第12話 代償
一瞬思考が止まってしまった。
意味が分からない。爆発って何?
「えーと……。おっぱいが爆発するぐらいバインバインに大きくなったという意味ですかね?」
私は確認を取ることにした。こういう意味ですよね。それしか思いつかない。
「お前のその前向きな姿勢は好ましく思うがな……。そうではない」
違うみたいだな。ええと何だろな、はははっ。
「そのままの意味だ。――おっぱいがボンっと爆発したそうだ」
先生が手のひらを閉じて開らく。
「……」
絶句した。
私はどうやらとんでもない薬を飲んでしまったようだ。
飲んだ薬が不完全だから良かったんだろうが、下手したら私もおっぱいがボンっだったのかよ……。
さっきまでの興奮はもうすでに無くなってしまって、冗談じみたことも考えられなくなっていた。
想像を絶している。
「爆発したのは女性のみ。しかも皆おっぱいがでかくなっている者ばかりだった。よってすぐに原因が判明した」
豊胸の薬ができて騒ぎになっていたんだもんな。
それだけ分かれば、原因なんてすぐに分かる。
「爆発は何の前触れもなく村のあちこちでいきなり起こったそうだ。その村では今でもその時のことが語り継がれている。世にも奇妙な事件としてな……。」
「世にも奇妙って……」
それってつまり――。
「この事件のせいで村人がひどく畏れてしまってな……。それから滋養強壮薬は作られなくなってしまった」
「そうですか……」
先生に教えてもらったこの事件。どういった類のものか察することが出来た。
それは後で聞くとして、その前に一つ確かめなければならない。
自分もその薬を飲んでしまっている。きちんと聞いておくべきだ。
「――じゃあ、薬を飲んだ私も爆発するのでしょうか?」
先生は首を横に振った。
「可能性は低いだろう。何故なら薬を飲んで胸が大きくなり爆発すその一連の現象は、その村に住んでいた者とやって来た者に限られていたのだ」
ほっ……。
なるほど。それなら取り敢えず一安心かな。
「村の外に持ち出された薬については効果がなかったと苦情が殺到したそうだ。その薬を売っていた商人達は酷い目にあったみたいだな」
とんでもない事件にも巻き込まれてしまうし、ついてない商人達だな……。
「村にいないと効果がなかったという事でしょうか?」
「恐らくな。ただその実証はできていない。その村に入れば、薬を飲んだ者は同じように胸が大きくなるやもしれんが、最後に爆発すると知ってそれを試そうとする者はいなかったのだ」
そりゃね。誰だって嫌だろう。
ああ、こっちも確認しておこう。
「先生。この事件の原因は神の悪戯でしょうか?」
話を聞いた限り間違いないだろう。こんな不可思議な話、神の悪戯以外ないはずだ。
これは今までに報告があった中で、極めて恐ろしい部類に入る事件だよ。おっぱいが爆発するとか……。
しかし、神の悪戯に関しての報告書は一通り読んだことがあるのに、これは私は知らない事件だ。
ましてやおっぱいに関してのものともなると見逃すはずがない。
20年程前というし、その頃に起きた神の悪戯の報告書は何件かあったのも覚えている。
先生が知っているのに、この事件についての報告がないのは何故だろうか。
先生は頷いて肯定した。
「うむ、そうだな。わしもそう考えておるよ」
やっぱり私と同じ考えのようだ。
「神の悪戯は特定の場所で特定の条件が揃わなければ発現しない、とわしは考えておる」
確か先生はそこまで突き止めているんだよね。
あとは現象の再現できるように、場所を含めた特定条件を色々実験して探しているんだっけ。
様々な条件の組み合わせをして、必要とされる条件を見つけ出そうとしている。
何とも根気のいる作業だ。
先生はどれだけの数を実験してきたんだろうか。
私の方はそれなりに分かっているんだけど。
……まあ私の力はちょっと例外だけどね。神の悪戯じゃないし?
「村を出ることで薬が効果を出す条件が揃わなくなったのであろう。故に不完全な薬になってしまったのではないかな?」
だから不完全か……。そういう意味だったんだな。
「なるほど。辻褄が合いますね」
「うむ。まあ一応な」
はあ……。豊胸の薬がこんなものだったなんてなあ。
まさかおっぱいが爆発する薬だなんて思いもよらなかったよ。
しかも神の悪戯絡みだったとはね。
「シドー様」
それまで黙っていたシビアナが口を開いた。
ん?どうしたんだろう。何か聞きたいことがあるのか?
