DAY 18 三人を名前で呼んだけど知識が足りなかった日
「じゃあ一回休憩しましょう。ここで待っていて下さい、俺、飲み物買ってきますね」
西崎華さんの希望で訪れた市民プール。
結局全員でのお出かけデートとなったが、人生で初めてのデートが女性三人同時の水着ステージとかハイレベルすぎ。
みなさん水着で肌露出が多くてどこ見ていいか分からないし、結局緊張して三人を楽しませるようなことも出来ていない。
せめて飲み物でも買ってきて、喉を潤してもらおう。
「ええと、何を買えばいいんだ?」
自販機の前に来たが、飲みたい物の希望を聞くのを忘れてた。
ああ、こういうのが経験値不足ってやつなのか……空回りをしている。
やっぱり親友の波多野悠一にアドバイスもらっておくべきだったか。どうせネットで拾った情報を堂々と語るんだろうが、何も知らないよりはマシかもしれん。
「伊江里クロワさんは、普段紅茶を飲んでいたな。藤浪桃世さんはスポーツドリンク、西崎華さんはお茶かな……」
あれ、待てよ……普段とデート中って、飲む物が違うんだろうか?
うーん、分からん……
とりあえず普段好んでいる物を買って、みんながいる休憩スペースに戻る。
「ねぇ、今暇でしょ。一緒にどう?」
「車で海とかどう? そのまま行けちゃうよ」
あれ、みんながイケメン二人に話しかけられている……知り合い、ではないよな。
伊江里さんがすっごい不機嫌そうにしているから違うか……ええと、ナンパか。
でも……遠くから見ると、イケメンに美女だから、俺とは違って絵になるなぁ……って早く助けなきゃ。
「お、お待たせ……の、飲み物……」
「……ちっ、おっせぇんだよ。おかげで変なのに絡まれたじゃねぇか。お前はずっと側にいろ、いいな」
「ミャーマがここで待っててって言うから動かなかったけどー、普段なら瞬間移動してるー。あー、雑音ウザかったー」
「ふふ、ごめんなさい、私たちの彼氏が来たので失礼しますね。さようなら」
俺がおどおどと声をかけると、女性三人が一斉に椅子から立ち上がる。
伊江里クロワさんが俺の右手を引っ張り、西崎華さんが左腕に絡んできて、藤浪桃世さんが後ろから背中をぐいぐい押してくる。
あ、ちょ、さ、さようならイケメンさん……
場所を移し、改めて買って来たペットボトルの飲み物をみんなに渡す。
「ご、ごめんね、デートの時ってどういう飲み物買えばいいのか悩んでしまって……結局普段みんなが飲んでいる物だけど……はい、伊江里さん」
「あぁ? 伊江里さんだぁ? てめぇ、どういうつもりだ」
伊江里さんに紅茶を渡すが、すっごい睨んでくる。
あれ、な、なんかデートの作法間違えましたかね……
「ミャーマ、今日何の日ー? 今朝から一回も名前で呼ばれてないー」
「土曜日と日曜日は全員平等に名前で呼ぶ日のはずです……名前を呼びながら渡して欲しいです……」
藤浪さんと西崎さんから突っ込みが入る。
ああ、いや、それは分かってはいたんですが、恥ずかしくて避けていたんですよね……名前かぁ、女性を下の名前で呼ぶとか、マジで小学校以来で緊張する。
みんなすっごい俺を見てきたし……もうやるしかない……!
「伊江……ゴホン、ク……クロワ、こ、紅茶が好きだったよね」
「………………ぁぁ…………ずっと好きだぞ」
俺がド緊張しながら渡すと、伊江里クロワさんが下を向き、小さい声で返事をする。
「うわー、あのクロワが感動してるー! つかしれっと告白してるしー! いいな、私も、早く私もー!」
隣の藤浪桃世さんがワイワイ騒ぐが、告白?
いや、伊江里クロワさんは紅茶が好きって言ったんでしょ。
「も、桃世、スポーツドリンクでいいかな。さっき水泳ですっごい技出してたから、しっかり水分補給しようね」
「ホアーー! ミャーマに名前で呼ばれたー! なんかゾクっとするー! さっきのは魚雷トビウオって言ってー、ミャーマがあと一秒遅れてたら、ナンパ野郎にブチまかしているところだったよー、あははは!」
藤浪桃世さんが小刻みにジャンプしているが、魚雷を人に向けちゃいけませんって。
あれ直撃したら、マジでオーバーキルの四桁貫通ダメージ叩き出すでしょ。
「は、華……緑茶だけど、いいかな。その、俺、頼りなくてごめんね」
「ふわぁ……な、名前で呼ばれるのって……こんなにも脳に響くものなんですね……! いえ、あなたが私のことを想って選んでくれたのですから、もうそれだけで嬉しいです!」
西崎華さんにも渡すが、名前を呼ぶと、目をバチーンと見開き真っ赤な顔になる。
「それと、美山君は頼りなくなんてないですよ。だってさっきもしっかり私たちを守ってくれましたし、ふふ、格好良かったですよ」
西崎さんが緑茶を受け取り、ニッコリ微笑む。
「ほんと、今朝だって、三人で集合場所に向かってるときにしつこく声かけられたしー。今だって、ミャーマがいなくなった途端に面倒な奴が寄って来たしー。もー、この一か月ですっごい痛感したー、マジでミャーマが側にいると安心! つか側にいてくれないと、不安!」
え、今朝もナンパされてたんすか……まぁみなさん、マジでお美しいから……。
「分かる! 美山君が側にいないときって、すっごい不安になるの……そして美山君をみつけたときの安心感……側に来てくれたときの幸福感……。さっきみたいなことがあると余計にそう思ってしまう……もう、ずっと離れたくない、側にいて欲しい、と。ふふ」
「ちっ……お前等勝手に告白すんな。今日はそういう日じゃねぇだろ」
「あー! さっき真っ先に告白したクロワに言われたくないー!」
「そ、そうですよ、今日は平等な日なんですから、一人が言ったのなら、私も言ってもいいはずです!」
あ、ちょ、女性陣が揉めだしたんだが……と、とりあえず止めないと。
「ク、クロワ、桃世、華……お、落ち着いて……」
「…………」
「…………」
「…………」
慣れないなぁ名前呼び、と思っていたら、女性陣がビタっと停止して一斉に俺の方を見てくる。
え……あの……な、何……!
「……てめぇ、名前で呼んどいて何も無しかよ。次のステップも用意しとけ」
「そうそうー、期待しちゃうじゃーん。次は何をされちゃうのかなーって、あははは!」
「デ、デートなんですから、してみたいこと言ってくれてもいいんですよ……」
次のステップ? 期待しちゃう? してみたいこと……?
ああああ、分からねぇ……!
初めてでデートの作法も何も分からないのに、次のステップとか言われても無理っす!
こういうとき、ゴシップから都市伝説まで何でもござれ、ネット知識の申し子、波多野悠一がいれば……!
いや、いらないか。
++++++++++++++
【以下定型文】
作品を読んで興味を持ってくれた読者様! よろしければ下にある
『☆☆☆☆☆』のポイントをよろしくお願いいたします。
応援する意味でブックマーク登録やご感想、レビュー等いただけたらとても嬉しいです!
影木とふ




