです」


 学園長が告げると、一人の教師が勢いよく立ち上がった。


「財務長官殿!」


「なんだ」


「職員用茶葉の購入予算が、大幅に削減されておりますぞ!」


 立派な口髭を蓄えた教師だった。


「この学園には王族や大貴族をはじめ、さまざまな客人が訪れるのです。相手の家格や好みに応じて茶葉を使い分けることは、礼儀であり、学園の品格に関わる問題ですぞ!」


 数人の教師が頷いた。


 セレナも口を開いた。


「接遇が外交上の役割を果たした例は、歴史上にもあります。必要な費用まで削るべきではないでしょう」


「もちろんだ」


 オルガは静かに答えた。


「必要な銘柄は確保する。ただし、現在の保管庫には、約三年分の茶葉がある」


「三年分など、千年の学園の歴史から見れば、ほんの一瞬ですぞ!」


「なるほど」


 オルガは頷いた。


「三年も学園に在籍しているのだから、そろそろ茶葉にも教員資格を与えてはいかがですかな」


 会議室が静まり返った。


 次いで、小さな笑いが漏れた。


 レオンは慌てて口元を押さえた。


「ほっほっほ」


 ベルナルディ教授が肩を揺らした。


「それなら、私より長く学園にいる茶葉も出てくるかもしれませんな」


 今度こそ、会議室に笑いが広がった。


 口髭の教師も、困ったように笑った。


「……しかし、オルガ殿。礼儀だけは守っていただきたい」


「もちろんです。品質を確認し、必要なものは補充する」


「それならば、異存はありません」


 議論は穏やかに収まった。


 レオンはすっかり感心した。


 茶葉の予算を求めた教師も、学園を困らせようとしているわけではない。


 学園の品格を守ろうとしているのだ。


 ただ、その品格を維持する費用が、学園の財政を圧迫している。


 どちらの言い分にも、理由があった。


     



「続いて、教育課程に関する提案です」


 学園長が資料をめくった。


「改革担当のレオン先生、お願いいたします」


 レオンは立ち上がった。


「本日は、希望する生徒を対象とした、個別課題型の補習制度についてご提案します」


 教師たちの視線が集まった。


「現在の授業は、魔力量や属性、学年などに応じて組み立てられています。多くの生徒を指導するうえで、合理的な方法だと思います」


 レオンは一度、言葉を切った。


「ただ、同じ条件の生徒でも、つまずく場所は違います」


 ノアの顔が浮かんだ。


 魔力量十二。


 小さな光を維持することにも苦労していた少年。


 だが、彼には、ほかの生徒が気づかない魔力の変化を感じ取る力があった。


「通常授業とは別に、一人ひとりの課題を確認し、それに合わせた指導を試してみたいのです」


「具体的には何人ほどですか?」


「最初は五、六人を考えています」


「対象者は?」


「本人の希望を確認したうえで、通常授業で十分な成果を得られていない生徒を中心に――」


「少々よろしいでしょうか」


 セレナが手を挙げた。


「成績のよい生徒が、さらに高度な学習を希望した場合はどうなりますか?」


「それも、検討したいと思っています」


「希望者が定員を超えたら?」


「……選定基準が必要ですね」


「ええ。そして、その基準を保護者にも説明できなければなりません」


 レオンは頷いた。


 セレナは続けた。


「補習を受けることを不名誉と考える家庭もあれば、特別な指導を受けられるなら、自分の子を優先するよう求める家庭もあるでしょう」


「なるほど」


「制度そのものがよくても、運用を誤れば不公平になります」


「ありがとうございます。そこは整理します」


 フェリクスが手を挙げた。


「理論面の補習なら、私も協力できると思います。生徒ごとの理解度を調べる問題を作り、進度を記録する評価表を――」


「フェリクス先生」


 セレナが静かに呼んだ。


「通常授業の準備もありますよね」


「あ……はい」


「まずは、ご自身の負担を確認なさってください」


「……そうですね」


 フェリクスはがっくりと肩を落とした。


 しかし、すぐに顔を上げた。


「それと、もう一点よろしいでしょうか」


「どうぞ」


「新しい指導方法を試すこと自体には賛成です。ただ、効果があるかどうか分からない方法を、生徒に続けさせることには慎重であるべきだと思います」


 レオンは彼を見た。


「はい」


「生徒は、教師の実験台ではありませんから」


 会議室が静かになった。


 フェリクスは、かなり慌てて付け加えた。


「もちろん、レオン先生がそのようにお考えだと言っているわけではありません」


「分かっています」


 レオンは答えた。


「大切な指摘だと思います」


 フェリクスは、ほっとしたように頷いた。


     