「その村の女性たちはどうなったのですか?」
シビアナが先生に尋ねたことは、私が一番聞きにくいことだった。
シビアナ。それは聞かなくてもいいと思う。分かり切ったことだ。
間違いなく凄惨なことになっただろう。中には結婚して幸せだった者や子供をもつ者もいただろうに。
いきなりあんな事になるなんて……。
イージャンを見ると、彼はその答えを察してか沈痛な面持ちだった。
お前は妻子持ちだからな……。思う所があるよな。
しかし、私たちの沈んだ雰囲気に気付いた先生が、意外な事を言った。
「ああいやいや。おっぱいが爆発した女性たちは皆無事だったぞ」
私は目を見開く。
驚いた。
無事だったのか?しかも全員。
「え? でもおっぱい――つまり胸部が爆発しても生きていられるものなのですか?」
血まみれだろ、間違いなく。
肉が抉れて胸部はひどい状態になったはずだ。
その状態でどうやって生きていられたんだ?
「爆発で受けた外傷は殆どなかったそうだ」
「「ええ!?」」
イージャンと声が被ったわ。
おいおい。爆発したんでしょ?無事だったのは本当に良かったと思うけど。
一体どういこと――。
あ!
神の悪戯だからか? あの不可思議な現象は常識が通用しない。
「神の悪戯だったからでしょうか?」
シビアナが私の代わりに答えてくれた。
「それしかあるまいな」
ええー……。
とんだお騒がせ事件だよ。なんだよそれ。
はあ……。一気に気が抜けた。
まあ死人は出てなくて良かったが。
しかしなんつう悪戯だ。おっぱいが大きくなって爆発するって誰得だよ。
そんな悪戯やって喜ぶのってどんな神様だ。
もし、出会うことがあったら2,3発ぶん殴ってやるわ。
爆発するのはおっぱいが大きくなるための通過儀礼って事にしといてやるから、ぶん殴るのはそれだけで許してやる。
よくよく考えてみれば、おっぱいが大きくなって爆発して死ぬってなんとも言えん死に方だな。
後世に伝えたくない。
100年ぐらい経ったら女性たちにとって非常に恐ろしい伝説になってそうだ。
「まあ、おっぱいは無くなってしまったらしいがな」
先生は然も問題がないかのように、その様なことを平然と言い放った。
「は?それはどういう――」
「ぺったんこになってしまったのだ。胸が」
「ぺぇっ……!!」
思わず変な声になった。
いやいやいやいや。
いやいやいやいや。何それ。何だよそれ。
「すっとんとんだな」
よし、神は殺そう。全力で殺るわ。
おっぱいが大きくなって喜んでいた女の子を、爆発とともに奈落の底に突き落とす許しがたい所業だ。
楽には死なせんよ。慈悲はない。
私の気が済むまでぼこぼこにして最終的には確実に殺す……!
本当に恐ろしい事件だわ。
凄惨過ぎるだろうが! 豊胸の薬じゃなくて貧乳の薬かよ!!
ぞっとする。ぞっとするよ。
私も下手するとすっとんとんだったのかよ。
ええー……。本当に洒落にならんぞ。
女性にとって本当に恐ろしい伝説になるわ。間違いない。
「お前の場合、仮に爆発しておっぱいが無くなっても、あまり変わらんのだし問題なかろう? がはははは!」
はぁあ!?
私の胸を見る先生。
皆の視線が私に向けられた。
変わるわ!全然違うだろうが!
おい、ふざけんな。私はぺったんこじゃない!微……美乳だ!
ちゃんとふっくらしてるわ!
ちゃんと揉めるんだぞ!ぷにぷにしてるわ!
「確かに」
シービーアーナアアア!!
お前えええ!!
「話が長くなってしまったが、結局この薬を飲んでも命に関わることではないし、例え薬の効力があってもリリシーナにとってもなんら問題ないということだな」
「シドー様、ありがとうございました」
話終わった!?




