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リリシーナ王女殿下おっぱい爆発事件  作者: 粟生木 志伸
第二章 おっぱい前触れ編
33/101

第15話 宴会

「良いお湯だったなー」


 湯浴みのお蔭で体はぽかぽかさ。

 喉はからからとまではいかないが、すぐにでも何か飲み物が欲しいといった塩梅だ。


 私は浴場から出ると、自室に向かって廊下を歩いていた。

 廊下には玲瓏石はないから、照明は等間隔に設置された蝋燭の火だけだ。

 そのため、廊下の奥は暗く蝋燭の火もよく見えない。


 浴場と私の部屋は結構離れているから、この暗い廊下をしばらくの間歩くことになる。

 

 これ行き来するのには遠いけど、浴場は私の部屋がある階と同じなんだ。

 王宮の五階にあるんだよ。


 この階は女性の王族が専用で使っている階となっている。

 つまり私が住んでいる場所ってわけ。


 女性の王族は私だけだから、夜になるととても静かだ。

 警護はし易いんだろうけどね。

 私の部屋を中心に考えてればいいんだし。


「姫様、お休みなさいませ」


 通りかかった王宮侍従官が、廊下の脇に控えお辞儀をしてくれた。

 手には、火の灯った燭台付き蝋燭を持っている。


「ああ、お休み」

 

 寝るのはまだまだ先の話だけどね。

 そう思いながら、私はそのまま通り過ぎた。

 

 ここは女性の王族専用ってことで、男性がいたんでは問題がある場所が数多くある。

 だから、王宮内の雑務を担当している王宮侍従官が警備にも当たるんだ。


 近衛騎士は現在男性のみで構成されているから、階段付近を警護するに限られている。

 以前は女性の近衛騎士もいたんだけどね。


 うん、一人だけいたんだ。

 でも、そいつは結婚するちょっと前に引退した。それで今は男性のみってわけ。


 彼女の結婚式には私も参列した。

 ああ良い式だったさ、本当に素晴らしい結婚式だったとも……。


「けっ」

 

 羨ましいこって。

 現在その女性騎士は、侍従官になっている。

 私のね。


 名はレイセイン。


 おっぱいはシビアナの次にでかい。

 そうさ、私の侍従官の中で、シビアナのすぐ後に結婚しているのはこいつだ。


 今日は休みでいないからな。どうせ夫といちゃこらしてるんでしょうよ!

 シビアナと同じようにさあ!


「けっ!!」


 いいもんねー。私は私で宴会するもんねー。

 ササレクタ達と一緒になってわいわいやるんだ!

 美味しいお酒をいっぱい飲んで、美味しいおつまみをたらふく食べるてやるんだから!

 

――へん! 別に負け惜しみなんかじゃないやい!


 レイセインはシビアナの副官と言っていいだろう。

 シビアナが主、このレイセインが副で私の侍従官達は上手く回っているって感じなんだ。


 そして彼女は、かなり強い。

 この国の腕に覚えがある奴が集まってくる近衛騎士隊に在籍していただけの事はある。


 純粋な武力だけならシビアナは勝てないな。

 まあ、総合的な能力となると全く違ってくるわけだけど。


 それでも、彼女が夜勤に入ると私の安眠は保障されたのも同然さ。

 あっ。別に他の侍従官に不満がある訳じゃないよ?


 ただ、元近衛騎士というは伊達じゃないって事だね。

 安定感があるっていうのかな? この感覚に近いと思う。

 

