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五日目 : 隣にいる気配
朝、少しだけ早く起きた。
今日は、研究室に行く必要があった。
春は連れて行かない。
理由はある。
説明はしない。
台所で、弁当を作った。
大したものではない。
卵と、簡単なものをいくつか。
甘いものも、用意した。
昨日、菓子を作らなかったからだ。
机の上に置いた。
手の届く場所に。
「外に出るな」
そう言った。
春は、頷いた。
少しだけ、間があって、
弁当の方を見た。
何も言わなかった。
それでよかった。
研究室では、いつも通りだった。
数値も、手順も、問題はない。
それでも、集中できなかった。
理由は分かっている。
昼過ぎ、少しだけ早く戻った。
部屋は、静かだった。
昨日と同じ静けさだった。
鍵を開けた。
春は、いた。
机の前に座って、
弁当を食べていた。
少しだけ、安心した。
甘いものは、最後に残していた。
理由は分からない。
目が合った。
春は、小さく言った。
「おいしい」
頷いた。
それだけで、十分だった。
夕方、菓子を作った。
今日は、春が最初から横にいた。
砂糖を、少し多く入れた。
止めなかった。
甘くなった。
悪くなかった。
夜、春が先に眠った。
布団を、少しだけ整えた。
起こさないように。
手を伸ばしかけて、やめた。
その代わりに、少しだけ距離を近づけた。
今日は、それでよかった。
――理




