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リリシーナ王女殿下おっぱい爆発事件  作者: 粟生木 志伸
第一章 おっぱい鳴動編
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第11話 豊胸の薬

「おっと、その前に例の薬を返しておこう」


 そう言うと先生は立ち上がり、書斎机の引き出しから瓶を一つ取り出してきた。

 先生が手に持つ小さな瓶が目に入る。それは見覚えのあるものだった。

 母様の部屋で一人有頂天だった記憶がまざまざと蘇ってきた。うう、恥ずかしい。


 そう今回の騒動の原因、豊胸の薬だ。

 

「一応確認のために少しだけ使ったが、残りは十分に残っておるよ。封もきちんとしておいた」


 再び椅子に座りながら先生は瓶をシビアナに渡してくれた。


「調査にご協力いただき誠にありがとうございました」


 瓶を受け取ったシビアナが謝意と共に恭しくお辞儀をしてくれたので、釣られて私とイージャンも頭を下げる。


「うむ。まあこれがどの様なものであるかは知っていたのでな。私のしたことは本当に確認程度でしかなかったが」


 おお、知ってたんだ先生。流石。


――で、どうでしょう?

 私のおっぱいは大きくなるんですかね?

 ばいんばいんな感じにいっちゃいますか?

 何か足りない材料があれば、私が行使できる権力をもってすぐにでも調達しますよ?


 聞きたいことが私の頭の中を駆け巡る。

 私はおっぱいが大きくなるのか早く聞きたくて仕方なかった。


――しかし何故か聞けない。言葉にできない。私は聞くことを躊躇っていた。


 私としてはさっさと聞きたいんだが……。

 どうしたことか私の乙女心の一つ『王女のたしなみ』がそれを許さないようだ。


 王女がそんな感じで食い気味にぐいぐいいくのはどうよ。

 恥ずかしいだろ、普通に。

 どんだけおっぱいに執着してるんだよ……もう少し悠然と構えようぜ? とか私に言ってくる。


 くっ仕方がない。ここは取り敢えず先生の話を聞くことにしよう。

 先生、お願いします。


 先生は私に促されたからではないが、顎を右手で擦りながら話し始めた。


「さて、何から話すか……。ふむ……。そうだな、まずこの薬は一体何なのか。そこから話すとしよう」


 何だろう……この言い方。

 豊胸の薬じゃないの?


「それはな、元々ある村で作られた滋養強壮薬なのだ」


 シビアナが持っている小瓶を見ながら先生はそう教えてくれた。


「滋養強壮薬、ですか?」


 私が聞き返す。


「そうだ」


 はあ……。どうやら私が思い描いた未来ではないみたいだ。

 急に話に興味が無くなってきた。

 うう、おっぱい……!!


「知っているだろう? 体の疲れがとれないとき等に服用するものだ」


 ああ、あの元気になるやつか……。私は頷いた。

 あれ子供が飲むとやばいんだよなあ。

 昔、私が間違って飲んでしまって、ちょっとした事件になってしまったことを思い出した。


 10年くらい前の話だ。

 王家主催の晩餐会が開かれることになり、私も勿論出席しなければならなかったんだけど、開催直前に間違ってその元気になるっていう薬を飲んでしまったんだ。

 飲んだ時は特に体の変化を感じなかったけど、晩餐会が始まって少し経った頃、いきなり私が両方の鼻孔から鼻血をドバドバ出し始めたもんだから会場が騒然となったんだよね。


 まあ見てる奴らからしたら怖いよな。王女が鼻血出し始めるんだもの。


 でも、そんな状況下でシビアナが私を見ながら笑うの堪えていたのは印象的だったよ。私の鼻血垂らした顔がツボに入ったらしい。

 シビアナのあんな顔見たのは初めてだったわ。

 私はその顔を今でもしっかり覚えている。


――普通さ、いきなりあんな場所で鼻血出したら、私付きの侍従官だったし、すごく私の事心配すると思うんだけども……。

 そういうの一切なかったからな。あいつ。


 ちなみに今回この薬を飲んだ時は鼻血は出なかった。


「あとはあれだ。夫婦が夜の営みの前に飲んだりするな。がはははは」


 にやにやしながら笑う先生。

 そういうのはいい。私には微塵も関係ない。何故なら私は結婚してないから。

 

――おい、イージャンどうした? ごくりって。

 え、もしかしてその薬欲しいのか? 


――お前……!



「原材料は蛇の血と臓物、猪の脳みそ、牛の睾丸、白子だったか……。それを長期保存できるように――」

「は?」


 今何か凄いこと言われた気がしたんだけど!?

 私飲んだんですけど!

