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リリシーナ王女殿下おっぱい爆発事件  作者: 粟生木 志伸
第四章 おっぱい慟哭編
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第17話 カトゼ大神宮へ

「あ、そうそう。先生」


 恥ずかしかったのも、しばらくして治まる。すると、落ち着きを取り戻したからか、伝えなければならない事を思い出した。イージャンの事だ。


「ん? どうした?」


 お茶漬けを食べていた先生が、こちらを見る。


「至極天を納めるの、私も行きます」

「お前もか?」

「はい」

「それは助かるが……。いいのか?」


 これは、謁見の事を言ってるのかな? 私たちも父様に報告しなければいけないが、父様も父様で何か話があったみたいだし。それを先に終わらして、その後でって方が良いと思われてるのかも。別々にって事だ。


「構わないでしょう。纏めてやりましょうよ。謁見については、時間の指定も言われなかったですし」


 国王と王女の謁見とはいえ、同席するのがこの人ならば、何ら問題はないだろう。それに先生がいると、いつもより流れる様に事が終わります。それはとても楽ちんなのです。

 先生は、父様が怒りだすと「まーまー」って感じで、大抵ステライと一緒にその場を収めようとしてくれる。


 けど、ステライはそれが面白いと分かると、事態を静観して事の成り行きを楽しみ出すから、むらがあるんだよね。でも、先生はそれも知っているから、ささっとやってくれるのだ。後は、いつもなら機嫌が悪くなったり、怒りだすような事でも、それが抑えられる傾向になるし。色々と有り難いんだよ。


「それもそうだな。では一緒に行くか」

「はい」


 しめしめ、先生の許可が取れたぞ。これで、父様からの話も、どんなものだってすんなりと終わりそうだ。じゃあ、本題を話しておこう。


「それで、先生」

「ん?」


 お茶漬けを食べようとした顔が、もう一度こちらに戻る。


「イージャンとシヴァルイネも、一緒に行きますからね」

「ん? シヴァルイネは分かるが、イージャンも――。ああ、護衛か」


 私は首を振る。


「いえ。ちょっと至極天を、触らせてみようかなって思ってまして」

「む。至極天をか?」


 先生の雰囲気が、真剣みを帯びたものへ変わった。


「ええ、黒刀を」

「黒刀――。紙裂き砕破か……」

じいには、もう話を通しています」

「ふむ……」


 ま、カトゼへの正式の通達は、これからだけど。


「それは分かったが――。しかし、急だな」


 そう疑問に思うのも分かる。襲撃があった後、すぐだもんね。だったら日を改めても良いだろうと、考えそうなものだ。私だって、あれを聞かなければ、やろうとは思わなかった。


「実はですね、先生――。何かさっき、玉響たまゆらが出てたみたいなんですよ、イージャン」

「玉響だと?」

「はい」


 少し瞠目した先生に、頷いて返す。いやまあ、驚くよね。


「シヴァルイネが確認したらしいんです」

「そうか……」

「ま、そういう訳で。今なら上手くすれば、イージャンも力のコツみたいなものを、掴めるかなあっと」

「…………」


 先生は、お椀と箸を置き、胸の前で腕を組んだ。そして、目を瞑る。しばしそうやって考え込んでいたが、やがて目を開く。


「ふーむ。その可能性はあるな……。分かった。儂も付き合おう」

「ありがとうございます」


 私が軽く頭を下げると、先生がぽつりと呟く。


「遂に、か……」


 遂に? まあ、武闘大祭でも、その兆候は一瞬だけど出てたからね。そこから、結構な時間が経っている。――ん? でも、先生その時王都にいたっけ? いなかったような――。だったら、この事を知らないのではと、私は疑問に思った。だが、別にそんな事で、悩まなくていい事に気付く。ああ、他の誰かから聞いたのか。


「お腹、空きましたあ~~」


 その声と同時に、食堂の扉がまた開かれる。今度はゼニシエンタが、私と同じようなことを言いながら、戻ってきた。ふふっ。何だか立場が逆になってしまったな。シビアナとイルミネーニャ以外全員いる。途中で出会ったか。ともあれ、これで彼女たちも朝食だ。






 私は、隣の席でお食事中のゼニシエンタを眺めていた。気付かれないようにこっそりとね。人の食べる姿を、じろじろ見るなんてのは、褒められたもんじゃない。視線がかち合わないように、「ちらっ、ちらっ」て感じ。


