第三章~みぎゃーとみぎゃ子の邂逅~
みぎゃ子には一つの秘密があった。
彼女は茶髪ボブみぎゃ子との不思議な出会いの後、商業施設の中の
人気の少ない通りに行き、そこにあるトイレに向かった。
そして出入りする人の有無を確認した後、男子トイレへと入った。
「まぁ、今更言うほど気にしていないんだけどさ」
これが彼女の秘密だった。
その時、個室から一人の人物が出て来た。
紫のTシャツを着た、40代くらいかと思われる眼鏡の男性は、
みぎゃ子を見るなり驚き、そしてジッと凝視して来た。
ーこれは普通では無い。
普通、見つかってしまっても男性達は目をやりながらも
干渉はして来ない。二度見三度見をしたりはするものの、
やがては通り過ぎてしまう。
後で家族や恋人・友人等にこの事を話すのかも知れない。
だがそれはどうでも良い。伺い知る所では無いからだ。
しかし目の前の男性はあろうことか、明らかに
コミュニケーションを期待した目をしているのだ。これは困った。
サッサと通り過ぎたいが、何故だか不思議と足が動かない。
「あの」
男が一言を発した。
みぎゃ子は、声が上ずりながら応える。
「は、はいぃ?」
「その服、素敵ですね、ボクも買いたいなぁ~。」
不意の意味不明発言。
初対面の、しかもトイレの中で女装した相手に対して
一言目で発する発言としては相応しくない。
みぎゃ子は、しばらく言葉に詰まる。
そして捻りだした言葉が
「あ、ありがとう・・・」
だった。
早く切り上げたいみぎゃ子は、逃げながらこう言った。
「それじゃ」
彼女の背中に一言、更に男性は言った。
「素敵だから、自信を持ってね。」
何だこの男は。気味が悪い。何だそのポジティブ発言は。
だが別に、悪い事を言っているわけではない。
いやむしろ、励ましているのだろう。
しかしその初対面にも関わらず0距離な発言や、
別にセクハラとかでも無いし、そもそもあの男は何故
突然の邂逅にも関わらず、いきなりあんな言葉が口を出たのか。
全てが謎なまま、みぎゃ子は施設を後にした。
街に出ると該当TVに、先ほどの茶髪ボブみぎゃ子が映っていた。
「あ、あの子アイドルだったのか、知らなかったな。
サインでも貰っておけば良かったかな。」
そう呟いたみぎゃ子は、本日のメインの目的地のある場所へと向かった。