 そんなレイセインにも守られたりする私の部屋は、隠し部屋を含めて四つだ。


 その手前には、侍従官達が仕事したり仮眠を取ったりできる広い前室になっている。

 休憩用の家具や仮眠用の寝台は奥。手前に四、五人が並んで座れる仕事用の机等々。


 仮眠をとる場所の前には、仕切り用の屏風が置かれており、これは以前帷幕いばくだった。


 執務室にある前室もそうだが、ちょくちょく模様替えが行われているようで、侍従官達が仕事をしやすい様にか日々改良されているみたいだ。


 そして、この前室の奥からが、私の部屋となる。


 一番奥に寝室があって、そこに倉庫兼隠し部屋もある。寝室の奥にね。

 その手前で、真ん中に当たる部屋が衣裳部屋だ。


 貴金属が入った箪笥たんすや化粧台、縁に金色の装飾が施された姿鏡。

 これが、四角い部屋の窓側に面した壁を占領している。


 それから、服を吊り下げた衣装掛けが、残りの三面の壁に沿ってずらりと並んでいるのだ。


 でも、この服ちょっと多すぎるんだよね……。

 しかも着ない服が多いんだよ。


 ここにある服の大半は耐久性とかを考えて作られていない服だから、えいって体を捻るとすぐに破けそうなんだ。


 私は普段からよく動くのもあって、あんまり着飾った物を好まないし貴金属も最低限にしている。

 だから、二の足を踏むんだよね。

 

 着替えるのにも、そこまで時間をかけることはないなあ……。かけたくもないかな。


 こんなんだから、自然と丈夫で着易い服を着るようになっちゃって、今では同じものを着回しするようになってしまった。


 偶にシビアナから小言を言われてるからね、私。

「それ、一昨日と同じ服ですね」って。


 暗に、王女なんだから身だしなみに気を配り、もっと違う服も着ろよって言ってんだよ……。

 別にいいじゃんねえ? 昨日着た服を着てるわけでもないし。洗濯された服だもん。


 まあ、私は言われて初めて気付くんだけどさ。

「ああ、そういやそうだわ」って。

 

 でもあれだよ? 

 着回している服って、びしぃっとした感じで王女の風格は出るんだよ? 


 シトエスカとかゼニシエンタや他の侍従官には、似合っているって言われてるんだ。

 公務がバリバリできそうな服さ。


 肘の辺りまである長袖の上着に腰巻のスカート。その下に膝下あたりまであるズボン。

 それから、ちょっと踵の高い革草履を履いているんだよ。


 普段の私は大体こんな感じ。


 今は寝間着だから、ダボダボの長袖に、膝下あたりまであるズボンだけどね。色は両方とも淡い青緑色さ。


 うーん。


 私は、服装に無頓着って程ではないと思っているんだが……。

 こうしてみると、そこまで拘ってないってのも事実だよねえ。


 あ、でも髪飾りには凝ってるかな。結構色んな種類を持っているよ。

 三つ編みに編みこめるやつでね、紐に貴金属の細工や小さな宝石が付いてるんだ。

 あれは好きかも。


 うーん、だけどそれくらいだな。

 やっぱり日頃から着飾るのって、面倒くさいって思っちゃうんだよね。


 着飾る時間があるなら、もっと寝てたい。朝寝坊したい。

 時間ギリギリまで眠りこけたいのだ。


 こんな私を、人はものぐさ王女というかもしれない。

 しかーし! 私は美少女だから許されるのだ!

 

「お姫様は、ものぐさな美少女」


 ほらね? 

 美少女とつくだけで世の中にある大抵のものは、可愛さが倍増する仕組みになってるのさ。

 はっはっは!


 それにだって、普段から着飾ったりすると、侍従官に手伝ってもらわなければいけない事も出てくるかもしれないし。

 彼女たちにも仕事はあるんだ。

 それを毎日っていうのは、何か悪い気がする。


 うちの王家って、着替えたり身の回りの事は基本自分でやるからね。

 子供の頃からそう教育されるんだ。


 だから、他の国で着替えとか自分でできない所があるって聞いた時は、ちょっとびっくりしたわ。

「それぐらい、自分でやらせてくれよ」って思ってしまう。


 ただ、晩餐とかお見合いの時は、それなりに着飾らざる得ないから、その時は手伝って貰ってる。

 これは例外かな。






「戻ったよー」

「姫様、お帰りなさいませ。湯浴みは如何でしたか?」


 自室に戻ってきた私に、シトエスカがお辞儀をしてくれる。

 お酒を調達してもらった彼女には、私が湯浴みをしている間に宴会の準備を頼んでおいたんだ。


「ああ、気持ち良かったぞ」

「ふふっ。それはようございました」

「それより――おお!? これは……壮観だな」


 さて、私の四つある部屋の中で一番手間に位置するのが、この大広間になる。

 そして、言わずもがな、今夜の宴会場所なのであーる!


