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創作の種記録  作者: 観月
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7/12

酒が飲める酒が飲める酒が飲めるぞー!

 タイトルが、ふざけた感じですいません。

 なんというか「水滸伝」に出てくる好漢たちは、とにかく皆大酒飲みなのです。

「水のように飲む」といいますが、水だって、あんなにたくさん飲めないと思います。というか、あれだけの量の水を飲まされたら、拷問じゃないかな?……というくらいの勢いで、酒を呑むのです。

 ええもう、アルコール中毒まっしぐらといった飲みっぷりです。

 読んでいると、お酒の匂いがしてきそうなほど。お酒が嫌い、酔っぱらいが嫌いという方には、おすすめできないなあと思ってしまったりします。

 そういう方は、ほら、マイルドに翻訳された二次的水滸伝を楽しまれたらいいと思います。




 最初に登場する、こちらが辟易するほどの大酒飲みというと魯智深(ろちしん)でしょうか。(前に紹介した虎殺しの武松もものすごい大酒飲みですが、登場は魯智深より後になります)

 彼は、初めは魯達(ろたつ)という名前でした。

 この魯達、大酒飲みでわがままで、力の有り余った乱暴者でしたが、経略府(辺境に配備された軍だと思います)の提轄(憲兵かな?)を勤めていたんですよ。

 まあねえ、昼間っから酒飲んでましたけどね。

 根はいい奴……らしい魯達は、いわれのない借金に苦しめられていた親娘を救うため、パンチ三発で悪徳肉屋を殺してしまいます。


「まじかよ! たった三発で死んじまいやがって! おりゃあ、逃げるぜー」


 スタコラサッサと、逃げ出すフットワークの軽さも持っております。


 魯達という人は、とても魅力的です。

 イケメンではありませんけどね。

 無邪気とでも言うのでしょうか、心のままに生きている感じです。見栄もなければ恥もない。自分を良く見せようという欲を感じない人物です。

 そのうえ、困っている人を見捨てておけない。

「水滸伝」においては、彼の乱暴なほどのお節介焼きが、豪傑たちを結びつけていったという側面もあります。



 さてさて、肉屋を殺し、すばやく逃げ出した魯達ですが。追手が厳しくなり、身を隠すために五台山(古くからの霊山。信仰を集めている)で僧となり、魯智深と名を改めます。

 僧ですからね、酒は飲んじゃいけないのですけど、この魯智深「俺は山の僧じゃないよ、旅の僧だよー」と嘘をついて、酒屋に入ります。

 とりあえず、大きな椀に十杯ほど飲み干します。

 それから犬肉をニンニク味噌と一緒に半分ほどむしゃむしゃ。

 それからまた酒を十杯……。

 読んでいるこちらも、いい加減気分が悪くなってきます。

 酒屋の旦那さんも魯智深に


「もうそのへんでおよしになったら?」


 と、こわごわ声をかけます。

 この旦那さん、すごい勇気を出しましたよ。

 何しろ魯智深。めっちゃ強面です。目つきとか、いっちゃってる感じだと思います。


「何を言うか、金は払ってるんだ、もう一桶もってこーい!」


 残った肉をむしゃむしゃ、酒をグビグビ。

 最後に一本の犬の足を懐にねじ込み


「残った金の分は、明日飲みに来るからな!」


 です。

 ……酒屋の旦那も、空いた口がふさがりません。

 まあ、ちゃんと金を払うところが、魯智深の可愛いところでしょうか。

 ……当たり前のことですが、ええ、もうこんなことぐらいで、可愛く思えてきてしまうんですよ!


 なにしろ千鳥足で寺に帰れば、仁王像を人と勘違いして因縁をつけて壊すし……。

 その後も、魯智深の傍若無人ぶりは凄まじいものでしたとさ。詳しくは水滸伝を読んでみてくださいね。ここに書きづらいほどの酔っ払いっぷりですから。

 それでも五台山の長老は魯智深のことを


「今こそあんなだが、あれは必ずいつか、悟りを開く男だ」


 と言って、目をかけてくれてたんですよねえ。




 その長老の言葉通り、物語の最後で、武松とともに六和寺というところに泊まっていた魯智深は静かに悟りを開き、座禅を組んだまま、大往生を遂げるのです。


 水滸伝の登場人物の中では、なかなかに良い終わり方ではなかったかと思います。

 この男、誰かの子分になったように見えても、実は誰にも従っていなかったのかもしれません。

 己を動かすのは自分自身。自分の信じるところに寄って、すっくと一本の人生を貫いた。

 暗い過去を背負うイケメン林冲や武松とは、全く違った魅力を持った好漢でした。



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