 髪の色が嫌悪を示す紫に変わる。


 すると、先生が髪の色が変わったことに気付いたみたいで、


「がはははは!まあ毒ではないのは確認済みだから気にするな、リリシーナ」

 

 と、気遣ってくれた。


 気にするわ!!




「くふっ……んぐぅ!」


――おいシビアナ。お前肩震わせんな。俯くな。こっち見てみろよ!

 シビアナを見ると鼻血事件の時を髣髴させるように笑いを必死に堪えていた。

 こいつだきゃあ……!!

 ぐぬぬぬ……。



 先生はシビアナが笑いを堪えているのを見て笑っていたが、やがて私に視線を移した。


「まあ本来ならこの薬は豊胸の薬ではなく、滋養強壮薬という偽物を掴まされたということで話はここで終わるんだが……」


 どうやら話はここからが本番らしい。先生のこの言いようじゃあ何かあるに違いない。

 ていうかおっぱいが大きくなる系の話であってくれ。

 さっきの原材料とか私の心が傷を負うようなのは勘弁して。



「20年程前、その薬が作られていた村である事件が起こったのだ」

「事件?」

「うむ。それはな――その村の年若い女性たちのおっぱいが、いきなり大きくなり始めたのだ」

「なっ!」


 んだとおおおおう!!?

 先生のいきなりな発言が私の心を乱す。髪の色は驚愕の水色へ。


 本物!?

 ねえやっぱりその薬本物ななななの!?

 じゃあ何でどうして私のおっぱいは大きくならんのじゃああああ!!

 不完全!不完全だからか!?

 何で不完全なんだよおお!ちくしょおおおお!!


「皆成長期を終えていたにも関わらず、最終的には全員シビアナのおっぱいぐらいまで大きくなったそうだ」

「ええぇぇえ!?」


 更に驚愕の事実が発覚!

 皆の目がシビアナのおっぱいに移る。


 シビアナのおっぱいがプルンと揺れた。私の目はその驚愕のおっぱいに釘付けになった。

 ここまで大きくなったの!?


 私は目を瞑った。


 ぽよんぽよーん。


 私の脳裏にはシビアナのおっぱいが装着された私の姿が映し出されていた。

 いい……。すごくいい。完璧じゃないか。

 歩くたびにプルンと上下に揺れるおっぱい……。

 いやーおっぱいが大きいから肩が凝って仕様がないなーと、さりげなくはははっと笑いながら自慢する私……。

 それは豊胸の薬を飲んで何度も夢見た未だ叶わぬ姿だった。

 


「この事件は異例の速さで周辺に広がったみたいでな。話を聞きつけてやって来た商人等が原因を調査をした結果、その年の同じ時期に作られた滋養強壮薬が原因だと判明したのだ」

「はあ……。よく分かりましたねえ」


 私は充分自分の理想の姿を堪能して目を開いた。


「まあ商人たちもいきなり降って湧いた高い飯のタネを、何とかものにしたかったんだろうなあ」

「ああ、なるほど」


 まあそうだよなあ。もし私みたいな境遇の者だったらいくら払っても手に入れたいもの。お金に糸目はつけないよ。

 そうなるとそういう客には、かなり大きな利益を見込めるもんな。

 そりゃあ何が何でも手に入れたいってなるから頑張るか。


「その後その薬は商人の思惑通り高額で取引され、その手で各地に運ばれていった。ここにあるのは、その中の一つという訳だ」


 そう言うと先生はお茶を飲み始めた。

 

 はあ……そういう経緯があったんだなあ……。


 うーん。

 話の内容は分かったけど、私が知りたいのはおっぱいが大きくなるのかどうかなんですよ。

 事件が本当なら私のおっぱいが大きくならないのは何でなのか。

 先生の説明を聞く限りでは私が飲んだ薬は本物っぽいし、普通に考えたら効果あるような気がしてならないんだが。


 結局、この薬が不完全だという意味を説明してくれてないんだよね。


 私の飲んだ豊胸の薬がゲテモノの滋養強壮の薬で、おっぱいが大きくなる効果があるという事と、事件のあらましを教えてくれただけだ。


 こっちから聞いちゃおうかな。

 もう『王女のたしなみ』なんぞ知ったことではないわ。

 そう思って先生の方を見ると、お茶を飲み終わった先生が口を開いた。


「だが、事件はこれで終わりではない」

「え、終わらないんですか?」

「そうだ」


 まだ何かあるらしい。私はそれよりも不完全の意味が知りたいのだけど。

 まあ聞いとくか。


「その後、胸の大きくなった女性たちのその胸が――」


 ほお、胸が?



「――爆発したのだ」


 

 は?

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