 シトエスカが設置した玲瓏石によって、照らされたこの大広間は夜中でも明るい。

 

 その玲瓏石に照らされた大きな楕円の卓子に、これでもかと言わんばかりの美味しそうな料理が、所狭しと並んでいた。

 シトエスカが綺麗に盛り付けてくれたみたいだ。


 さらに、暖かい料理から立ち昇る美味しい湯気が、鼻孔を刺激して私の食欲もこれでもかと誘ってくる。

 この暖かい料理はゼニシエンタが頼んでいたものだろう。


 料理長が、正油焼き団子以外にも色々作ってくれたみたいだ。

 私が帰ってくる頃を見計らって、それをシトエスカがここに持って来てくれたってところか。

 

 うーん!

 それにしてもいい匂いだわ! 

 

 床下には、井戸水の入った桶が二つが置いてあり、そこには陶器瓶のお酒が何本も入っていた。

 先生から貰った異国のお酒と、うちの貯蔵庫にあったお酒だ。

 冷たく冷えたのか瓶の表面には、水滴が浮かび上がっている。


 私が持ち出した黒い焜炉も、火種を入れられ準備完了。

 イカちゃんを炙るのを、今か今かと待ちわびているかのようだ。


 いいねえ、いいねえ! 宴会はやっぱりこうでなくっちゃな!

 わたくし、今最高に心が弾んでおりますですことよ! 

 おほほほほ!


「ゼニシエンタ、戻りましたー」


 私がひとりで勝手に最高潮に達していると、後ろから声が聞こえる。


 振り向くと、少し息を切らしたニコニコ顔のゼニシエンタがいた。

 湯焚き室から急いで戻ってきたようだ。


「見ろよ、ゼニシエンタ! あれ!」


 そんなゼニシエンタに、私が卓子の上の宴会料理に手を向ける。

 

「はい?」


 促された彼女が、私の肩越しに卓子の方に目を向けた。


「…………」


 彼女は、卓子に乗った料理を見つめたまま固まってしまった。

 しかし、ゆっくりとゼニシエンタの目の輝きが増していき、それにつれて表情も恍惚を帯びた笑顔に変わり始めた。

 

