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三日目:はじめての声
朝、少し遅れて目が覚めた。
部屋は静かだった。
昨日までと同じはずなのに、
どこか違う気がした。
隣を見ると、春はいなかった。
一瞬、心臓が強く鳴った。
慌てて部屋を出る。
廊下の先、
窓のそばに、小さな背中があった。
ほっとした。
近づくと、
春がこちらを振り向いた。
そして——
「……」
何か、言った。
声だった。
はっきりとは聞き取れなかった。
言葉にもなっていなかった。
それでも、確かに、声だった。
その瞬間、
なぜか、息が詰まった。
うまく、返せなかった。
何を言えばいいのか、分からなかった。
ただ、名前を呼んだ。
「春」
それだけだった。
春は、少しだけ笑った。
――理




