カナブンが身をもって教えてくれたこと
それは暑い日のことだった。
当時の私は自動車教習所に通っていた。
あの頃は、若かった。
だから調子にのってパーマとかあてていた。
そんなある日のことだ。
会社帰りで夜の教習を予約した。
昔のことなので、ハッキリ覚えていないが、確か窓を開けての教習だった。
バックだったか、S字だったか、あまり得意じゃない系の教習を受けていた。
そんな時、事件は起きた。
そう、事件は会議室で起きているんじゃない。
現場で起きているんだ。
んん……ごめん、言いたかっただけだ。
話を戻そう。
何かが飛び込んできた。
そして、そいつはパニックに陥っている。
正体はチラ見しかできなかったが、確かヤツの名前は「カナブン」だ。
よりによってパーマでカールしているところにジャストフィットし、もがいている。
バチバチバチ……。
頭からすごい音がしてくる。
「はい、集中して~。そう、いいよ」
シレっと、それをスルーしてくる教官。
バチバチバチ……。
頭からすごい音がしてくる。
「はい、集中して~」
運転中だ。それはわかっている。
止めて外してあげたいんだけど、ダメなん?
バチバチバチ……。
「止めずに頑張って~」
ダメらしい……。
バチバチバチ……。
だんだん、頭の上のサウンドの回転数が上がってくる。
めっちゃ、もがいているらしい。
バチバチバチ……。
回転数がレッドゾーンに入りそうなサウンドになってきてる。
「はい、集中して~。何があっても冷静にね」
バチバチバチ……。
時々、髪の毛が引っ張られるような感覚がする。
「そうそう、頑張って」
バチバチバチ……。
気にせずにはいられない。
「集中切らさないで……」
バチバチバチ……。
「はい、おつかれさん。教習の時間終わりです」
バチッ、バチッ……。
心なしか、頭の上のサウンドが弱まっている。
力尽きたのか?
トイレの鏡を見ながら、カナブンを取ろうとするのだが、良く見えない。
しかし、とても絡まっているらしい。
手探りでなんとか外すことができた。
カナブンは飛んで行った。
そして、頭にカナブンの足が残った。
頭から足が生えている系の状態だ。
うん、パーマはやめよう。
そう思った。