「はあーーーん!!」 


 数瞬後、絶頂を迎えたゼニシエンタが爆発。

 歓喜の声を上げるとともに走りだした彼女は、卓子に辿り着くとそのままそこにしがみついた。


 いや、食事の事になると、ゼニシエンタって本当に面白いよな。


「ひ、姫様早く食べましょうよ!」


 おおう、実に清々しい食いしん坊さんに変貌してしまったな。

 自分の欲望を涎のように垂れ流してる。

 実際に涎も出ているんだろうけど。


 こちらを見向きもしないゼニシエンタを見て、私はそう思った。


「分かった、分かった。じゃあ席に着け」


 そう言いながら、私は卓子にある長椅子に座った。


「はい!」


 シュタッと向かいの長椅子に座るゼニシエンタ。

 それとは対称的に、シトエスカがゆっくりとした優雅な動きで、私の杯にお酒を注ぎはじめた。


「ありがとな。シトエスカ」

「いえ、勿体ないお言葉にございます。殿下、ササレクタ様には宴の用意をしている事を、申し伝えております。ササレクタ様は、いつもの様にこちらへいらっしゃるそうです」

「ああ、伝えてくれてたか。分かったよ」


 私は、今夜のように侍従官達とお酒を飲むことが、ちょくちょくある。

 だからこういう時は、面倒くさいから勝手に入ってこいとあいつには言っているんだ。


 まあ、そうでなくても自由人のササレクタは、私の部屋に勝手に入ってくるけどね。


 シトエスカは私の杯に注ぎ終わると、今度は自分たちの杯にお酒を注ぐため、向かいの席に移動した。

 そして、ゼニシエンタの杯にお酒を注ぎはじめた。


「シエンタ、料理どう?」

「はい! ぜぇーんぶ、すっごく美味しそうですぅ!」

「そう、それは良かったわ」

「はい! シトエスカさん、ありがとうございますぅ!」

「私も感謝しています。この暖かい料理はあなたが頼んでくれたのだから」

「はい! 料理長に感謝です!」

「ふふっ。そうね」


 何かシトエスカってゼニシエンタの姉様みたいだな。

 歳もシトエスカの方が上だったか。

 まあ仲が良いのは結構なことさ。


 ゼニシエンタは元気いっぱいなのもいいけど、シトエスカを見習ってもう少し落ち着きを持って欲しいねえ……。

 彼女は侍従官として非常に優秀だし、ゼニシエンタの良い見本になるからね。


 いや、本当にシトエスカはいい子さ。

 淑やかで思いやりがあって、それに色んな事に気が回るし私は非常に助かっている。


 しかもシビアナの様なあのふざけた悪癖がないときたもんだ。

 実にいいよ。うんうん。


「二人とも席に着いたな」


 シトエスカが、ゼニシエンタの隣にあった彼女の杯にお酒を注ぎ終わるのを待って、私は二人に話しかけた。


「はーい!」

「はい」

「じゃあ今夜は無礼講でいこうじゃないか。いいな二人とも?」

「はーい!」

「無礼講……。はい、畏まりました」


 まあ、こう言わなくても、いつも無礼講みたいになるんだけど。

 ただ、二人と一緒に飲むのって、実は初めてなんだよね。


 シビアナやルイセインといった先輩侍従官達から、私と飲むのはどういう事かってのは聞いているだろうけど、一応宣言はしておいた。


「よーし。では――乾杯!」

『乾杯!』


 私達は高々と杯を掲げた。


 よおし、今夜は大いに羽目を外そうじゃないか!






「殿下! 愛しています! 私と結婚してください!」


 宴会が始ってしばらく経った頃。

 私は生まれて初めて愛の告白を受けていた。

 

 正直言ってとても嬉しい。

 自分の事をそんな風に言ってくれるなんて。

 ああ、こうやって皆結婚していくのだろう。


 そんな事を思ってしまった。

 でもなあ……。


「お前は女だから無理!」


 どうしようもねえよ!


「そんなあ……。こんなに、こんなにお慕い申し上げておりますのに! びえーん!」


 私の腰にしがみつき悲しそうな声を上げた。

 シトエスカが。


 最初は何ともなかったんだ。

 だけど、私の酌をしてくれるってんで、そのまま私の隣に座り始めてから変になっていった。

 瞳がどんどん潤んでいった。体が触れる回数もどんどん増えていった。


 ていうか、シトエスカってお酒飲むとこうなるのかよ!

 

 理想の侍従官だったのに! 文句なしの本当に良い子だったのに!  

 どうしてこうなった!?


 私の中のシトエスカ像がぶっ壊れた。

 