 でも、ホント美味しそうにご飯を食べるよなあ、この子。相も変わらず、にっこにこ。料理長が、この笑顔にやられたというのも思い出して、改めて納得。


 他の皆はと言えば、シトエスカとヴァレータは、おにぎりを食べながら時折談笑をしている。レイセインは、静かに黙々と、でも二人の話は聞いているみたい。偶に微笑んで見てるから。


 しかし、テオルンはおにぎりを数個食べた後、卓に伏してぐったりとしていた。息遣いは荒くないが、先程より意気消沈といった感じだ。案の定、シビアナに取り調べると言われたらしい。


 先生はもう食べ終わった。最後にお茶を飲みながら、一息入れている。そして、そのお茶を飲み干したのか、ゆっくりと立ち上がった。


「リリシーナ。そろそろ行くか」

「はい。分かりました」


 私も立ち上がる。でも、出来れば、もう少し居たかったかな。ゼニシエンタのお茶漬けを食べるところ、見たかったんだ。ふふっ。いけないとは思いつつもね。だって、見ているとほっこりするんだもん。


「皆。ご飯、ありがとなー」

「うむ、旨かったぞ」

『はーい!』


 ゼニシエンタとシトエスカ、ヴァレータに笑顔で返された。レイセインには会釈。テオルンは、うつ伏せになったまま軽く手を上げている。


「レイセイン」

「はい……。殿下……」 


 私は、これからの予定を伝えた。


「ちょっとカトゼへ、至極天を納めに行ってくるから、あと頼むな」


 そう言うと、彼女は一瞬だけ思案気に目を伏せ、


「一緒には……?」


 と、聞いてきた。ああ、それを考えるか。まあ、こいつにも来てもらった方がいいかもな。しかし、それは護衛とか侍従官としてではない。レイセインは一応、至極天の所持者候補なのだ。だから、イージャンのを見てれば、触発なりきっかけなりになるかもしれないよね。


 でも――、待て待て。やはり、彼女は一緒に来ない方が良い。その理由が、思い浮かんだ。


「あー、いやいいわ。エロじじいがいるから、やめとけ」


 カトゼにはあのじじいがいるんだったわ。私の侍従官に、手を出させるわけには、いかないからな。とは言っても、レイセインなら触らせないだろうが。まあ、それでも可能性が無いわけじゃない。そうなると、私と一緒に半殺しだ。この状況で、それをやるのも面倒くさい。


「ふふ……。分かりました……」


 私の言いたいことを察したのか、含みにある笑みで答える。レイセインも玉響が出たってんなら、話は変わってくるんだけどね。ま、私の侍従官だし、これから立ち会う機会はいくらでもあるさ。


「私は、先生とそのまま王宮に戻る。お前たちはお前たちで、戻ってきてくれ」

「了解です……」


 彼女たちは、これでいいな。あとは、シビアナに任せるとしよう。それよりも、だ。私には、とても気掛かりな事が一つ出来てしまった。


「先生、急ぎましょう。やばいですよ」

「ん? 何だいきなり」

「いや。ローリエが、エロ爺に何かされてんじゃないかって、不安になってきたんです」


 そうなのである。あの子は、あのエロ爺の近くにいるのだ。これは、非常に不味い状況だわ。確かにあそこにいれば、身の安全は保障される。だがしかし、違う意味で、その身は全く安全じゃないのだ。逆に、危険極まりない場所と言えよう。


「はっはっ。まさか」


 先生が気楽に笑った。呑気だなあ、もう。


「先生……。あの爺がやってきた悪行の数々、思い出して下さい……」


 その内容を聞けば、まさに女の子の怨敵そのものだと分かる。お尻やおっぱいを、片っ端から触っていくはー、女湯を覗くはー、干してる下着を眺めてるはー、それを手に掛けようとするはー。もう、やりたい放題なのである。


 まあ、それらをしでかした後は、おっぱいとかを触ったのはもちろん、事の全てが露見して、カトゼの女性陣から半殺しにされてきたが。でも、あんな事してるのに、よくカトゼの総責任者――『大祭主だいさいしゅ』の任を解かれないよなあ。あそこって、こういうのすっげえ嫌ってるはずだと思ってたんだけど。だから、不思議でしょうがない。