「では、わたしからもよろしいですかな」


 財務長官のオルガが口を開いた。


「レオン先生。あなたは以前の学校でも、個別指導をなさっていたそうですな」


「はい。必要に応じて、授業の後などに」


「追加の報酬は?」


「……特には」


「そうでしょうな」


 オルガは頷いた。


「その指導は、お得意なのでしょう?」


「ええ。生徒ごとに教え方を考えるのは、好きな仕事です」


「なるほど。では、あなたにとっては、さほど苦にならない」


「そうですね」


「しかし、レオン先生」


 オルガは資料を机に置いた。


「あなたが無償で提供できることと、その仕事に価値がないことは、まったく別ですぞ」


 レオンは顔を上げた。


「個別指導とは、本来、高価な教育サービスです。教師の時間を、一人の生徒のために使うのですからな」


「……はい」


「一人ひとりに合わせて教材を作り、指導し、成果を確認する。場合によっては保護者への説明も必要でしょう」


 レオンは頷いた。


 どれも、以前の学校では自分で行っていた仕事だった。


「あなた一人なら、それでもよいかもしれん。しかし、学園全体で行うとなれば話は別だ」


 オルガは会議室を見回した。


「教師にも生活がある。研究も、通常授業もある。時間外の指導を当然のものとして扱えば、負担は際限なく増えていく」


「確かに……」


「それに、保護者からこうした声が上がることも考えられる」


 オルガは、がらりと声色を変えた。


「『レオン先生は熱心に個別指導してくださるのに、なぜほかの先生はしてくださらないのですか』」


 会議室の何人かが、苦い顔をした。


 心当たりがあるのだろう。


「成果が出なければ、説明も求められる。特別な指導を受けたのに成績が上がらなかった、と」


 オルガはレオンに向き直った。


「そして、成果が出れば出たで、今度は希望者が増えるでしょうな」


「……そうですね」


「どちらに転んでも、仕事は増えるわけだ」


 レオンは思わず苦笑した。


「なかなか厳しいですね」


「教育とは、そういうものかもしれん」


 オルガは平然と言った。


「問題は、それに見合う予算を用意できるかどうかだ」


「学園の財政を考えると、難しいですね」


「その通り。非常に」


 そこで、オルガは表情を緩めた。


「わたしは、教師の善意を否定するつもりはない。しかし、善意を予算の代わりに使う制度には、賛成できん」


 レオンは、少々考え込んだ。


 以前の学校では、自分が頑張れば済むことが多かった。


 だが、ここには大勢の教師がいる。


 自分が苦にならない仕事でも、ほかの教師にとってはそうとは限らない。


「……おっしゃるとおりです」


 レオンは頭を下げた。


「その点も、計画に入れます」


「よろしく頼む」


 オルガは頷いた。


「善意というものは、会計帳簿に記載できんのでな」


    



「その問題なら、神舞戦の監督業務にもありますね」


 セレナが言った。


「放課後や休日に、生徒の練習に付き合う先生方も多いですから」


「まさに、そのとおり」


 オルガが頷いた。


「熱心な先生ほど、時間外の指導を引き受けてくださる。しかし、その大半には追加の報酬がない」


「好きでやってるんだから、いいじゃないか!」


 会議室の後方から、威勢のよい声が飛んだ。


 体育担当のジュリア・フェラーリだった。


「私は生徒と走るのが楽しいんだ!」


「ジュリア先生」


 財務長官が静かに答えた。


「あなたが楽しいことは、よくわかる」


「そうでしょう!」


「しかし、あなたの楽しみを、ほかの先生方の義務にされては困る」


「……ん?」


「あなたが休日に十時間指導なさるからといって、ほかの先生方にも同じことを要求する保護者が現れる」


 ジュリアは腕を組んだ。


「……ああ。そりゃ困るな」


「でしょうな」


「じゃあ、私はどうすりゃいい?」


「まずは、休日を取りなさい」


「それは無理だ!」


「……確かに」


 会議室に笑いが起こった。


 ジュリアも笑ったが、すぐに真面目な顔になった。


「でも、ほかの先生に迷惑をかけるのは嫌だな。そこは考えないといけないね」


 そう言って、彼女は席に座った。


 レオンは、そのやり取りを聞きながら考えていた。


 ジュリアの気持ちは、よく分かる。


 生徒が成長する姿を見るのは、何より楽しい。


 そのために時間を使うことを、惜しいと思わない。


 だが、それをほかの教師にも求めてよいのか。


 レオンには、まだ答えがなかった。


     