 ああ、私の侍従官達は、何でこうも癖の強い奴らばっかりなんだ……。


「おい、ゼニシエンタ! 何とかしろ!」


 私は、もう一人の癖の強い侍従官に助けを求めた。


「あー……。シトエスカさんお酒入ると、ちょっと変になる事がありまして……」


 一通り料理を平らげたゼニシエンタは、ちびちびとお酒に舌鼓を打っていた。


 ちょっとっていうか何て言うか……。


「知ってたんなら止めろよ、お前……」

「いやあ、はははー。今日は姫様いらっしゃるし、大丈夫かなって思ったんですけど駄目でしたねー」


 乾いた笑い声がやけに白々しい。


「シトエスカさん七変化するんですよ」

「何だよその七変化って……」


 私はシトエスカの頭を撫でながら尋ねた。

 ていうか下から「ぐふふふふ」って聞こえてくるですけど。


「えっと……。泣き上戸になったり、笑い上戸になったり……。あ、後一切喋らなくなったりして……。色々あるんです」

「ふー……」


 私はシトエスカを撫でるのを止め、眉間に寄ったしわを揉みほぐした。


「初めて聞いたわそんな事。シビアナ知ってんの?」

「はい、ご存知です。シビアナ様がいらしたら選択できるですけどねー」

「選択?」

「はい。強制的に笑い上戸にしたりとかできるんですよ」

「…………何それ」


 シビアナって何でそんな事できるんだよ……。


 しかし、付き合いが長い私は、そんな事できても不思議じゃないって思ってしまう。

 随分とあいつに毒されてるよな、私……。


「お前は無理なのか?」

「はい。シビアナ様がどうやってるのか見たことありませんし」

「そっか」

「はい。どんな症状が出るかは粗方知ってるんですけど、方法までは……」


 シトエスカは、一体どのくらいの酒癖を持ち合わせているんだろうな。

 七変化って言うくらいだから七つはあるんだろうけど……。


「ちなみに今日は?」

「うーん。多分ちゅっちゅ魔神えろ型ですね」

「ちゅっちゅ魔神えろ型?」


 そんな魔神聞いたことないわ。

 ていうか、えろ型ってなんだよ。


「はい。女の子なら誰彼構わず、ちゅーしたくなるみたいで……。それと――」

「殿下!」


 ゼニシエンタを遮り、シトエスカがガバっと顔を上げた。

 

「お、おお。何だよ?」


 よく見れば瞳を潤ませており、涙がうるうると零れそうになっていた。

 シトエスカもかなりの美少女だから、こんな顔をされたら男だったら堪らないだろうて。

 あくまで男だったらな。


「私、殿下の最初の女になりたいんです!」

「お前いきなり何言ってんの!?」


 何か一大決心みたいに言ってるけどさ!

 それ年頃の美少女が言う事じゃないよね!?


「私、両方いける口なんです!」

「ええ!?」


 両方ってなんだよ、両方って!? 


「姫様気を付けてくださいね。結構エロい事されちゃいますから……」

「え!?」

「あ、このお酒美味しい……」


 俯きながらそう言うゼニシエンタの瞳は、食事の時のようなキラキラとした輝きはなく、光沢のない虚ろな瞳になっていた。


 おい、何だ!? 何があった!?


「殿下……」


 シトエスカがゆっくりと瞳を閉じる。


「おい馬鹿、目を閉じるな! 顔を近づけてくんな!」


 目を瞑ったシトエスカの顔が、紅潮しながら徐々に近づいてくる。

 まるで噂に聞く恋する乙女の様。


 だけど、手をわきわきさせながら近づいてきていたから、その可憐さが全て台無しだった。 

 ていうか、お前はその手で何をする気だ!?


「でんくぅわあ~」


 シトエスカは口を尖らせながら更に近づいてきた。


「わっ!? 馬鹿よせ! 私にそんな趣味は無い!」

「ちゅう~」

「うおおおお!?」


 何気に私の初チュー及び貞操の危機だと!?

 くううぅ!

 こんな事なら無礼講なんて言うんじゃなかった!


 私は自分の発言に後悔しながら、シトエスカの両手を掴んで何とかその場凌ぐ。


「ゼニシエンタ! 何とかして!」

「あー姫様、子犬に噛まれたと思って――」

「諦めるわけないだろ!? 私の初めてが女の子って――」

「うう……!」


 私の言葉にゼニシエンタが両手で顔を覆った。


 ゼニシエンタ!? 

 お前、もしかして――!?

 

「ちゅう~」

「ぎゃあああ!? あっぶねえ!」


 ゼニシエンタの様子に気を取られていると、シトエスカが襲い掛かって来た。

 私は寸での所で、顔を仰け反らして回避できた。


 ギリギリだよ! 危なすぎるわ!

 ていうか、ゼニシエンタが気になってしょうがないんですけど!


 何があったんだよ、ゼニシエンタ!?


「子犬に噛まれたって、そう思うしか、そう思うしか――!」


 ゼニシエンタアアー!!


「姫ちゃん、来ましたわよ――って何してるんですの……?」


 混迷を極める宴会場にササレクタがやって来た。

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