「そ、そうだったな。急ぐか」


 先生も、ようやくその恐ろしさを思い出したようだ。焦っているように見えた。


「ええ、急ぎましょう」


 私たちは、扉へと歩調を早めながら向かい始める。取り敢えず、イージャンを探すか。しまった、レイセインに聞けば良かったな。まあでも――、イルミネーニャに聞けばいいだろう。そう思い、引き返さずそのまま歩いていく。

 

 ああ、それと私は中庭に行くし、先生は自分の至極天を取りに行くから、一旦別れる。どこで待ち合わせるか聞いとかないとな。それを聞くために、「先生」と言おうとしたのだが、その瞬間目の先にある扉の外に、人の気配を感じた。すると、すぐに扉が開かれる。現れたのは、都合の良い事に私の探し人だった。


「お、イージャン。丁度いい」


 あの子に聞く手間が省けたな。


「殿下?」


 いきなりそんな事言われても、事情は分からない。不思議そうに私を見ている。その手には、重ねられたお皿と湯呑が二つ、それから土瓶があった。どうやら、朝食を食べ終わっていたようだ。


「イージャン。今から私たちと一緒に、カトゼまで付き合ってくれ」

「カトゼ……。カトゼ大神宮ですか?」

「そ。護衛として頼む」


 そう言うと、表情が納得したものへと変わる。


「はっ。分かりました。それでは隊長に――」

「ああ。そっちはいい」


 食器片手に敬礼して言い掛けたその言葉を、手を向けて制し遮った。どうせ、まだ白目剥いてるだろうからな。


「レイセイン!」


 私が呼ぶと、こちらに顔を向ける。


「ゴトキールが来たら、イージャンは私たちと一緒に、カトゼへ行ったって言っといて!」


 彼女は頷いて答えた。


「あ、シビアナにはお前から言っといてくれ」

「はっ」


 再び食器片手に敬礼して答える。


「あと、あいつは来なくていい。エロ爺の命日になるからな」 

「は、はい。伝えておきます……」


 イージャンは、きまりが悪そうな困ったような面持ちになった。こいつも、あの惨状を見てるからな……。シビアナに容赦はない。瀕死に近い仕打ちを、無表情でやってるし。見ているこっちが怖くなったわ……。


 あと、当然ながら全て返り討ち。一度も触らせたことがない。でも、あのエロ爺は、めげないんだよなあ。


「どこで待ち合わせしようか……。先生、正門でいいですか?」

「そうだな」


 先生に向けていた顔を、イージャンに移す。


「じゃ、そこで待っていてくれ」

「はっ」


 敬礼をすると、早足で食堂の奥へと向かい始めた。そして、レイセインのところまで行くと、その足を止める。


「レイ。これは、どこに置いておけばいい?」

「ん……。あっち……」


 ここからだと聞き取りにくかったが、レイセインは顔も向けずに気安い感じでそう言って、ここと厨房を隔てている細長い卓を指差す。


「分かった」


 イージャンは、その指差された方へと歩いていった。ちなみに、あの二人があんな風なのは、元同僚だからではない。彼女たちは、子供の頃からの顔見知り。幼馴染なんだって。


 確か、レイセインはグスコより前に、イージャンと知り合っているはずだ。そう聞いたからね。で、シビアナとイージャンの仲を取り持ったのも、レイセインだと聞いている。


 こうしてみると、あいつって結構顔が広いんだよな。しかも、それなりの重要な役職にいる者たちに。ロック教団のお偉方にも、その顔が利くしさ。


「リリシーナ」

「はい?」


 先生に呼ばれて振り向く。


「イージャンに伝えないのか?」


 食器を置いているその姿を眺めながら、尋ねてきた。護衛としてとしか言わなかったのに、違和感があったんだろうね。


「ええ。ここからずっと緊張させるのも、どうかと思いまして」


 そう説明すると、先生もすぐに得心がいったようだ。


「確かに……。その方が良いかもしれん。あいつは、根が生真面目だからな……」


 頷いて同意をしてくれた。


「じゃあ、私は中庭に行って、ササのを取って来ます。それから、シヴァルイネと一緒に正門に向かいますので」

「うむ。では、儂も取って来よう」

「はい」


 私は、食堂を出て先生と一先ず別れ、中庭に向かって走り出す。あ、そうそう。近衛騎士たちの所へも行かないと。労いの言葉を伝えなくっちゃね。ついでに、イージャンの事も念のため言っておくか。

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