「少々、よろしいかな」


 今度はグラディウスが口を開いた。


「レオン先生」


「はい」


「あなたは、生徒の可能性を信じたいのだな」


「はい」


「それは結構だ」


 老教授は、ゆっくりと言葉を続けた。


「だが、魔術の適性が乏しい生徒に、努力を続けるよう勧めることが、常に正しいとは限らん」


 レオンは黙って聞いた。


「この学園には、魔術師以外の道を志す生徒もいる。商業、建築、医療、研究。別の学校で専門教育を受けた方がよい者もいるだろう」


「はい」


「その生徒に、もう少し頑張れば伸びるかもしれない、と言い続けたらどうなる?」


 レオンは、すぐには答えられなかった。


「教師は待てる。だが、生徒の時間は無限ではない」


 グラディウスの声は静かだった。


「可能性を信じることと、適性のない道に引き留めることは違う」


 レオンは、手元の資料に目を落とした。


「……私も、生徒の将来を狭めたいわけではありません」


「それは分かっている」


「ただ、まだ試していないことがあるのなら、その機会を与えたいと思っています」


「では、いつまで試す?」


 再び、沈黙が落ちた。


「一年か。二年か。卒業までか」


 レオンは顔を上げた。


「……今は、明確な答えを持っていません」


 グラディウスは頷いた。


「ならば、その問いを忘れんことだ」


 それ以上は言わなかった。


 しばらくして、ベルナルディが手を挙げた。


「私は、この補習制度には興味があります」


 穏やかな声だった。


「ただ、グラディウス先生のおっしゃることも、もっともですな」


 レオンは頷いた。


「早く見切りをつけすぎるのも、いつまでも待ち続けるのも、難しいものです」


「ええ」


「だからこそ、一人の教師だけで決めない方がよいのでしょう」


 ベルナルディは周囲を見回した。


「本人の希望を聞き、複数の教師で様子を見て、必要なら別の進路も示す。

 そういう仕組みなら、少しは安心して挑戦を見守れるかもしれませんな」


「ありがとうございます」


「いえいえ」


 老教授は微笑んだ。


「私も、いまだに生徒から教わることばかりですから」


    


 その後も、議論は続いた。


 安全管理。


 指導に必要な時間。


 対象となる生徒の選び方。


 通常授業との兼ね合い。


 教師たちの意見は、必ずしも一致しなかった。


 それでも、提案を頭から否定する者はいなかった。


 やがて、オルガが口を開いた。


「教育上の意義については、みんな理解できたはずだ」


 レオンは顔を上げた。


「ただし、人数、実施期間、必要な費用、安全管理の責任者。それらを明記した計画書を提出してもらう」


「分かりました」


「加えて、担当教員の勤務時間と、通常業務への影響も記載してくれ」


「はい」


「こちらで内容を確認したうえで、理事会に諮ることにしよう」


 レオンは頷いた。


 すると、年配の教師が口を開いた。


「宰相閣下が見込まれた先生でもあります。試してみる価値はあるでしょう」


 別の教師が首を振った。


「それと計画の妥当性は、分けて考えるべきです」


「もちろんです」


 レオンは答えた。


「内容で判断していただければと思います」


 財務長官が頷いた。


「では、そのように」


 提案は、まだ認められたわけではない。


 だが、却下されたわけでもなかった。


 会議は予定の時刻を一時間ほど超えて、ようやく終了した。


 補習制度の試験実施については、近く開かれる理事会で判断されることになった。




「……疲れましたね」


 レオンが息を吐くと、フェリクスが苦笑した。


「ですが、よい会議だったと思います」


「ええ。本当に」


「レオン先生」


 セレナが声をかけた。


「計画書の件ですが、保護者への説明については、私も確認できます」


「よろしいんですか?」


「歴史の授業にも、保護者との関係はありますから」


「助かります」


「ただし」


 セレナは、いたずらっぽく微笑んだ。


「私の仕事を増やしすぎないでくださいね」


「気をつけます」


 その横で、フェリクスが真剣に頷いていた。


「私も気をつけます」


「フェリクス先生には、特にお願いしたいところです」


「……はい」


 レオンは思わず笑った。


  


 その日の夕方。


 レオンは机に向かい、会議で出された意見を書き留めていた。


 安全管理。


 教師の負担。


 生徒の希望。


 進路との関係。


 そして、グラディウスの言葉。


『では、いつまで試す?』


 レオンはペンを止めた。


 ノアの顔が浮かんだ。


 アルタンの顔も。


 あの小さな商人は、昨日の騒動の後も、きっと何かを考えているのだろう。


 商売のことか。


 魔術のことか。


 それとも、カイルに殴られたことか。


 レオンには、まだ分からない。


 ゆっくりと考えてから、計画書の最初の一行を書いた。


『生徒が、自分の得意なことと苦手なことを知るための補習』


 その下に、もう一行。


『本人の希望を確認し、必要に応じて指導内容を見直す』


 そこから、ううんと唸りながら書き加えた。


『担当教員の負担を確認し、無理のない範囲で実施する』


 レオンは、その一文を眺めた。


 無理のない範囲。


 書くのは簡単だった。


 だが、自分自身がその言葉を守れるかどうかは、あまり自信がなかった。


「……まずは、私が担当するしかありませんね」


 小さく呟いた。


 そのとき、会議室での財務長官オルガの顔が浮かんだ。


『……そう言うだろうと思っておった』


 実際には、そんなことは言われていない。


 だが、なぜか声まで聞こえた気がした。


 レオンは苦笑した。


 窓の外から、生徒たちの声が聞こえる。


 誰かが笑っていた。


 誰かが怒鳴っていた。


 そして、遠くで何かが割れる音がした。


「……今のは、何でしょう」


 レオンは窓の方を見た。


 かなり迷ってから、ペンを置いた。


 まずは、確かめに行こう。


 改革の計画書は、まだ一枚目だった。


 ――第4話・完――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。